22 / 79
【悪役を演じる覚悟】 2
「それで私の所へ相談に来たのね?」
「はい、アイラお姉様」
アイラの私室。レモンティーを飲んでいたアイラを、キャロルは訪ねていた。
「どうしたら、カトリーナを傷付けずにその男子を諦めさせることが出来るでしょうか?」
「難しい問題ね」
アイラはスコーンを一口食べる。
キャロルは浮かない顔になっていた。
「やっぱりそうですよね……?」
「別にキャロルが何とかしなくても、勝手に相手がボロを出すんじゃない? 遅かれ早かれ、カトリーナさんは相手の本性に気付くはずよ」
「それは……お姉様の言う通りだと思います。でも、私は何とかしたいんです。カトリーナが傷付いてしまうことが避けられないのなら、その傷を少しでも小さくしたいんです」
「友達思いなのね、キャロルは」
二口目のスコーン。少しの沈黙。味わったあとに、アイラは言った。
「でも、そうね、貴女の友達が深く傷付くのは、私も忍びないわ」
「お姉様……」
「だから、貴女に悪役を演じる覚悟があるなら、その方法を教えてあげる」
「悪役……?」
「下手をすれば、貴女も彼女に嫌われちゃうかもしれない方法よ。彼女を助けられたとしてもね」
「…………、どんな方法なんですか?」
「ふふ」
アイラは口元を歪ませた。
○
「わぁ、凄いですね! 色々な動物がいますよ!」
「うん、そうだね」
街の動物園にて。
カトリーナはおしゃれをしてテックとデートを楽しんでいた。
「あ、カトリーナさん、あっちに動物と触れ合えるエリアがあるみたいですよ。気性の穏やかな動物みたいです」
「わあっ、本当ですか⁉ 可愛くて楽しそうですね!」
「あはは、カトリーナさんも可愛いよ」
「え……」
テックは笑顔を湛えながらカトリーナのことを見つめている。
カトリーナは顔が赤くなってしまった。慌てて顔を背けてしまう。
「あ、わ、私クレープ買ってきますね!」
「それなら俺も」
「あ、私がテック君の分も買ってきますよ!」
「そう? ならカトリーナさんと同じ物を頼むよ。一緒の物を食べたいからね」
「~~~~」
顔が火照るのを感じながら、カトリーナはクレープ屋へと駆けていった。
彼女の後ろ姿を見ながら、テックは舌舐めずりをしていた。
(クク、顔は凄え可愛いし身体も良い。性格も合格。こりゃいまから楽しみってもんだ)
邪な笑みを浮かべていると、テックに声が掛けられた。
「お、テックじゃん。こんなとこで何してんだ?」
テックが振り向くと、学園の悪友だった。動物園だというのに、悪友は一人でいた。
「何だお前かよ。デートだよデート。この前話したカトリーナ。お前こそ何でいんだよ、しかも一人で」
「こっちもデートだっつの。この前テックに紹介された子とな。ま、逃げられたっぽくて、トイレから全然戻ってこないけど」
「ハハッ! お前らしいぜ! 女の扱いが分かってねーんだよお前は!」
「うっせーよ! 女の扱いって何だよ⁉ 取り扱い説明書でもあんのかよ⁉」
あなたにおすすめの小説
エミリーと精霊
朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。
名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。
再会の約束の場所に彼は現れなかった
四折 柊
恋愛
ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。
そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
真実の愛の裏側
藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。
男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――?
※ 他サイトにも投稿しています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。