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1077.転売屋は尻尾の素材を売る
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海辺を出ること半日。
まだ比較的日の高いうちに最後の目的地へと到着した。
途中うっそうと茂る森を走り続けていたのだが、突然視界が開け目の前に巨大な草原地帯が現れる。
その真ん中には王都まではいかないもののかなり広い街が広がり、その奥には奇岩群がそびえたっている。
うーむ、絵にかいたような美しさ。
タイとかミャンマーとか、そっち系の雰囲気を感じさせるなぁ。
建物は石造りで高くても二階まで、そして屋根の上には大小ざまざまな尖塔が立っている。
オリエンタル・・・でいいんだろうか、それともエキゾチック?
まぁそんな感じの家々が並んでいる。
馬車はそのままノーチェックで街の中に入り、馬車が二台並行してすれ違えるぐらいの広い大通りをまっすぐ進む。
「祭りはすぐそこって感じの盛り上がりだな。」
「そうですね、どこもかしこも尾羽を付けた人でいっぱいです。」
「でもお祭りは二日後ですよね?」
「そう聞いているが待ちきれないんだろうなぁ。」
大通りを進みながら街行く人を観察すると、みな腰の部分に色鮮やかな尾羽をつけて歩いている。
羽追いの本番は二日後にもかかわらず自慢気につけて練り歩いているのは非常に面白い。
当日は競技だけでなく羽の綺麗さも競われるそうだからそれに向けてけん制し合っているんだろうか。
それともただつけたいだけか。
元の世界ではマスカレードなんて名前で仮面をつけて練り歩くお祭りがあったと思うが、あんな感じで当日を前に思い思いの楽しみ方をしているんだろう。
つまり、当日を前にして持ち込んだ品が売れるかもしれないということだ。
「宿は確かこのまままっすぐ行ったとこだよな?」
「最後の休憩の時にジャニス様はそうおっしゃっておられましたね。」
「ふむ。悪い、ちょっと馬車を止めてくれ。」
合図を出すと運転席にいたアニエスさんがゆっくりと端に馬車を寄せてくれた。
不思議そうな顔でマリーさんとオリンピアが俺を見る。
「どうされたんですか?」
「まだ日も高いし今のうちに羽を売っておきたい。軍資金も乏しいからな、補充しておかないと。」
「え、でも宿に戻ってからじゃダメなんですか?」
「そうするとめんどくさがって出てきそうにないんだよなぁ。だからやる気のあるうちに終わらせておきたいんだ。悪いが子供達を頼む。」
「お一人はダメですよ?」
「大丈夫、ウーラさんに荷運び手伝ってもらうから。」
さすがに知らない街で護衛もつけずに商売をするのはよろしくない。
事前にジャニスさんから露店の出し方とか場所は聞いているのでそこにさえ到着できれば大丈夫だろう。
少し先に言った所に市場を案内する看板も見えるし何とかなるさ。
他の馬車にも同じようなことを伝え、ウーラさんに手伝ってもらって大量の尾羽を積んだ木箱を荷押し車に移し替える。
さすがに一日で全部売れるとは思えないので、とりあえず中型木箱一つ分を売ることにした。
「悪いな、疲れてるのに。」
「ウ、ダイジョブ、デス」。
「売るのは俺がするから後ろで控えておいてくれ、座っているだけで問題ない。」
「ウ、ハイ。」
ウーラさんがいてくれるだけで面倒なトラブルが勝手にどこかにいってくれるので非常にありがたい。
露店の出し方は俺達の街と同じく中央の管理棟で手続きをして場所を借りる。
その際に売上表をもらうのでそこに売れた個数と金額を記入し、最後に総売り上げの一割を税金として支払うことになっている。
一割は大きいがその分出店料はかからないので、少額の取引の場合はありがたいだろう。
でも俺みたいな売り方だとその負担は大きくのしかかってくる。
でもまぁ余所者でも簡単に店を出せるってのはありがたい話だよな。
