かつて天才と言われた落ちこぼれ。ムカついたので自由に生きてたらいつの間にか最強と言われるようになってた件

はくら(仮名)

文字の大きさ
13 / 66
第二章 ゾディアックにまつわる面倒な連中

第三話 いろいろ

しおりを挟む
 魔法生物学の授業。
 場所は教室から移動し、学園敷地内にある総合訓練施設。学生達からの通称は『スタジアム』。

「本日は多くの魔物が持つ、体色について説明していきます」

 ジャージ姿の若い女教師が言う。授業かどうかに関わらずいつもジャージ姿なので、学生達からはジャージ先生と呼ばれている教師だ。
 ちなみに魔法生物学では時に野外活動や魔物との関わり合いの授業をおこなうことがあり、学生もジャージに着替えることがある。今回はそこまででもないのか、クラスメイト達は学生服のままで、一応念のために女子はスカートの下にジャージを着ている程度だった。

「皆さんも既に習ったことがあるように、魔物の中には通常色とは別にそれぞれの体色を持つものがいます。代表的な色は赤や青、黄色や緑であり、それぞれの体色ごとにステータスが異なっています」

 ジャージ教師が手に持つクリップボードに視線を落とす気配。教師の前にはクラスメイト達が膝を抱えるように座っている。俗に言う体育座りというやつだ。

「一般的な認識としては、赤は攻撃力、青は素早さ、黄色は防御力、緑は回復力がそれぞれ高いです。また赤は炎魔法、青は水魔法、黄色は土魔法、緑は風魔法が得意とされています」

 隣に座るトパが耳元に顔を寄せる気配。授業を邪魔しないように、小さな声。

「また寝てるの、レイン? たまには起きてないと、ジャージちゃん傷付いちゃうよ」

 無視する。
 いつものように目を閉じて顔を伏せているが、この教師は魔法実技の先公とは違って、チラチラと見てくることはあっても何か言ってくることはあまりないので、気が楽でいい。
 今回も時たまチラ見の視線を感じるが、それでもジャージ教師はつつがなく話を続けていく。

「これが体色を持つ魔物の特徴ですが、中にはこの基本例に当てはまらない魔物もいるため、気を付けてください。また難易度の高いダンジョンなどでは、複数の体色を持つ魔物が出現することもあるので、油断は禁物です」

 ちなみに、何故魔物がそれぞれの特徴ごとに体色が分けられているのか、それに関してはまだ完全には解明されていない。研究は進められているらしいが、あるいは魔界の影響が関係しているのではと言われているくらいだ。

「それでは、これからは体色を持つ魔物の代表例でもある、スライムの立体データを実際に見てみましょう。『ホログラム』」

 ジャージ教師の手元に魔法陣が浮かび上がり、教師の左右に赤青黄緑のスライムの立体データが出現する気配。
 スライムはカップゼリーを逆さにしたような見た目で、目や口などはなく、内部に核と呼ばれる小さな球体を備えている。
 ゼリーやプリンのようにプルプルと震えるスライムを見て、データとはいえクラスメイト達は、

「「「「おおーっ」」」」

 と声を上げる。

「これはデータなので、襲ってくることはありません。それでは皆さん、それぞれのスライムの周りに集まってください。一班と二班はレッドスライム、三班と四班はブルースライム、五班と六班はイエロースライム、七班と八班はグリーンスライムへ」

 ジャージ教師の掛け声とともにクラスメイト達がスライムの周りに群がっていく。

「ほら、レインも行こ」
「…………」

 トパが言ってくるが無視する。すると彼女は腕を強引に引っ張ってきて。

「いーくーのーっ!」

 目立つのは嫌な上に引きずられるのも嫌なので、仕方なく立ち上がる。

「お、やっと起きた」
「…………」

 無視して指定のスライムの元へと行く。そこに集まる奴らから少しだけ離れて、大きなあくびを一つした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...