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5 転生
しおりを挟む「では、転生するにあたって、いくつか確認事項があるのですが」
「確認事項……?」
「はい。つまり転生先の世界や時代、性別やどのような条件で転生したいのか、などです。これから一つ一つ確認していきますので、希望の条件を答えて……」
「あの、女神様」
女神の言葉を遮って、アリエスは口を挟む。女神は気分を害した様子もなく、むしろ小首を傾げて尋ね返した。
「なんでしょう?」
「お話を遮ってしまって申し訳ありません。わたしの希望としましては、元の世界で、姿もいまと同じ姿で転生させてほしいのです」
「それは構いませんが、いいのですか? せっかく色々と自分の自由に条件を設定出来るのに。元の世界よりもずっと発展して便利な世界で過ごすことも出来るのですよ」
アリエスはうなずいた。
「はい。辛く苦しい学園生活でしたが、わたしはあの世界のことが好きですし、お父様とお母様からいただいたこの身体のことも大切に思っています。だから、出来ればあの世界で、いまの姿で人生をやり直したいのです」
「…………」
女神はアリエスのことを見つめたあと、柔らかな表情でうなずいた。
「分かりました。もとよりこれは貴女のための転生なのですから、貴女の希望に沿うようにするのは当然ですね。ですが……」
そこで女神は一度真面目な顔つきになって。
「同じ世界に同じ姿で転生させる以上、ある程度その世界における貴女に関する記録と記憶はいじらせてもらうことになります」
「記録と記憶を……?」
「はい。死んだはずの人間がそのままの姿で生き返っては、その世界の者達を混乱させてしまいますから。たとえば貴女のご両親や知り合いは、貴女に会っても貴女のことが分かりません。無論、死ぬ前と同じ時代に転生するのであればですが」
「…………」
アリエスとしては元の世界に転生して、家族ともう一度会いたいという気持ちは少なからずあった。だが、家族は彼女に会っても分からないという。しかしそれでも……。
「分かりました、それでも構いません。わたしは、わたしの大切な人が無事ならそれで充分ですから」
「……了解しました。それでは細かい部分を決めたら、転生を開始しましょう」
そうしてアリエスは女神の確認事項に答えていき、自分がいた世界へと転生していったのだった。
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