「さぁ、祭り用の尾羽はどうだ?わざわざダンジョンから運んできた一級品、色鮮やかな羽で腰飾りを今以上に彩ってくれ。」
いつものようにパンパンと手をたたき、道行く人の視線をこちらに集める。
最初こそ緊張したものの、これをするとしないと出儲けが結構違うので金のためにしっかりと行うようにしている。
すぐに近くを歩いていた客が近づいてきて、店頭に置いた入れ物に刺した尾羽を眺め始めた。
「これはこの辺じゃ見かけない見事なものだ、どこの品だ?」
「ここからだいぶ北にあるダンジョンで仕入れたのさ。」
「ダンジョンか、どおりで珍しいわけだ。」
「この色、この広がり、悪くないだろ?」
客が目を付けたのはクジャクのような鮮やかな模様が描かれた尾羽。
『パヴォーネの尾羽。鮮やかな尾羽を大きく広げて求愛する鳥の魔物。魔物の一種ではあるのだが自ら人を襲うことはない。ただし、求愛行動を邪魔されると尾羽を広げたまま猛烈な速度で追いかけてくる。鮮やかな尾羽は飾りなどに用いられる。最近の平均取引価格は銅貨77枚、最安値銅貨40枚、最高値銀貨1枚、最終取引日は本日と記録されています。』
仕入れた時よりも値段が上がっているのは祭りが近いからだろう。
これは想像以上に稼げそうだな。
「見事なもんだ。いくらだ?」
「一本銀貨1枚だが、3本買うなら銅貨30枚値引きしよう。」
「それはありがたい。それじゃあ他にこっちのも貰おうか。」
「毎度あり、全部で銀貨5枚だ。」
最初に買って行ってくれたのは恰幅のいい紳士的な男性。
それに続くように客が次から次へとやってきて、入れ物に刺した尾羽を買っていく。
なくなるたびに後ろの木箱から補充するのだが、さばくのが追い付かず結局ウーラさんに手伝ってもらってしまった。
ある程度売りさばき、そろそろ引き上げようかと思っていたその時だった。
少し離れた所から一人の若者がこっちをじっと見ていた。
客なんだろうけど、他の客に遠慮して近づいてこれないような感じだ。
腰飾りをつけているので今度のお祭りに参加するんだろうけど、飾りは随分とみずほらしい。
なるほど、それで買い足すつもりなのか。
目の前の客がいなくなったタイミングで彼と目が合い、頷いてやると嬉しそうにこちらに駆けよってきた。
「いらっしゃい、随分待たせたな。」
「あ、知ってたんですね。」
「視界の端に入る程度だがな、どれが欲しいんだ?」
「えっと、こっちの短いのとこの明るめのを。」
「なんだそれっぽっちでいいのか?」
「あまりお金がなくて・・・。」
そういいながら彼はポケットから硬貨を取り出した。
掌の上には銀貨が2枚。
確かに大きめのを買ってしまったらすぐになくなってしまうだろう。
それで短くてでも明るい感じのを選んだのか。
「コンテストに出るのか?」
「いえ、羽追いの方です。」
「それなら短いのもありか、考えたな。」
「足が速いしか取り柄がないんです、でも今回はどうしても勝ちたくて・・・。」
「なんだなんだ?貧乏野郎がいっちょ前に羽を買ってるぞ。」
どうしても勝ちたい、そんな彼の言葉を遮るようにして後ろから誰かがちょっかいをかけてきた。
そしてそのまま押しのけるようにして俺の前に立つ。
現れたのは随分と良いものを食べてきたんだろうなぁと一目でわかる見た目をした彼と同年代の少年。
それと、その取り巻きと思われるのが三人。
身なりはよく、服にはしわ一つないどこからどう見ても金持ちって感じだ。
「いらっしゃい。」
「こんな貧乏野郎に売る羽なんてないっての。おい、これ全部くれ。」
「全部か?」
「何度も言わすな全部だよ。こんな小汚い奴にこの綺麗な羽はふさわしくないって言ってるんだ、いいから早く値段を言えよ。なんなら後ろにあるのも全部買ってやるからさ。」
「それはありがたい話だ、計算するから少し待ってくれ。」
彼には悪いがこっちも商売だ。
金持ちらしいので遠慮なく吹っ掛けさせてもらおう。
「あー、全部で金貨4枚と銀貨11枚だ。」
「金貨4枚!?」
「ぼったくるのもたいがいにしろよ!?」
