転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

文字の大きさ
532 / 1,738

530.転売屋はスキルを失う

しおりを挟む
「やべ!」

「え?」

冒険者の持ってきた道具を鑑定していたときの事。

普段ならやらないようなミスをやらかしてしまった。

鑑定していたのは呪われた道具。

触るだけでは問題ないが、使用すると効果が発動してしまう。

呪われているだけに効果はあまりよろしくないものばかりなんだが・・・。

鑑定中に手を滑らせ道具を落としかけた。

それを慌ててつかんで回収したわけだが、掴んだ場所が悪く効果が発動してしまった。

「大丈夫ですか?」

「あぁ、問題な。」

「な?」

いつもだったら何も考えずに発動するスキル。

だが今はそれが発動しない。

「あの、大丈夫です?」

「気にするなこっちの話だ。これは封じの小槌、呪われているから銀貨10枚って所だ。どうする?」

「それでお願いします。」

「ミラ、代金を払ってくれ。」

「畏まりました、では代金の確認とサインをお願いします。」

その場をミラに任せて裏へと移動する。

手に持ったままの小槌を机の上に置き、俺はため息をついた。

『封じの小槌。コレを使用した者のスキルを封印する呪われた道具。ただし封印期間は短く翌日には効果が切れるが、それまでは何をしても封印を解くことは出来ない。最近の平均取引価格は銀貨10枚、最安値銀貨5枚最高値銀貨30枚。最終取引日は84日前と記録されています。』

最後に鑑定したこいつの能力。

どうやら落としたのを慌てて拾ったときに使用したという扱いになってしまったんだろう。

スキル封印か。

普通は相手とか魔物に使うものをまさか俺が使用することになるとは。

「あの、シロウ様大丈夫ですか?」

「大丈夫だが大丈夫じゃない。」

「えっとそれは・・・?」

「どうやらコレを拾ったときに効果が発動してしまったみたいだ。スキルが使えない。」

「そんな!」

珍しくミラが慌てた様子で小槌に触れた。

すぐに鑑定スキルが発動し効果を確認したことだろう。

「よかった、効果は一時的なようですね。」

「あぁ、それだけが救いだよ。しかし参ったな今日は仕事が出来そうにない。」

「大丈夫です、今日は武具の鑑定を止めて明日来て貰うようにしましょう。」

「そうするしかないか。」

「表は私が見ていますので、どうぞゆっくりしてください。」

働きづめというわけではないが、あれやこれやとしていてこの二日程外出していない。

ミラ的に気を使ってくれているんだろう。

たまには何も考えずに歩くのもありか。

「そうさせて貰う、悪いな。」

「そうだ、ドルチェ様の新作が出るそうなんですが・・・。」

「わかった、買ってくる。」

おねだりするなんて、いや俺が気を使わないようにしてくれたんだろう。

本当に出来た女だよお前は。

財布を手に取りそのまま店を出る。

仕事するにはスキルがないと困るが生活するだけなら特に問題ない。

さて、何をするかなぁ。

いつもなら何か理由があって外出をするのだが、今日に関していえばそれがない。

ないのだから好きな場所に行けばいいんだけども・・・。

「あれ、シロウさんどうしたんですか?」

「シープさんか、そっちこそこんな所で何してるんだ?」

大通りのど真ん中で羊男に会うのは珍しい。

いつもなら手には何かの書類を持っているだが今日はそれもなさそうだ。

「私はちょっと見回りに。」

「あぁ市場か。」

「最初のシロウさんみたいな人がいるかもしれませんから。」

「そりゃご苦労さん。」

「シロウさんこそお店はいいんですか?」

「ドルチェの新作を買ってこいとお使いを頼まれたんだよ。」

「なるほど戦力外通告ですね。」

俺がスキルを使えなくなったのは知らないはずなんだがなぁ。

盗聴器とかつけられてないよな?

「そういう事にしておいてくれ。」

「せっかくですから見て回ります?」

「邪魔になるだろ?」

「巡回も暇なんですよ。その点シロウさんがいれば暇つぶしも出来ますし目利きも出来ますから。」

「暇つぶしにだけは付き合ってやる。」

羊男自身も鑑定スキルを使えるから目利き自体は問題ないだろう。

俺にとっても暇つぶしになるので、羊男の後ろについて市場へと向かった。

「今日はいつも以上に活気があるな。」

「もうすぐ冬が明けますから、気分も上がるでしょう。」

「寒いのよりは暖かい方が気持ちがいいしな。」

「農地では作付けも始まりますし、それに向けての資金集めもあるんでしょうね。」

「そしてそんな時期にこそやらかすやつがいると。」

「そういう事です。あ、ちょっと行ってきます。」

ふらふらと市場の中を歩いていたが、突然いつものなよっとした感じが一瞬にして戦闘モードに切り替わった。

鋭い目をして向かったのは特に怪しくもないオッサンの露店だ。

店頭に並んでいるのは何の変哲もない壺や食器、何が気になるんだろうか。

しばらく様子を見ているとすぐに羊男が戻ってきた。

話しかけられたオッサンは慌てた様子で荷物をまとめている。

「何だったんだ?」

「壺の中に薬を入れて販売していたようです。中身を確認するとご禁制の物でした。」

「いや、なんで見ただけでわかるんだ?怖すぎるんだが。」

「呼び込みをするわけでもなくただ座っているように見えますが、冒険者の何人かが無言で壺の中を覗き込んでいました。あそこに薬があるのがわかっていたんでしょうね、目線でやり取りしていたのが見えたんです。」

