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1096.転売屋は厳しい冬を迎える
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窓を開けるとそこは雪国だった。
いや、マジでそうとしか思えない光景が広がっている。
一面真っ白で屋根の上も地面も雪に埋もれてしまっていた。
一晩、たった一晩でこれだ。
この世界が季節感に忠実なのはよくわかっているが、ここまで極端だと色々と考えるものがあるな。
この雪はどこから来たのかとかどうするんだとか。
窓を開けると暴力的な冷気が正面からぶつかってくる。
昨日も秋の割には寒いって言いながら過ごしていたが一晩のうちに軽々とその寒さを飛び越えて冬がやってきた。
うーさぶ。
窓を閉め、なんならカーテンも閉めて何も見なかったことにしてまだ熱の残ったベッドにもぐりこむ。
そう、これは夢だ。
いくら何でも一晩でこんなに雪が積もるはずがない。
「シロウ大変よ!」
夢だと割り切って寝ようとしたところで、ノックもなしにエリザが部屋に飛び込んできた。
俺は何も知らない、俺はまだ寝てる。
「寝てる。」
「寝てる場合じゃないわよ!外、外見て!」
「見ない、雪なんて絶対に見ないぞ。」
「なんだもう見てるんじゃない。ほら早く起きて雪かきするわよ、ルカ達に綺麗な雪を見せてあげなくちゃ。」
狸寝入りをするつもりだったのだが、子供の名前を出されるとそういうわけにもいかない。
彼らのキラキラと輝く顔を見るためにはどれだけつらくても現実に向かい合わなきゃなわないわけで。
仕方ない、起きるか。
ベッドサイドに立つエリザをベッドの中に引きずり込んで最後の抵抗をした後、髪の毛がぼさぼさになったと怒るエリザをなだめながらエントランスへ。
何かをお腹に入れておきたいところだがまずは雪かきが先決だ。
「おはようございますお館様。」
「おはようグレイス、どのぐらい積もってる?」
「およそ10cmほどでしょうか。ひとまず門扉まではウーラ様に除雪してもらいましたが、こまごまとした通路の雪が残ったままです。」
10cmか。
雪国に比べるとどうってことないんだろうが、5cmでも交通障害が起きるような都会で暮らしていた身としては中々の量。
雪とはあまり縁のないこの街も似たようなものだろう。
前に大雪が降った時の経験があるのでそこまで大騒ぎにはなっていないだろうが、また雪捨て場の確保やらなんやらと忙しくなりそうだ。
コートの前をしっかりと閉めてから扉を開けて極寒の地へと身を投じる。
まずは生活動線の確保から、それから子供達用の雪の確保だな。
真っ白い庭を見ながら気合いを入れ、エリザと二人で朝食までしっかりと手を動かすのだった。
「お二人共お疲れさまでした。」
「うーさぶさぶ、しょっぱなからこれとかこの冬どうなるんだ?」
「明日はもっと積もるとか?」
「毎日これはさすがに勘弁してほしいわ。雪そのものは軽くても、スコップが小さいから回数こなさなきゃダメなのよね。」
「わかる。おかげで腕がパンパンだ。」
まさか初日からこんなことになると思っていなかったので、雪かき用のスコップなんかを常備しているはずもなく穴掘り用のやつで雪かきをする羽目になってしまった。
おかげで両腕は何もしていなくてもプルプルと震えている。
これが毎日ってのはいくら何でも勘弁してほしい。
とりあえず暖炉の前で体を温めつつ、ハーシェさんが持ってきてくれた香茶を美味しくいただく。
今日のははちみつとミルク入りか、冷えた体に染み渡るなぁ。
「確かに毎日この雪じゃ先が思いやられますね、裏の倉庫に行くのも一苦労でした。」
「今頃は街中大騒ぎだろうなぁ。とりあえず雪捨て場をどうするかだが、この雪で工事はできるのか?」
「下水道工事は大丈夫だと思いますが、物流が心配ですね。」
「数日止まる程度であればいいのですが、これがずっと続くとなると色々と問題も出てくると思います。」
これだけの雪になれば街道を行き来する馬車にも大きな遅れが出てくるだろう。
平野部でこれなんだ、山間部はかなりの雪になっているに違いない。
さすがに川が凍ることはないと思うが港町からの荷運びは陸路が使えなくなる可能性が高い。
後でバーンに乗って確認した方がいいかもなぁ。
こうして冬の始まり23月の初日は波乱の幕開けを迎えたわけだが、仕事は待ってくれるわけもなく。
午前中は雪景色を見ながら昨日届いた書類を片付けつつ街の状況について報告を受ける。
俺が思っているよりかは普通に稼働しているようだがやはりネックは除雪作業。
今回は広い拡張工事現場を雪捨て場にしているようだが、除雪用の道具があまりよろしくないのか作業は遅々として進んでいないようだ。
「シロウ様、どうしましょう。」
「とりあえず今あるもので何とかするしかないんだが・・・。土魔法じゃダメなのか?」
