もう「友達」なんかじゃいられない。

らぉん

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【中2編】第5章「交差する心」

すれ違い(陽真目線)

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「斎藤って、お前のこと好きらしいじゃん」
 まさか、あれって本当だったりするのかな?帰ったら電話して聞いてみようかな。そういえば、俺から電話したこと今まで無かったような気がする。もし本当だったら動揺するのか?それとも案外普通だったりして。

 そうこう考えているうちに、あっという間に家に着いた。
「ただいまー」  
 俺は靴を脱ぐと、真っ先に俺の部屋へ向かった。
 部屋に入ると、机の上に置いていたスマホを手に取り、制服のままベッドへダイブした。指紋認証を解除してすぐメッセージアプリを開いた。
 あんまり話さないからか、結構下の方にアカウントがあった。トーク画面を開くと、さっそく文字を打ち込んだ。
「斎藤って俺の事好きなん?」
 打ち込んではみたものの、流石にそれはド直球すぎる。これは絶対無いな。
 文字を全部消したところで思いついた。そうだ、電話で話せばいいじゃないか。
 彼のプロフィール画面から、発信ボタンを押した。数回コール音が聞こえた後、ブツッ、っと電話が繋がる音がした。
『…もしもし』
『あ、斎藤?ごめん、忙しかった…?』
 勉強をしていたのか、少しムカついたような口調のように聞こえた。バスケもあんなに真面目なのに、勉強に対しても熱心なんだ。
『…ううん、全然大丈夫、だよ…』
 消えかけた言葉と同時に、ズズッ、と鼻をすする音が聞こえてきた。
『え、泣いてる?どした?』
 親と喧嘩でもしたのか、それとも誰かにいじめられているのか。聞きたかったけど、上手く聞けそうにないから、ただ彼が何か話すのを待った。
 だけど、それは俺の予想をはるかに超えるものだった。
『…良かったね、瀬野と付き合えて』
『…は?お前何言ってんの』
『え?』
 付き合う、といえばさっきの放課後のことだろうか。なんで何も知らないはずなのにこんな事が言えるのかは分からない。でも、確か俺らが帰ろうとした時、まだ斎藤の靴があったような。あるとしたら、多分その時にたまたま見かけた時だろう。
『誰と誰が、付き合ってるって?』
『…瀬野と陽真が…』
 どうしてこんな解釈になってしまったのかは分からないが、誤解されていては困る。
『俺はあいつから告られて、振った側』
『……』
 状況が飲み込めてないのか、電話の向こうでは沈黙が続いた。多分、これ以上踏み込んではいけない、と悟った。
 と同時に、ふと頭の中で何かがよぎった。あ、そういえば「あれ」、まだ言ってないんじゃ。
『あ。そういえばさー、斎藤に聞きたいことあって』
『…何?』
 返事が返ってきたところで、思い切って口を開いた。
『斎藤は、俺のこと好き?』
『……俺は、好きだよ…?』
 …あれ、今「好き」って言った…?
 ということは、もしかしたら両思いってことだよね…!?これってちゃんと伝えたほうがいいのかな?
 いや、でも友達としての「好き」かもしれないし?それに、自分が自意識過剰だからそう思っちゃうだけかもしれないし。
 返事に困った末、聞こえてなかったフリをした。
『…今なんて?』
『あ、ごめん、なんでもない』
『こっちこそごめん。いきなりこんな事聞いて』
 自分からチャンスを逃してしまうのはもったいないが、ここで変に告って友達でさえいられなくなるよりかは、今のこの関係の方が断然マシだ。
『ううん。陽真は悪くないから謝らないで』
 ある意味悪いのは俺の方なのに。どうしてそっちが謝るんだろう。
 やっぱり勉強中だったのか、それきり電話の向こうは沈黙が続いたままだった。こっちから電話をかけたの悪かったな。
 
 「好き」って言われたら、誰だって期待してしまう。相手が誰であろうと、そう思う人は何か特別な気持ちをもっているのではないか。…ということは、斎藤もそういう、俺に対して特別な感情があるって事?それがつまり、恋愛の方の「好き」、と。
 頭の中で考えながら、覚悟した。今日こそは、自分から伝えないといけない。この好きっていう感情1つが、自分の理性をどれだけ我慢させてきたんだろう。
 まだ電話は、切られてないよね…?当たって砕けろの魂胆で、俺の一言が沈黙を破った。
『…俺は、斎藤の事好きなんだけどなぁ…』
『……え?陽真は、俺の事好きなの…?』
『…え、今の聞こえてた…!?ごめん、忘れて』
 少し期待気味だった返事を遮るようにして、なぜか口走ってしまった。
 あ、しまった。今俺、「忘れて」って、言った…。何でこんな時に。
 まさかこんなにもシナリオ通りにいかないとは思わなくて、焦りで手が少し汗ばんできた。同時に、斎藤の方も少し荒ぶった感じになっている気がした。
『…なんで、よ。ほんっと意味分かんない…』
 もしかして、怒ってる…?こんな低い声、初めて聞いたかもしれない。確かに、好きとか言った端から「忘れて」なんて、ろくなものじゃない。
 混乱気味になりながらも、続きの話を促す。
『…え、どしたの…』
『どうせ、俺のことなんて嫌いなんでしょ…』 
 何をもって、そんなことが言えるんだろう。嫌いなんて、一言も言ってないはず。
『別に、好きかとか言われたら、違う気もするけど…』
 自分で言って、気がついた。なんだよ、「好き」っていう感情が「違う」って。
 俺は斎藤のこと好きなのに。本当は今すぐにでも「好きだー!」って大声で叫びたいほどなのに。もう何年も悩み続けてきたのに。自分がこんなにも愚かだったとは思いもしなかった。
『…じゃあ嫌いってことだよね?そうなら、もう話しかけて来ないでよね!』
『ま、待って…』
 何で。どうして。斎藤は、俺のこと好きなんじゃないの?
 ツー、ツー、と電話が切れた音が耳に響く。
 これ、絶対嫌われたかも。いや、嫌われた。告白もまともにできないのに、好きな人と付き合おうだなんて何年早い話なんだろう。
「もう、俺の恋は実らないのかな…?」
 悲しさをごまかすようにして、ベッドの端に置いている、大きなくまのぬいぐるみを抱き寄せた。ぬいぐるみなんてのに罪はないのに、不意にギュッと強く抱きしめた。
 同時に、外からは5時を知らせる鐘の音が聞こえる。いつも聞いているはずなのに、なぜか今日だけは知らない音を聞いている気分になった。




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