「・・・この短時間でそれを感じるとか、ないわー。」

「それが仕事ですから。シロウさんもそういうのあるじゃないですか、どこに何が売ってるとかすぐわかるでしょ?」

「そういう事も出来た気もする。」

「なんで過去形なんです?」

「まぁいいじゃないか、次行くぞ次。」

その後も羊男と共に市場を巡回し、何人か注意していくのを眺めていた。

最近はポンコツみたいな感じに思っていたのだが、腐ってもギルド協会職員。

それなりの力量がないと、この仕事は出来ないよなぁ。

あらためてこいつの目はごまかせないなと思った。

「はぁ、今日はこんなもんでしょう。」

「ご苦労さん。」

「向こうでドルチェさんが店を出していましたね、どうぞ行ってきてください。お付き合いありがとうございました。」

「こっちこそいい勉強になった。」

「そうですか?」

「あぁ、悪いことは出来そうにない。」

「する気だったんですか?」

「生憎まっとうな商売を心がけていてね、とはいえ仮に魔が差してもそれはできそうもない。」

最初の時もそうだったが、頼りなさそうな顔しながらやるときはやる男だ。

悪いことはするもんじゃない。

羊男と別れてドルチェの店へ。

新作のレレモンと柚子のチーズケーキは中々に好評のようだ。

「シロウさん、あの柚子って果物また買ってきてくださいね!」

「あぁまた来月買い付けてくるつもりだ。」

「絶対ですよ!これなら夏も売れます、絶対に売れますから!」

「わかったからそんな大声出すなって。」

俺に気づくなりショーケースから身を乗り出してアピールしてくる。

レレモンと柚子は大半をジャムにしてみたが、全部消費できないのでドルチェにいくつか買ってもらった。

ジャムの味を確認するや否や即決での買い付けだ。

それがこうやって形になって戻ってくるのは感慨深いものがある。

「世の中にはあんなに美味しい果物がまだまだあるんですねぇ。」

「そうだな。」

「あ、次はこれでお菓子を作ろうと思うんですけどどう思いますか?」

はっとした顔をして下から何かを取り出すドルチェ。

思わず手を伸ばし受け取るも、もちろん鑑定スキルは反応しない。

見た感じは苺のようだが、詳しくはわからない。

鑑定スキルに慣れ過ぎてしまって詳細がわからないのが非常に不安だ。

メルディも普段こんな感じなんだろうか。

見るだけで物を見極めるってのは実はすごい事なんだなぁ。

「いいんじゃないか?」

「かなり酸っぱいのがネックなんですけど、シロウさんならどんな風にするのか意見を聞きたいんです。」

「なら明日まで待ってくれ、ちょっと考えてみる。」

「わかりました!明日じゃなくてもいつでもいいので教えてください。あ、いらっしゃいませ次の人どうぞ!」

後ろに別の客が来たので足早に店を後にする。

いつもならあれこれと見て回りたくなる露店も、今日は一切興味がわかない。

自分がいかにスキルに依存しているのかがよくわかるなぁ。

それがダメとは言わないが、ある程度は自分の目で判別できるようになったほうがいいだろうか。

とはいえ、明日には鑑定スキルは戻ってくるわけで。

ほんと、贅沢な悩みだなぁ。

もらった苺を転がしながら足早に店へと戻る。

「あ、おかえり。」

「おかえりなさいませ。」

「エリザ戻ってたのか。」

「うん、宝箱見つけたから帰ってきたんだけど今日は鑑定できないので。」

「悪いな、明日には見るから勘弁してくれ。」

「別に急いでないし大丈夫。ねぇそれは?」

「ドルチェから預かったやつだ。これでお菓子を作りたいんだと。」

「拝見します。」

ミラの手の上に苺を転がす。

いつもならこんなことしなくてもいいんだが、今日は全部丸投げだ。

「リフレッシュストロベリーですね、酸味が強く一粒で目が覚めると言われています。酸味はありますが甘みもそれなりにあるので、両方引き出せるようなお菓子がいいかもしれません。」

「酸っぱい苺か、なら甘く煮てパイにでもするか?」

「それじゃありきたりよ。もっと新しいのじゃないと。」

「新しいのってなんだよ。」

「そ、それは食べてから考えるわ!」

エリザは目にも止まらぬ速さで苺を奪い、口に入れてしまった。

が、本当に酸っぱいんだろう。

目を大きく見開きその場で足をジタバタさせている。

「酸っぱいってわかって食うなよ。」

「だってこんなに酸っぱいって思わなかったんだもの。」

「で、何か閃いたか?」

「じぇんじぇん。」

「だめじゃねぇか。」

やれやれ、これだから脳筋は。

スキルを失いどうなることかと思ったが、特に問題が起きるわけでもなく。

寝て起きれば元通りになっているだろう。

これからは気を付けようそんな事を思いつつ、スキルのありがたみを感じた一日だった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...