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第九十一話 関係あるんじゃ

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 官憲事務所内で違っていることといえば、廊下や室内を出入りしている人の数だった。朝と比べて明らかに増えていて、担当している事件が解決に向かっているのか活力に満ちている官憲がいる一方で、全身から疲労感をにじませている者もいた。
 それらはともかくとして、ルタとロウは入口近くの受付窓口まで向かう。さすがに交代したのだろう、今朝話した窓口の人とは別の人になっていた。

「聞きたいことがあるんだが、調べたいことがあってな、失踪届けとかって見せてもらえんのか?」

 ルタの質問に、窓口にいた官憲は眉を少し動かした。陽が落ちたこんな時間にこんなことを聞いたので、変な奴が来たと訝しんでいるのかもしれない。

「どういった理由で?」

 だからなのか、その官憲は質問から微妙にズレた問いを返す。見られるのか見られないのか、その主旨をはっきりとはさせずに、ルタ達の目的を聞き出そうとしていた。
 その官憲の意図に気付いて、ルタはロウを見ると肩を少しすくめた。やれやれ面倒くせーことにならなきゃいいけど……その顔はそう文句を言っているようだ。
 彼の視線を、ロウは無言で受け止める。官憲の訝しみは当然のことでもあり、またいま自分が下手に反応すればその官憲の心象になんらかの影響……主に悪影響を与えてしまうかもしれないと懸念してのことだった。
 官憲の問いに対して誤魔化すことはできるが、もしそれがバレたらもっと面倒なことになるかもしれない。またサージの助力を得るかもしれないことを考えて、ルタはなるべく正直に答えることにした。

「実はおれ達はいま独自に通り魔事件について調べてるんだがな、もしかしたらそれが失踪事件と関係あるんじゃないかって思ってな」
「はあ……?」

 ルタの返答の意味がいまいちよく飲み込めなかったのか、相手は疑問の声をこぼす。
 ロウは彼に事前に説明されたから分かるが、そうでなければ、なぜ通り魔と失踪に関連があるのだろうかと思うのは、半ば仕方のないことかもしれない。

「えーっと、つまりだな……」

 窓口の官憲に説明しようとルタは口を開く。ここでちゃんと説得して、納得してもらえれば失踪者の一覧や情報を見ることができるかもしれないから。
 と、そのとき、廊下の向こうからルタ達に声が掛けられた。

「おや、ルタさんとロウさんじゃないですか」

 振り向くと、今朝会ったサージだった。相変わらずヨレヨレの外套を着て、身体から疲労感が漂っている。おそらく朝からずっと捜査をしていて、しかし一向に有力な手掛かりが得られていないのだろう。

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