「わざわざ来たからこの日の為に運んできたやつだ、ぼったくりどころか相場より安くしてるんだが・・・。不要なら彼に買ってもらうが?」
取り巻きが威嚇してくるも後ろに控えるウーラさんのおかげで口以外の物は出せなかったようだ。
こういうのがあるからマリーさんは一人で行くなって言ったんだろう。
見た感じあの少年に対抗するために買い付けようとしている感じだし、ここで引き下がる可能性は非常に低い。
どう見積もっても残りの在庫は金貨2枚分。
一応ぼったくりじゃないとは言っているが、向こうも俺のやり口はわかっているだろう。
「たった金貨4枚だろ、ほらさっさと羽をよこせ。」
「毎度どうも、全部買ってくれたし、この入れ物ごと持って行ってくれ。」
投げつけられた金貨を受け取り、代わりに入れ物に使っていた深めのプロボックスに残りの在庫を全部詰めて取り巻きに無理やり押し付ける。
どんな相手でも金を払ってくれるのなら客であることに変わりはない。
たとえ投げつけられたとしてもキレることなく対処するぐらいには大人のつもりだ。
最初に声をかけてきた少年を鼻で笑い、取り巻きを連れて金持ち少年は去っていった。
一先ず完売御礼ってね。
「悪いな、全部売れちまった。」
「いいんです。僕には金貨4枚なんて出せなかったし。」
「でもほしかったんだろ?」
「・・・はい。」
「あいつに負けたくないのか?」
「今回の羽追いで勝たないと幼馴染があいつに取られるんです。だから絶対に勝たないといけないんですけど、僕にはお金がなくて。あいつは羽をいっぱい持ってるからどれだけ頑張っても僕の方が・・・。」
うつむきながら小さなため息をつく少年。
まったく、金持ちってのはやることが汚いよな。
どうせあの取り巻きも参加して集中攻撃するつもりだろ?
たとえどれだけ足が速くても四人に狙われれば元も子もない。
加えて向こうは大量の羽を腰にぶら下げていて多少引っこ抜いたってびくともしないだろう。
で、金に物を言わせてその幼馴染とやらをかっさらっていくと。
なるほどなぁ。
そんな話を聞かされたら一肌脱ぎたくなるじゃないか。
なにより金を投げるやつに負けてほしくない。
「勝ちたいか?」
「え?」
「勝ちたいかって聞いているんだ。」
「それはもちろん勝ちたいです。」
「だがそんなみじめな羽飾りじゃ勝負にもなりやしない。せめてもう少し増やすべきだな。」
「でも全部売れちゃいましたし・・・。」
何を勘違いしているんだろうか。
確かに在庫は全部売れた、だがそれは最初に持ち込んだ分だけ。
俺を誰だと思っているんだ?
売れるとわかっていてたった中型木箱一個分しか持ち込まないわけがないじゃないか。
「安心しろ在庫は他にもある。だがそれを買う金はなさそうだから足りない分は働いて稼げ。ちょうど荷下ろしや仕分けをする人が足りてないんだ。それとこの街について詳しい奴も探してる。」
「詳しいってどのぐらいですか?」
「各ギルドや商店の場所、それから穴場の飯屋なんてのも知っていたら最高だ。」
「それなら大丈夫です。お店の場所はわかるし、美味しいお店も知ってます。」
「名前は?」
「フレイっていいます。」
「俺はシロウだ。それじゃあフレイ、さっそく仕事を頼みたいんだが・・・腹減ってないか?」
そう聞くや否やフレイの腹がグゥと鳴った。
腹が減ってはなんとやら、詳しく話を聞くにもまずは腹ごしらえだ。
南方旅行後半戦。
この街で一儲けする為に頼もしい助っ人と知り合うことができた。
まだ比較的日の高いうちに最後の目的地へと到着した。
途中うっそうと茂る森を走り続けていたのだが、突然視界が開け目の前に巨大な草原地帯が現れる。
その真ん中には王都まではいかないもののかなり広い街が広がり、その奥には奇岩群がそびえたっている。
うーむ、絵にかいたような美しさ。
タイとかミャンマーとか、そっち系の雰囲気を感じさせるなぁ。
建物は石造りで高くても二階まで、そして屋根の上には大小ざまざまな尖塔が立っている。
オリエンタル・・・でいいんだろうか、それともエキゾチック?
