もう「友達」なんかじゃいられない。

らぉん

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【中2編】第5章「交差する心」

嫉妬(陽真目線)

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 誰もいない、放課後の教室。俺は今、誰かとふたりきりになっている。
「俺さ、陽真のこと好きなんだよね」 
 顔までは認識できなかったが、そう言われた。返事をしたくても、口が動かない。俺の返事を待たぬまま、「何者か」は言葉を続ける。
「でも、俺はあんたの幸せを願ってる」
 俺の幸せ…ってなんだろう。バスケをすること?それとも家の跡継ぎにならないといけないこと?それとも…


 朝見た夢は何だったんだろう。思い出そうとしても思い出せなかった。
 俺はまだ眠たい目をこすりながら、制服に着替えた。
「告白、か。あれが斎藤だったら、どんなに嬉しいことか…」
 ネクタイをつけながら、さっきの夢を思い出し呟いた。でも、彼があんな風に言うとは到底思えないし、なにせ自分から告っておいて自分から身を引くような人じゃない。

「あ、やべ、遅刻する」
 用意された朝食を食べ終えたところで時計を見ると、もう出ないと遅刻する時間帯になっていた。
 でも俺には、毎朝恒例になっている事があった。
「ちーちゃん、おっはよー!」
「ふぇっ…!?お、おはよう…」
 今日も家を出る前に妹の千夏に抱きついた。そして、今日も俺に対して相変わらず無愛想だった。
 千夏は小学5年生で、反抗期なのか最近抱きついても嫌な顔をされることが多くなった。でも、いつも抱きしめた時に軽く抱きしめ返してくれるのが可愛い。
「じゃあ、行ってきまーす!」
   嫌がる妹を解放し、リュックを背負って玄関へと向かった。


   今日も安定の遅刻で、校門をくぐった所でチャイムがなった。家(精密に言えば別荘)から学校は30分くらいの所にあり、信号を何個か通らないと着かないので、遅刻することが少なからずある。

 教室に着くと、ほとんどのクラスメイトが自席についていた。
 席に行く途中、机に突っ伏して寝ている斎藤に声をかけた。
「斎藤、おはよー」
「…あ、陽真…おはよー」
 眠たそうな目がこちらを見た。同時にピョン、と前髪の一束に寝癖がついているのを発見し、思わず口角が上がってしまった。なんか、アホ毛みたいで可愛い。
 
 自分の席に着いてカバンを机の横に降ろし、机の中の朝読書の本を取った。
 正直、そんなに本に関心がない俺は、いつだったか斎藤におすすめの本を聞いた気がする。その時は、確か塾の帰りで、本屋さんで買いたい本があるから、とついて行ったんだっけ。そのついでにおすすめを聞いて、そのままレジへ直行して。その本は、今でも大切に読んでいる。
「「恋は無自覚。思い立ったら行動するのみ」、かぁ」
 特に心に残ったフレーズ。まず小説みたいに上手くいく恋なんてあるのか?しかも男同士の。
 そうこう考えてるうちに、あっという間に10分間の朝読書タイムが終わった。


 今日は瀬野が休みだから、っていうのもあり、斎藤とは移動教室で一緒に行動したり、授業の合間の休憩中に話したり、と順調にいっていた。しかし、瀬野は昼休憩中に遅れて登校してきた。しかも、今日ずっと俺と話していた斎藤に絡んでいて、なかなか距離を縮めるのが困難になってしまった。
 自分で言うのもなんだけど、ふてくされて席で肘付きをしながら日向ぼっこをしている途中、誰かの足音が近づいてきた。
「陽真ー、放課後空いてる?」
 声の主の方を見れば、斎藤が俺の横に立っていた。
 放課後。今日は、確か毎週水曜日の部活がない日な気が。
「ん?今日部活ないんじゃなかったっけ?」
「時間あったら放課後残ってて欲しいんだけど、いい?」
 そういえば、ほぼ毎週水曜日って斎藤の図書返却日でもあったっけ。
 …ちょっと待って。「残ってて」って、これ告白されるやつ…!?ついに俺の時代来たか!?
 流石にそんなにがっつくのは不自然なので、適当な答えを探した。
「図書室行くの?別に10分程度なら大丈夫だよー」
 斎藤の方を見て、またもやにやけてしまった。朝についていた寝癖がまだついていて。その笑顔の理由を探るためか、彼はじっと俺が何かを言うのを待っているような表情を浮かべた。

 午後の授業も終わり、放課後がやってきた。
 残っててって言われたけど、教室でいいのかな?聞こうと思ったが、もう彼の姿はなかった。
 なんとなく期待しなから、俺は自分の席で読書をしながら待った。

 期待は外れた。まさか瀬野に告られるとは思いもしなかった。普通にただの友達だと思っていた、あいつが。
「ごめん、俺好きな人いる」
 何故か、俺のその反応を聞いて、彼は怪訝な表情を浮かべた。
「それって誰のこと」
「……斎藤」
 瀬野は、良かったな、とため息をついた。何か心当たりでもあるのだろうか。
「…あいつ、陽真のこと好きらしいじゃん」
「え…?」
 一瞬、聞き間違えたのかと思った。つまり、斎藤は俺のことが好きってことよね…?
「もう、帰ったかな?」
 俺はリュックを掴んで、下駄箱まで全力疾走した。

「まだ図書室なんじゃない?」
 結局、教室の鍵を返しに行ってそのまま瀬野と下校することにした。
 そして、あの話題を引っ張り出した。
「え、さっき瀬野が言ってた事ってまじ?」
「俺が嘘言うと思う?あれ本当のことだよ」
 じゃあ、両思いってことか。
 瀬野と別れた後、さっきの話題を思い出していた。
「いつか告ればOKしてくれるかな…?」
 今日電話してみようかな。俺はワクワクしながら、家へ帰った。


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