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十一章 ながいながい旅路
少年は荒野をめぐる
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ついた陸地は何も無い荒れ地だった。
土と砂が多く、ひどく埃っぽかった。
この大地には、女王さまのような役割を果たしている障りがいないのだろうか。
主がいるところは常に霧に包まれている。
それにもうおそらく一所にとどまり、消滅までの時を待っている。
それだけを頼りに二人は当ても無い旅を続けることになった。
ヤマのクニと違い、この辺りは食料に恵まれていない。
保存食は充分にあったが、それだけでは心許ない。
わずかに生えた草が食べられるものなら、つばさは調理して食べた。
二週間も旅をした頃、二人はようやく人の集落にたどり着いた。
そこに住んでいたのは影法師のような障りで、岩がくりぬいただけの家がぽつりぽつりあった。
どうやって暮らしているのか、なんとも想像がつかない。
カイムが情報を聞き出したところ、何ヶ月も前に白い塊が空をずっと北西に進んだと目撃されているらしかった。
つばさたちはその情報だけを頼りに進路を決めた。
次はひたすら岩山が続いた。
足場が少なくて、ときにはロープをよじ登らなければならなかった。
カイムが空を飛んでは器用にロープを結んでくれ、それを頼りにつばさは道無き道を歩いて行った。
この山には岩のような障りが住んでいた。
怪我をして泣いているその障りの子供をレントの葉で治したところ、つばさは一族総出で歓迎された。
チャダルという障りの彼等は、なんと石を食すという。
さすがにそんなものを食べられなかったけど、小魚などを捕ってきてくれた。
保存食と山草ぐらいしか口にしていないつばさには、久しぶりのごちそうとなった。
彼等は情報を集めてくれて、白い塊がまっすぐに岩山を抜けた先へ向かっていったと教えてくれる。つばさはそこに向かうことにした。
岩山だらけの道は、とても人が通れるような所ではなかったけど、チャダルの助けも借りてつばさはなんとか岩山を越えることが出来た。
次にたどり着いたのは極寒の地だった。
森はあったがヤマ国とは違って、木はほとんど針葉樹だ。
この地でつばさは初めて動物を殺した。
群れから離れたらしい毛の濃い鹿がいて、気が立っていたのか襲われたのである。
逃げられないと思ったつばさはレントの杖で殴りかかった。
それが丁度首にあたり、鹿は近くの岩に頭をぶつけると血を流して死んでしまった。
しばらく呆然としていたつばさだったが、殺した獲物はその身全てを利用して供養するのが礼儀だというキムニの言葉を思いだし、その身を剥ぐことにした。
カイムに教えて貰いながら皮を剥ぐ。
何度も吐きながらつばさは毛皮をはぎとった。
皮は寒さを防ぐマントとして、肉は食料とした。
オオカミに襲われそうになったとき、マントヒヒのような障りに助けられた。
彼は遠くからとある目的のためにやって来たのだという。
つばさとカイムは助けられたお礼から彼の目的に協力する。
彼からつばさは小さな動物を狩り方を学んだ。
そして彼の故郷で上空を飛ぶ白い霧を見たという話を聞いた二人は、目的を達成した彼に礼を言い、彼の国に向かうことになった。
極寒の大地を抜けると、大草原が広がっていた。
そこはそれなりに気温も穏やかで、食料も多かった。
そこを何日もかけて抜けると、今度は沼が続いていた。
ぬかるみで足を滑らしたつばさは、その地のぬしである何メートルもあるような巨大なヘビの障りに助けられた。
そのぬしから助けた代わりに、退屈をまぎらわす話をするように命じられた。
話と言われても何をしていいかわからなかったつばさは、ヤマのクニの話をした。
遙か南東にそんな国があることを知らなかったというぬしは、その国について聞きたがった。
つばさとカイムで交代で話し続け、三日後ようやく解放された。
ぬしはひきとめたお詫びに、沼を背に乗せて運んでくれた。
砂漠を抜け、彼のマントヒヒの障りがいた国を過ぎ、泥の海の上に島々が連なる地を訪れた。
何度も辛い眼にあった。危険なことに巻き込まれた。
そのたびにつばさはこれまで出会ってきた障り達の教えを駆使し、カイムと協力して切り抜けた。
眠れぬ日もあった。
食べ物がなくてひもじい思いをしたことも、寒すぎて心まで凍り付きそうになったこともあった。
そのたびに首飾りを握りしめて、自分を奮い立たせた。
朝が訪れ、昼が来て、夜が過ぎた。
前は大きめだったサギの編んでくれた服は、いつの間にかぴったりになっていた。