まぁそんな感じの家々が並んでいる。
馬車はそのままノーチェックで街の中に入り、馬車が二台並行してすれ違えるぐらいの広い大通りをまっすぐ進む。
「祭りはすぐそこって感じの盛り上がりだな。」
「そうですね、どこもかしこも尾羽を付けた人でいっぱいです。」
「でもお祭りは二日後ですよね?」
「そう聞いているが待ちきれないんだろうなぁ。」
大通りを進みながら街行く人を観察すると、みな腰の部分に色鮮やかな尾羽をつけて歩いている。
羽追いの本番は二日後にもかかわらず自慢気につけて練り歩いているのは非常に面白い。
当日は競技だけでなく羽の綺麗さも競われるそうだからそれに向けてけん制し合っているんだろうか。
それともただつけたいだけか。
元の世界ではマスカレードなんて名前で仮面をつけて練り歩くお祭りがあったと思うが、あんな感じで当日を前に思い思いの楽しみ方をしているんだろう。
つまり、当日を前にして持ち込んだ品が売れるかもしれないということだ。
「宿は確かこのまままっすぐ行ったとこだよな?」
「最後の休憩の時にジャニス様はそうおっしゃっておられましたね。」
「ふむ。悪い、ちょっと馬車を止めてくれ。」
合図を出すと運転席にいたアニエスさんがゆっくりと端に馬車を寄せてくれた。
不思議そうな顔でマリーさんとオリンピアが俺を見る。
「どうされたんですか?」
「まだ日も高いし今のうちに羽を売っておきたい。軍資金も乏しいからな、補充しておかないと。」
「え、でも宿に戻ってからじゃダメなんですか?」
「そうするとめんどくさがって出てきそうにないんだよなぁ。だからやる気のあるうちに終わらせておきたいんだ。悪いが子供達を頼む。」
「お一人はダメですよ?」
「大丈夫、ウーラさんに荷運び手伝ってもらうから。」
さすがに知らない街で護衛もつけずに商売をするのはよろしくない。
事前にジャニスさんから露店の出し方とか場所は聞いているのでそこにさえ到着できれば大丈夫だろう。
少し先に言った所に市場を案内する看板も見えるし何とかなるさ。
他の馬車にも同じようなことを伝え、ウーラさんに手伝ってもらって大量の尾羽を積んだ木箱を荷押し車に移し替える。
さすがに一日で全部売れるとは思えないので、とりあえず中型木箱一つ分を売ることにした。
「悪いな、疲れてるのに。」
「ウ、ダイジョブ、デス」。
「売るのは俺がするから後ろで控えておいてくれ、座っているだけで問題ない。」
「ウ、ハイ。」
ウーラさんがいてくれるだけで面倒なトラブルが勝手にどこかにいってくれるので非常にありがたい。
露店の出し方は俺達の街と同じく中央の管理棟で手続きをして場所を借りる。
その際に売上表をもらうのでそこに売れた個数と金額を記入し、最後に総売り上げの一割を税金として支払うことになっている。
一割は大きいがその分出店料はかからないので、少額の取引の場合はありがたいだろう。
でも俺みたいな売り方だとその負担は大きくのしかかってくる。
でもまぁ余所者でも簡単に店を出せるってのはありがたい話だよな。
「さぁ、祭り用の尾羽はどうだ?わざわざダンジョンから運んできた一級品、色鮮やかな羽で腰飾りを今以上に彩ってくれ。」
いつものようにパンパンと手をたたき、道行く人の視線をこちらに集める。
最初こそ緊張したものの、これをするとしないと出儲けが結構違うので金のためにしっかりと行うようにしている。
すぐに近くを歩いていた客が近づいてきて、店頭に置いた入れ物に刺した尾羽を眺め始めた。
「これはこの辺じゃ見かけない見事なものだ、どこの品だ?」
