【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第九十四話 あるぜ

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 ……ロウは必死になって考えるが……。

(……ウソをついてもいいのなら、いくらでも思い付くけど……もし誰かがあとになって調べたら、すぐにバレちゃうし……)

 嘘の理由であればいくらでも言える。だがもしも二人がリストを見たことを怪しんだ人物がいて、その理由が本当か調べて嘘だとバレた場合……かなり面倒なことになるだろう。
 官憲から不法に情報を盗み見ようとしたことはもちろんのこと、サージの仕事を中断させてまで見たことから公務執行妨害に問われる可能性。
 また二人だけではなく、二人を信用したサージ自身にも迷惑が掛かる可能性もある。
 そうなる危険性は確かに低いかもしれない。官憲全員が忙しいのに、わざわざ二人やサージの行動に目をつける変わり者はほとんどいないだろう。
 だが、ゼロではない。
 万が一の、もしもの、失敗したときの危険性を考えると……この場でロウにウソをつくことはできなかった。この場では、正直な言葉を紡がなければいけないと思ったのだ。
 ロウはうつむいてしまう。自分には『正当な理由』が見つからなくて、諦めてしまう。自然と、視線は隣に座るルタへと向けられていた。

「…………」

 彼は口を閉ざしたままだった。真一文字に閉ざしたまま、じっと目の前の私服姿の官憲を見つめていた。いつものひょうひょうとした目付きではなく、非常に真面目な顔つきで。
 たっぷり一分ほど。なにも言わない二人を、二人のそんな様子を見て、サージは重く口を開く。

「…………、……見つからないみたいですね」

 がたり。席を立ちながら。

「ご参考になる意見、誠にありがとうございます。お二人の意見を参考にして、今後は失踪者に関しても調べてみます」

 言葉としては礼を述べ、前向きに事件に取り組んでいるはずなのに、その口調は残念そうな響きをまとっていた。
 確かに、あくまで一般人であるルタとロウに官憲が持つ情報を簡単に教えるわけにはいかない。だが当の官憲であるサージならば、なにかと融通をきかせて知ることができるだろう。
 サージの言葉は、今後は通り魔事件のことは官憲に任せて、ルタとロウはおとなしくしていてほしいと、暗に言っているようなものだった。

「今日はもう遅いです。お二人はもうお帰りになったほうが良いでしょう。入口までお送りします」

 そう言ってドアまで向かうサージに、

「…………っ……」

 ロウはなにかを言おうとするが……言葉は出てこなかった。なにかを言いたい、自分達が事件捜査に関わるための言葉を。
 しかし諦め切れないその気持ちとは裏腹に、口は思うように動いてくれない。干からびた大地のように乾いてしまって、いつものように声を発することができない。
 ダメだ……自分には『理由』が見つからない……どうしても……っ。
 ロウが再びうつむいて完全に諦めようとした、そのとき。

「……あるぜ……『理由』」

 ルタが言った。

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