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第五章
第十六話 りゅうか
しおりを挟む『亜龍化症候群』。
原因は自然界に存在するウイルスとされていて、そのウイルスに感染することによって、身体にまるで龍つまりドラゴンのような特徴が現れてくる。
人から人に感染することはなく、東の国では対処出来なかったみたいだが、近代国家では治療薬が開発されている。
『ですので、いまからそちらに向かいますので、合流したら近代国家まで行って、薬をもらいに行きましょう』
「はいっ!」「はいっ、でござるっ!」
ウィンドウの向こうのユキの言葉を聞いて、トパとニンジャが元気よく返事をする。解決の目処が立って、喜んでいるのだろう。
ちなみに、その症状の名称に『亜龍化』というのがついているが、実は『龍化』というものが存在している。
この『龍化』は病気や症候群という悪い意味のものではなく、龍化魔法や龍人種の変異態の一つなどとしての、れっきとした変身術の一種だ。
一見すると『龍化』に似ているが、悪性の症状を引き起こし、また自力で元の姿に戻れないことから、『龍化』とは区別して『亜龍化』と呼ばれているのである。
『それではすぐに向かいますね』
「はいっ」「はいでござるっ」
通信が切れて、ウィンドウが光の泡となって霧散していく。
やっとやかましい話が終わったか。ようやくこれでバーベキューに集中出来る……そう思っていると、ニマニマと気持ち悪い笑みを浮かべながら、トパがとことこと近寄ってきた。
「もおー、レインってばあー」
気持ち悪い声で言ってくる。
「相変わらず素直じゃないんだからあーっ」
「…………、なんのことだ」
「しらばっくれなくてもいいんだからあーっ。ユキ先輩に連絡を取ったのって、あたし達に治療法を教えて、薬を渡すためだったんでしょおー」
「…………」
無視して、焼いた肉を頬張っていく。
「それならそうと言ってくれればいいのにー。あんな無駄な勝負なんかしちゃってー」
……ギロリとにらんで。
「……ちっ。分かってねえなら黙ってろ」
「え……? どういうこと?」
「……ちっ」
それ以降は話し掛けられても全部無視して、肉を食い続けた。
その後。
ユキが合流してきて、ユキの転移魔法でユキとトパとニンジャが近代国家に向かうことになった。
「レインさんはいいんですか?」
「なんで俺まで一緒に戻る必要がある? 俺はこの肉を食い終わったら、帰る。それだけだ」
「…………、そうですか……」
横合いからトパが。
「レインは食い意地が張ってるからねー。そんなことより、ユキ先輩、早く行きましょっ。早くイノさんのおやかたさんを治す薬を手に入れないとっ」
「……そうですね」
そうして三人は近代国家に向かっていった。
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