「ここからだいぶ北にあるダンジョンで仕入れたのさ。」
「ダンジョンか、どおりで珍しいわけだ。」
「この色、この広がり、悪くないだろ?」
客が目を付けたのはクジャクのような鮮やかな模様が描かれた尾羽。
『パヴォーネの尾羽。鮮やかな尾羽を大きく広げて求愛する鳥の魔物。魔物の一種ではあるのだが自ら人を襲うことはない。ただし、求愛行動を邪魔されると尾羽を広げたまま猛烈な速度で追いかけてくる。鮮やかな尾羽は飾りなどに用いられる。最近の平均取引価格は銅貨77枚、最安値銅貨40枚、最高値銀貨1枚、最終取引日は本日と記録されています。』
仕入れた時よりも値段が上がっているのは祭りが近いからだろう。
これは想像以上に稼げそうだな。
「見事なもんだ。いくらだ?」
「一本銀貨1枚だが、3本買うなら銅貨30枚値引きしよう。」
「それはありがたい。それじゃあ他にこっちのも貰おうか。」
「毎度あり、全部で銀貨5枚だ。」
最初に買って行ってくれたのは恰幅のいい紳士的な男性。
それに続くように客が次から次へとやってきて、入れ物に刺した尾羽を買っていく。
なくなるたびに後ろの木箱から補充するのだが、さばくのが追い付かず結局ウーラさんに手伝ってもらってしまった。
ある程度売りさばき、そろそろ引き上げようかと思っていたその時だった。
少し離れた所から一人の若者がこっちをじっと見ていた。
客なんだろうけど、他の客に遠慮して近づいてこれないような感じだ。
腰飾りをつけているので今度のお祭りに参加するんだろうけど、飾りは随分とみずほらしい。
なるほど、それで買い足すつもりなのか。
目の前の客がいなくなったタイミングで彼と目が合い、頷いてやると嬉しそうにこちらに駆けよってきた。
「いらっしゃい、随分待たせたな。」
「あ、知ってたんですね。」
「視界の端に入る程度だがな、どれが欲しいんだ?」
「えっと、こっちの短いのとこの明るめのを。」
「なんだそれっぽっちでいいのか?」
「あまりお金がなくて・・・。」
そういいながら彼はポケットから硬貨を取り出した。
掌の上には銀貨が2枚。
確かに大きめのを買ってしまったらすぐになくなってしまうだろう。
それで短くてでも明るい感じのを選んだのか。
「コンテストに出るのか?」
「いえ、羽追いの方です。」
「それなら短いのもありか、考えたな。」
「足が速いしか取り柄がないんです、でも今回はどうしても勝ちたくて・・・。」
「なんだなんだ?貧乏野郎がいっちょ前に羽を買ってるぞ。」
どうしても勝ちたい、そんな彼の言葉を遮るようにして後ろから誰かがちょっかいをかけてきた。
そしてそのまま押しのけるようにして俺の前に立つ。
現れたのは随分と良いものを食べてきたんだろうなぁと一目でわかる見た目をした彼と同年代の少年。
それと、その取り巻きと思われるのが三人。
身なりはよく、服にはしわ一つないどこからどう見ても金持ちって感じだ。
「いらっしゃい。」
「こんな貧乏野郎に売る羽なんてないっての。おい、これ全部くれ。」
「全部か?」
「何度も言わすな全部だよ。こんな小汚い奴にこの綺麗な羽はふさわしくないって言ってるんだ、いいから早く値段を言えよ。なんなら後ろにあるのも全部買ってやるからさ。」
「それはありがたい話だ、計算するから少し待ってくれ。」
彼には悪いがこっちも商売だ。
金持ちらしいので遠慮なく吹っ掛けさせてもらおう。
「あー、全部で金貨4枚と銀貨11枚だ。」
「金貨4枚!?」
「ぼったくるのもたいがいにしろよ!?」
「わざわざ来たからこの日の為に運んできたやつだ、ぼったくりどころか相場より安くしてるんだが・・・。不要なら彼に買ってもらうが?」
