【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第八十九話 嬉しさ

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 ロウも立ち止まったとき、十字路のその道の真ん中でルタが言う。

「あんたの家はどっちだ?」
「え? こっちのほうですけど……まさかうちに来る気ですか⁉」

 右を示してからロウはドギマギした。彼を家に入れることもそうだし、そういえば部屋を片付けていなかったことを思い出したし、もしも……。

「んなわけねえよ。なんでおれがあんたん家に行くんだよ」
「あ……そうですよね……」

 ルタは左のほうを親指でクイと示しながら。

「こっちに行けば、朝に立ち寄った官憲の事務所に着く。まっすぐ行けば、ギルドだ。明日のクエストの予約ができるだろう。右なら、あんたはこのまま家に帰れる。今日はもう遅いしな、疲れただろ」
「……なにが言いたいんですか?」

 半ば予想しながらも、ロウは彼に尋ねた。はたして、彼は真面目な顔になって予想通りのことを言ってくる。

「俺はこれから官憲に行って、通り魔にたどり着けるかもしれない新たな可能性を調べるつもりだ。だが今日はもう遅いし、徹夜になるかもしれねえ。通り魔にまた出くわす危険もある」
「…………」
「だがあんたまで付き合う必要はない。家に帰るも良し、ギルドに向かうも良し、どちらに行っても、あんたは昨日までの日常に戻れるかもしれない」
「……選べ、ってことですか? あたしがこれからどうするか」
「そうだ」

 間を置かずに彼は肯定する。ロウに対しては変にごまかしたり回りくどい言い方をしても仕方ないと思っているのだろう。
 ロウもまたすぐに返答した。確固たる思いを持って。

「ルタさんと一緒に事件を調べます。決まってるじゃないですか」
「…………だよなあ、あんたならそう言うと思ってた」

 半ば諦めの気持ちを混ぜながら、ルタが小さなため息をついた。その反応に、ロウはわずかに訝しみながら。

「なんですか、それ。だいたい、なんでわざわざ聞いたんですか? 一人で調べたいなら、黙って行けばいいじゃないですか」
「だってよ、あんた、素直に家に帰るとは思えなかったから」
「…………」

 彼の言うことは図星だった。実は彼と別れたあと、昨夜通り魔が消えた場所に赴いて、その付近を調べてみるつもりだったのだ。もしかしたら官憲が見落とした手掛かりがないかと思って。

「だったらおれも調査を続行することを言えば、ついてくるかもと思ってな。図星だったようだな」

 さっさと官憲事務所への道を行こうとする彼に、ロウは尋ねる。

「それって、あたしのことを心配してるってことですか……?」

 なぜだか、彼女の心に小さな波紋が起きていく。どう表現したら良いのか、いまのロウには言語化が難しかったが……しいていうならば、嬉しさ、というのが当てはまっているだろうか。

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