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第百七話 あたし達だけで
しおりを挟む目的の棚の前につく。そこには一辺が数十センチの立方体の箱がいくつか置かれていて、サージはその一つを手に取った。
「このなかに失踪者の書類が保管されています。これは過去十年間のデータですね」
「他にも箱がありますけど、それらにも?」
ロウが尋ねると、サージはうなずいて。
「はい。箱一つにつき十年分になっています。それが二十年前から十年前のもので、その隣が三十年前から二十年前のものです」
「ってことは、この棚のこの列のものは年代順に並んでるってことですね」
「そういうことになります」
そこでルタが口を挟む。
「ま、必要なのはさすがにここ一、二年くらいのものだろうけどな。いくらあの通り魔でもそれより前には殺っていないだろうし」
しかしサージは一瞬真顔になると。
「先入観は禁物ですよ。得てして手掛かりというものは予想外のところに転がっていたりしますから。まあ、失踪者のデータに気付かなかった私が言うことでもありませんが」
言葉尻で相好を崩すと、サージは再び部屋のドアへと向かっていく。
「ここには机が一つしかありませんからね。三人で調べるには少し手狭です。近くに使っていない空き部屋がありますので、そちらに移動しましょう」
そう言うサージのあとについて二人も部屋を出ると、近くの部屋に移動していく。会議室のように長テーブルが並べられた部屋で、三人は入口近くのテーブルに座るとさっそく失踪者の書類の束を調べ始めようとしていく。
「まずは過去一年間のからだ。おっさんも手伝ってくれんのか?」
「ええ、もちろん」
「サンキュー。じゃ、一人当たり四ヶ月分ずつ調べるか。おれは今月含めて過去四ヶ月、あんたはその前の四ヶ月、で、おっさんが……」
サージが箱から出した書類の束を、ルタがそれぞれ振り分けていく。その途中でロウが言った。
「サージさん以外の方に助力を仰ぐことはできないのですか」
「……うーむ……」
だがサージは難しい顔をすると。
「この失踪者データの調査は表向きにはルタさんの知り合いを調べることになっていますから。そしてそのことは私以外の者には秘密にしていますので」
「あ……」
ロウも気付いたようだった。
「そうでしたね。それじゃあ、やっぱりあたし達だけで調べなくちゃいけないってことですね」
振り分けが終わり、さっそく一枚目の書類に目を通していたルタが言う。
「そういうこった。分かったら、ほら、さっさと目を通していけって。けっこうな量があるんだからな」
「は、はい、そうですよね」
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