取り巻きが威嚇してくるも後ろに控えるウーラさんのおかげで口以外の物は出せなかったようだ。
こういうのがあるからマリーさんは一人で行くなって言ったんだろう。
見た感じあの少年に対抗するために買い付けようとしている感じだし、ここで引き下がる可能性は非常に低い。
どう見積もっても残りの在庫は金貨2枚分。
一応ぼったくりじゃないとは言っているが、向こうも俺のやり口はわかっているだろう。
「たった金貨4枚だろ、ほらさっさと羽をよこせ。」
「毎度どうも、全部買ってくれたし、この入れ物ごと持って行ってくれ。」
投げつけられた金貨を受け取り、代わりに入れ物に使っていた深めのプロボックスに残りの在庫を全部詰めて取り巻きに無理やり押し付ける。
どんな相手でも金を払ってくれるのなら客であることに変わりはない。
たとえ投げつけられたとしてもキレることなく対処するぐらいには大人のつもりだ。
最初に声をかけてきた少年を鼻で笑い、取り巻きを連れて金持ち少年は去っていった。
一先ず完売御礼ってね。
「悪いな、全部売れちまった。」
「いいんです。僕には金貨4枚なんて出せなかったし。」
「でもほしかったんだろ?」
「・・・はい。」
「あいつに負けたくないのか?」
「今回の羽追いで勝たないと幼馴染があいつに取られるんです。だから絶対に勝たないといけないんですけど、僕にはお金がなくて。あいつは羽をいっぱい持ってるからどれだけ頑張っても僕の方が・・・。」
うつむきながら小さなため息をつく少年。
まったく、金持ちってのはやることが汚いよな。
どうせあの取り巻きも参加して集中攻撃するつもりだろ?
たとえどれだけ足が速くても四人に狙われれば元も子もない。
加えて向こうは大量の羽を腰にぶら下げていて多少引っこ抜いたってびくともしないだろう。
で、金に物を言わせてその幼馴染とやらをかっさらっていくと。
なるほどなぁ。
そんな話を聞かされたら一肌脱ぎたくなるじゃないか。
なにより金を投げるやつに負けてほしくない。
「勝ちたいか?」
「え?」
「勝ちたいかって聞いているんだ。」
「それはもちろん勝ちたいです。」
「だがそんなみじめな羽飾りじゃ勝負にもなりやしない。せめてもう少し増やすべきだな。」
「でも全部売れちゃいましたし・・・。」
何を勘違いしているんだろうか。
確かに在庫は全部売れた、だがそれは最初に持ち込んだ分だけ。
俺を誰だと思っているんだ?
売れるとわかっていてたった中型木箱一個分しか持ち込まないわけがないじゃないか。
「安心しろ在庫は他にもある。だがそれを買う金はなさそうだから足りない分は働いて稼げ。ちょうど荷下ろしや仕分けをする人が足りてないんだ。それとこの街について詳しい奴も探してる。」
「詳しいってどのぐらいですか?」
「各ギルドや商店の場所、それから穴場の飯屋なんてのも知っていたら最高だ。」
「それなら大丈夫です。お店の場所はわかるし、美味しいお店も知ってます。」
「名前は?」
「フレイっていいます。」
「俺はシロウだ。それじゃあフレイ、さっそく仕事を頼みたいんだが・・・腹減ってないか?」
そう聞くや否やフレイの腹がグゥと鳴った。
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しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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