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第九十三話 理由
しおりを挟む「…………、……なるほど……」
説明が終わって、サージは腕を組みながら真面目な顔を浮かべていた。ルタの話への納得や、見落としていたその可能性を拾い上げたこと……それを先に閃いたルタに、内心で感心するように。
「確かに、その可能性は大いにあり得ますな。無論、失踪者のなかには自らの意志でいなくなった者も多数いますが」
改めてルタはサージに言った。
「理由は分かっただろ。だから、失踪者のリストを見せてくれないか? いまから一ヶ月くらいの期間の失踪者の」
「……うーむ……」
納得自体はしていたものの、しかしサージは難しい顔をする。組んでいた腕を一度ほどいて、今度はテーブルの上で手を組んだ。
「可能性は確かにあると、私自身は思います。確証はありませんがね」
「……やっぱり部外者に情報を見せることは難しいのか?」
サージは首を縦にも横にも振らずに。
「……失踪者とはいえ、個人を表す情報です。はいそうですかと、簡単には行きません。私一人の判断では、なおさらのこと」
「「…………」」
「知り得た情報をお二人が悪用するなどとは、私は思っていません。ですが、官憲が保持する情報を一般人に開示するためには、理由が必要なのです」
「「……理由……」」
同時につぶやく二人に、サージはうなずいた。
「ええ。他の者、特に失踪者の情報を管理している部署の者と、私の上司や上層部を納得させられるだけの、正当な理由です」
「……万が一なにかが起きて、責任問題に発展しないようにするための、予防線ってわけだな」
「…………」
口に出してはっきりとは言わなかったが、サージはかすかにうなずいた。注意して見なければ分からないくらい、本当にかすかに。
そして二人に言う。ここが分岐点であり正念場だというように、いままで以上に神妙な顔つきで。
「『理由』を教えてください。もしかしたら通り魔事件の手掛かりが掴めるかもしれない、などという本当にできるかどうかも分からない曖昧なものではなく、もっとはっきりとした『理由』を。どうしても失踪者の情報を見なければいけない『理由』を」
「「…………」」
正当な理由。
現状の段階では、通り魔事件と数多の失踪者の間に、なにかしらの関連は発見されていない。『通り魔事件の手掛かりを掴むために』、『失踪者の情報を見ること』は、官憲のサージならばともかく一般人のルタとロウには許可できないだろう。
失踪者リストを見るための理由。通り魔事件とは別件として。
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