【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】

はくら(仮名)

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【ジェシー=ジェリーは副料理長】 3


 すべての料理を作り終えてから、ジェシーが厨房の入口に向かいながら言った。


「んじゃ、後はこれらの料理を男爵に出していくだけでいいから。私は用事があるから帰んね。あ、食べ残してるプリン、持ち帰っていい?」

「ま、待ってくれっ、貴女は一体⁉」

「ただの通りすがりの料理人さ」


 店長の声にジェシーは答えた。それから食事の会計を済ませて彼女は帰途に就いていった。

 店の奥の部屋で気絶していたアンバーが目を覚ましていた。頭に手を当てながらつぶやいている。


「うーん、俺は一体……?」


 無事に目を覚ましたことに使用人達がほっと胸を撫で下ろすなか、その部屋に料理の皿を持って店長が入ってくる。


「お目覚めになられて良かったです、アンダー様。お目覚めにスープをお召し上がってください」

「スープ……?」


 そこでアンバーはハッ⁉となる。


「そうだ! 俺は帰る所だったんだ! こんな不味い物を食わす店なんかには」


 そのアンバーの鼻孔を、スープの香ばしい匂いがくすぐった。

 先の店長やコック達と同じく、アンバーの口中に唾液が分泌されていく。

 アンバーはゴクリと喉を鳴らした。


「な、何だこの世にも美味そうな匂いは? そのスープの匂いなのか?」

「はい。どうぞお召し上がりくださいませ」


 店長がスープをテーブルの上に置く。

 エサに吸い寄せられる動物のように、アンバーは無意識のうちにそのスープの前に座っていた。

 スプーンを手に持ち、一口、啜る。

 アンバーの全身に稲妻のような衝撃が走った。


「美味い⁉ 美味すぎる⁉」


 それからアンバーは出されてくる料理をすべて平らげていった。

 まるで成長期の子供のように食べ終えたアンバーは、店長に言った。


「とても素晴らしい料理だった! お前が作ったのか⁉」

「いえ、その……」


 言いにくそうに、正直に店長は答えた。


「通りすがりの料理人と名乗った女性が、お作りになられました」


 アンバーの目が驚愕に見開かれた。



 ジェシーはとても広大な屋敷に帰っていた。

 エインズ家の屋敷だった。

 厨房に向かっていくジェシーを、女性の料理人が発見して声を掛ける。


「あ、副料理長っ。どこ行ってたんですか⁉ もうすぐディナーの準備が始まりますよ!」

「ごめーん。ちょっと寄り道しちゃったー」

「もうっ。後、アイラお嬢様がスコーンをご所望でした。クッキーやビスケット、ケーキも残りが少なくなっていますから……」

「おっけー。まとめて作っておくよー」

「頼みますよ」


 コックの服装に着替えて、ジェシーは厨房に入っていく。



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