現実でぼっちなぼくは、異世界で勇者になれるのか?

シュウ

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五章 使節団

突然の呼び出し

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 夜が明けた。

「勇者さんおはよう」
「英雄さん、よく眠れたかね?」
「昨夜のことは聞いたよ。すごいじゃないか!」

 会う障りみんなから賞賛され、ひどく照れくさかった。 

「つばさはそれだけのことをしたんだから自信をもっていいよ」

 それをサギに告げると、クスリと笑いながらそんなことを言った。
 そのサギは朝からテントの外で機織り機を使い、何かを編み続けている。

「このぶんだと順番が来るまでには編み上がりそう」

 サギは自信満々にいった。
 初め単なる糸だったものは、いつの間にか大きな布に変わっている。
 さながら魔法のようで、見ているだけでも楽しくなる。

「そろそろお昼よ。作るからご一緒しない?」

 ハシの母親が、ハシと一緒にテントの前にやってきてそういった。
 もうそんな時間なんだなと思った。
 
「わたしも手伝うよ」
 
 サギは編み物を中断すると、そう言って立ち上がる。

「ぼくも手伝おうか?」
「いいよ、身体を動かしていないと退屈で」
「ぼくだってそうさ」

 ヤマのクニに来てから、ずっと歩きっぱなしだった。
 休んでいたのは、ナクラの集落で休ませてもらった日ぐらいだろう。
 退屈なんて考える余裕はなかった。
 向こうの世界ではテレビを見たりゲームをしたりできたけど、ここにそんなものはない。
 それにここにあったとしても、今は手伝いたい気分だった。

「そう、じゃあ水汲みをお願いしようかな」
「わかった」
「ぼくも手伝う」

 ハシがついてきたので一緒に水をくんでくる。
 水を木のオケで運ぶのは重労働だけど、ハシは小さいオケながらよくやってくれる。
 
(ぼくがここに来た時より、ずっと働き者だな)

 一生懸命に水を運ぶハシを見て、つばさはそんな風に思った。
 それからみんなが食べる食器を運んだり、皮をはぐ作業を手伝ったりした。
 その間に他の障りが訪れては、差し入れだといろいろな食料をおいていく。

「差し入れだよ、勇者さん」
「あらぼうや。昨日は大活躍なんだってね。よかったらこれ食べて」

 こんな具合だった。
 柑橘系のいい匂いのする果物や、どうやって食べたらいいのかわからない茎など。
 まあわからないものでも、サギなら知っているだろう。

 お昼は他のブフ達と食べた。
 さまざまな話題が飛び交い、時に笑いあった。
 話題はつきない。
 そもそも家では、どうして話題がなかったのか不思議に思った。
 学校だけでなくテレビや動画、マンガや雑誌など話すことなんか一杯あったはずなのに。
 食事後もしばらく話していた。
 お昼どきで暖かくなってきて眠気がやってくる。
 ハシはいつの間にか隣で寝息をたて、サギが機織り機で続きを行っていた。
 いつの間にか会話がとまっていたけど、その沈黙もまた不思議と心地よかった。
 機織り機の動く音と一緒に暮らす人間の息遣いがそばに聞こえる。
 話しかければ返ってくる。
 それで十分だった。
 ゲームをして一人だけで過ごしている時間が、なんともったいなかったことか。
 こんなふうに毎日を過ごすのも悪くないなあと、サギの横顔をみながら考えていた。

「つばさという少年はここかね」

 昼下がりの沈黙は、大きなそんな声で破られる。
 声の方をみると大きなクマの兵士がいた。
 他のブフたちも何事かと彼を見上げている。
 クマの兵士はゆっくりと二人の前にやってくる。

「女王さまの使いでまいった。是非とも君とお会いしたいと申しています」
「ぼくとですか?」
「そうです」
「でもぼくの順番は、たぶんまだ、ですけど」

 いきなり元の世界に戻れると言われても、心の準備が出来ていなかった。
 サギも手をとめて不安そうにクマの兵士を見上げている。

「こちらからお願いがあってのことです」
「女王さまがぼくに?」
「はい。本来ならこちらから出向きたいところですが、身体の調子がまだすぐれないもので。呼びつける形になってしまって申し訳ありません。とのことです」

 一体なんの話だろう。 
 助けを求めて隣のサギに顔を向けると首を傾げた。

「夜までにはお送りいたします。どうかお城へ来て頂けませんか?」

 大きな身体のクマが頭を下げてまで頼むと言われては、断るに断れないではないか。

「わかりました」

 とつばさは答えた。

「そのかわり、必ず夜にはここにおくって下さい」
「もちろんですとも」

 クマに向けた視線を、そのまま不安そうなままのサギに向ける。

「すぐ戻ってくるから。ハシが起きたら説明しておいてね」

 サギに笑顔を向けて、つばさはクマの兵士と一緒に城へと向かった。
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