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第一章 レイン=カラーの怠惰な一日
第七話 かいせき
しおりを挟む奴が睨んでくる。
「はあ? 何言ってんだ、おまえ。なんで俺がリーグのボールを破裂させなきゃいけねえんだよ⁉」
口が滑ったな。奴にニヤリと口角を上げながら。
「俺は『あれ』って言っただけだぞ。どうしてラルドのことだって分かったんだ?」
「…………ッ⁉」
奴は一瞬しまったという顔になったが、すぐに気を取り直して。
「はあ⁉ そんなの話の流れで分かんだろうが! おまえは文脈ってのも分かんねえのかよ⁉」
「……まあ、そういうことにしといてやるか」
「ふざけてんのか⁉ とにかく俺がやったわけねえだろうが! 証拠でもあんのかよ⁉」
……はあ……。思わず溜め息をついてしまう。
「……どうして気付かないのかね。『証拠でもあるのか』、それは裏を返せば、証拠があればおまえが犯人ってことじゃねえか。もはや自白してるようなもんだろ」
「う、うるせえんだよ!」
奴は少しだけ狼狽えたが、すぐに強気を取り戻して。
「いいから、俺がやったって言うんなら証拠を出しやがれ!」
「……はあ……」
やれやれといったふうに溜め息をつく。それを見た奴はほら見ろと言わんばかりに。
「やっぱりねえんだろうが! ハッ、この俺に言いがかりをつけるたあ、いい度胸してやがるなあ! さて、この落とし前はどうつけて……」
「……魔法解析学……」
「は?」
聞き返した奴と、ついでに取り巻きの二人にも聞こえるように言う。
「魔法解析学の一つに、魔法や魔力を解析する魔法がある。おまえらはまだ習ってねえだろうが」
「はあ? おまえ、何言って……」
「ここにさっき破裂したボールの破片がある」
ポケットにしまっていた破片を取り出して奴らに見せる。
「この破片には、破裂させるために使った魔法の、魔力が残存している。それを解析してみると……」
破片の上部辺りにメッセージウインドウが浮かび上がり、そのウインドウの中に解析した魔力の情報群が表示されていく。
「ほれ。これがその解析データだ」
メッセージウインドウを奴らへと飛ばしながら。
「そのデータと、おまえの魔力の解析データを比べてみりゃ、おまえがやったかどうか、一発で分かるぜ」
「…………ッ⁉」
「おっと。そのデータを消そうとしても無駄だぜ。既に保存してあるからな」
手元に同じデータの並ぶウインドウを出現させると、奴は、
「……グッ……⁉」
と睨んできた。
「ちなみに、魔力データは指紋や掌紋と同じで、個体によって違っていて、同じものはまず存在しない。この意味は分かるな?」
「……グ……」
「分かったら、おまえの魔力データを解析させてもらおうか。俺が信じられないなら、さっきの先公や魔法解析学の先公でもいいぜ」
「……ググ……」
「犯人じゃねえってんなら解析させてくれるよなあ? 拒否は認めてんのと同じだぜ」
追い詰めるように、悪魔的な笑みを浮かべながら言うと、奴は頬に冷や汗を浮かべながら悔しそうに拳を握りしめた。
そして。
「やっちまえ、おまえら! いまなら先公は見てねえ! クラスの奴らはどうにでも言いくるめられる!」
取り巻きの二人にそう言った。
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