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4 天使のように清らかで
しおりを挟む「でも、なんでわたしを……?」
「アリエスさんでしたか、貴女、いまの人生を満足せずに死んでしまいましたよね」
「……っ」
アリエスの脳裏に学園での生活がよぎっていく。入学当所はともかく、最近は確かに辛く苦しく、楽しいと思えるものではなかった。
「私はそのような不遇な人生を生きた人々に、転生して人生をやり直す機会を与えているのです。ただし、精神的にそうするのが適切だと判断した方を選定して、提案しているのですが」
「精神的に……?」
「つまり、自分の人生に対して責任を持ち、他人に責任転嫁したり怨恨を持ったりしていないような人物です」
「…………」
アリエスは自分の境遇について考える。特に生前の状況を作り出した、ベリーに対する自分の気持ちを確かめてみる。
……とても辛く、苦しい思いはあった。少なからず不満も持っていないといえば嘘になる。
しかし……非常に不思議なことに、強い怨恨や復讐してやりたいほど憤怒しているかといわれれば……あまりそういう気持ちはなかったのだ。
ベリーのことは、はっきりいって良くは思っていない、しかし彼女の言うことを聞いたことで父親の事業は軌道に乗り、家族が路頭に迷うこともなかったから。
「貴女の心は高潔なのですよ。他人を思い、助け、怒ることはあっても恨むことはない。人間なのに天使のように清らかで、私の侍女としてほしいくらいです」
アリエスの心を覗いたかのように、女神は微笑みながら言う。
自分の考えは当たり前のことだと思っていたからか、アリエスはその褒め言葉に思わず恥ずかしくなって、照れて顔をうつむけてしまった。
そんな彼女を可愛らしいと思ったのか、女神は微笑みを続けながら。
「また貴女は少女を助けるために命を落としました。そんな貴女にやり直しの機会を与えない理由があるでしょうか? 私は貴女に人生をやり直して、今度こそ幸せになってほしいと思っているのですよ」
アリエスは女神へと顔を上げる。
「本当にいいのですか? わたしはもう一度人生をやり直して……」
「はい、もちろん」
女神は顔を綻ばせて笑う。その笑顔はまさに絶世の美貌と呼ぶに相応しい美しさだった。
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