自分の身体が大きくなったという実感はつばさにあまりない。
つばさが主を探し始めてから、一年が過ぎようとしていた。
土と砂が多く、ひどく埃っぽかった。
この大地には、女王さまのような役割を果たしている障りがいないのだろうか。
主がいるところは常に霧に包まれている。
それにもうおそらく一所にとどまり、消滅までの時を待っている。
それだけを頼りに二人は当ても無い旅を続けることになった。
ヤマのクニと違い、この辺りは食料に恵まれていない。
保存食は充分にあったが、それだけでは心許ない。
わずかに生えた草が食べられるものなら、つばさは調理して食べた。
二週間も旅をした頃、二人はようやく人の集落にたどり着いた。
そこに住んでいたのは影法師のような障りで、岩がくりぬいただけの家がぽつりぽつりあった。
どうやって暮らしているのか、なんとも想像がつかない。
カイムが情報を聞き出したところ、何ヶ月も前に白い塊が空をずっと北西に進んだと目撃されているらしかった。
つばさたちはその情報だけを頼りに進路を決めた。
次はひたすら岩山が続いた。
足場が少なくて、ときにはロープをよじ登らなければならなかった。
カイムが空を飛んでは器用にロープを結んでくれ、それを頼りにつばさは道無き道を歩いて行った。
この山には岩のような障りが住んでいた。
怪我をして泣いているその障りの子供をレントの葉で治したところ、つばさは一族総出で歓迎された。
チャダルという障りの彼等は、なんと石を食すという。
さすがにそんなものを食べられなかったけど、小魚などを捕ってきてくれた。
保存食と山草ぐらいしか口にしていないつばさには、久しぶりのごちそうとなった。
彼等は情報を集めてくれて、白い塊がまっすぐに岩山を抜けた先へ向かっていったと教えてくれる。つばさはそこに向かうことにした。
岩山だらけの道は、とても人が通れるような所ではなかったけど、チャダルの助けも借りてつばさはなんとか岩山を越えることが出来た。
次にたどり着いたのは極寒の地だった。
森はあったがヤマ国とは違って、木はほとんど針葉樹だ。
この地でつばさは初めて動物を殺した。
群れから離れたらしい毛の濃い鹿がいて、気が立っていたのか襲われたのである。
逃げられないと思ったつばさはレントの杖で殴りかかった。
それが丁度首にあたり、鹿は近くの岩に頭をぶつけると血を流して死んでしまった。
しばらく呆然としていたつばさだったが、殺した獲物はその身全てを利用して供養するのが礼儀だというキムニの言葉を思いだし、その身を剥ぐことにした。
カイムに教えて貰いながら皮を剥ぐ。
何度も吐きながらつばさは毛皮をはぎとった。
皮は寒さを防ぐマントとして、肉は食料とした。
オオカミに襲われそうになったとき、マントヒヒのような障りに助けられた。
彼は遠くからとある目的のためにやって来たのだという。
つばさとカイムは助けられたお礼から彼の目的に協力する。
彼からつばさは小さな動物を狩り方を学んだ。
そして彼の故郷で上空を飛ぶ白い霧を見たという話を聞いた二人は、目的を達成した彼に礼を言い、彼の国に向かうことになった。
極寒の大地を抜けると、大草原が広がっていた。
そこはそれなりに気温も穏やかで、食料も多かった。
そこを何日もかけて抜けると、今度は沼が続いていた。
ぬかるみで足を滑らしたつばさは、その地のぬしである何メートルもあるような巨大なヘビの障りに助けられた。
そのぬしから助けた代わりに、退屈をまぎらわす話をするように命じられた。
話と言われても何をしていいかわからなかったつばさは、ヤマのクニの話をした。
遙か南東にそんな国があることを知らなかったというぬしは、その国について聞きたがった。
つばさとカイムで交代で話し続け、三日後ようやく解放された。
ぬしはひきとめたお詫びに、沼を背に乗せて運んでくれた。
砂漠を抜け、彼のマントヒヒの障りがいた国を過ぎ、泥の海の上に島々が連なる地を訪れた。
何度も辛い眼にあった。危険なことに巻き込まれた。
そのたびにつばさはこれまで出会ってきた障り達の教えを駆使し、カイムと協力して切り抜けた。
眠れぬ日もあった。
食べ物がなくてひもじい思いをしたことも、寒すぎて心まで凍り付きそうになったこともあった。
そのたびに首飾りを握りしめて、自分を奮い立たせた。
朝が訪れ、昼が来て、夜が過ぎた。
前は大きめだったサギの編んでくれた服は、いつの間にかぴったりになっていた。
自分の身体が大きくなったという実感はつばさにあまりない。
つばさが主を探し始めてから、一年が過ぎようとしていた。
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