「あれをすると動かした後の地面がボコボコになっちゃうんで、固めるのが大変なんです。」
「そりゃ駄目だ。」
書類仕事を終わらせた後、巡回を兼ねて工事現場に顔を出したのだが状況は聞いていた以上によろしくなかった。
雪が運ばれてくるのはいいんだが、場所が決まっていないのかそこら中に雪の山ができてしまって収拾がついていない。
労働力はあるのに道具が良くないので処理が追い付いていない感じだ。
ここでも問題になっているのは除雪用のスコップ。
あくまでも土を掘るために使う仕様なので重たい上に量を動かすことができないんだよな。
雪国によくある幅広のプラスチック製のスコップとかなら作業効率も上がるんだろうけど・・・。
「板とかじゃだめだもんなぁ。」
「それも考えたんですけど押しても雪が盛り上がるだけですぐ動かなくなっちゃって、とはいえ掘るには効率が悪くて。いっそのこととかそうとも思ったんですけど、この寒さじゃお湯もすぐに冷めちゃうんですよね。」
「それが凍った時の方が面倒だ。焔の石って手もあるが、これだけの雪になると焼け石に水ってか。」
「むしろ皆さんのカイロに使われていて数が足りてないぐらいです。」
あー、そういえばそんな話になってたな。
この間のカイロ袋だが俺が思っていた以上に好評のようで、先行して屋外で作業する労働者に配られたんだとか。
天幕も寝具も冬仕様に変更されたそうだが、それでもこの寒さじゃ辛いので焔の石を複数個支給しているらしい。
その関係もあって一般に回す焔の石が一時的に足りなくなっているそうだが、冒険者が必死になって回収しているのでしばらくすると落ち着いては来るだろう。
そんな事よりも問題はこの雪をどう効率よく処理するか。
除雪車でもあればこの広さぐらいならあっという間にキレイにしてしまうんだろうが、生憎とショベルカーもホイールローダーも存在しない。
あるのは人力だけ、でもそれすらうまく使えていないわけで。
せめて除雪スコップがあればなぁ。
「ん?」
「どうしました?」
「いや、なんか面白いのを使っている人がいるなと思ってな。ちょっと待ってろ。」
ふと視界の端に気になるものを見つけ、雪に足を取られながらその人の所へと向かう。
周りが重たいスコップに四苦八苦している中、その人は涼しい顔でひょいひょいと雪の塊をどけていく。
「ちょっといいか?」
「ん?」
「随分と面白いスコップだな、自作か?」
「あぁ、これか。」
「見た感じ木の棒に刺してるだけみたいだが・・・見せてもらっていいか?」
「そんないいもんじゃないぞ。使い古してボロボロだし。」
恥ずかしそうにしながらもその人はスコップを手渡してくれた。
『プラティベロの歯。巨大な歯を持つ魔獣の一種で、その歯で泥の中を掘り起こし中に隠れている虫や小魚を食べている。大人しい性格と力強さから湿地帯の移動手段として重宝されている。歯は定期的に生え変わる。最近の平均取引価格は銅貨30枚。最安値銅貨17枚、最高値銅貨68枚、最終取引日は52日前と記録されています。』
うーん、あまり聞いたことのない魔獣のようだがこの大きさの歯から察するにかなりの巨体なんだろう。
横60㎝縦40cm程の長方形をしたそれは、真ん中が少しくぼんでいてぱっと見スコップの先端のようにしか見えない。
それを切れ目を入れた木の棒に刺して、根元をぐるぐる巻きにしてスコップ代わりにしている。
持たせてもらったが非常に軽い、でも歯っていうぐらいだからかなり硬くて多少踏まれた雪でも難なく差し込むことができるようだ。
これはいい、非常にいい。
「プラティベロの歯か、この辺じゃ見かけない魔獣だな。」
「西の方じゃごくありふれた魔獣だけど、こんなに乾燥しているんじゃ出番はないだろうなぁ。」
「確かに、湿地帯なんてダンジョンの中ぐらいなものだ。なんでまたこんなものを?」
「床に敷いて座るのに便利なんだよ。歯っていう割に柔らかいし、じかに座るより汚れないしな。」
「確かに。」
気にしない人は気にしないんだろうけど、直接地面に座るぐらいなら段ボールか何かでも敷きたくなってしまう。
座布団代わりに使うには柔らかさは足りないが、この人はそういうのを求めてるんじゃないんだろうな。
「悪い、邪魔した。」
「いやいや、気にしないでくれ。」
「いつもと違う仕事にはなるが引き続きよろしく頼む、じゃあまた。」
プラティベロかぁ・・・ここじゃあまりお目にかかれない魔獣だが、西の方に行けば同じものが手配できるかもしれない。
「どうでした?」
「プラティベロって魔獣の歯らしい。知ってたか?」
「いえ、全く。」
「私知ってますよ、出っ歯の可愛い魔獣ですよね。」
「それ、可愛いのか?」
「可愛いに決まってるじゃないですか!」
現物を見ていないので何とも言えないんだが、女性の可愛いの基準が時々わからなくなる。
ハダカデバネズミとか、普通に見たらどこにも可愛い要素がないはずなのにそれが可愛く見える人もいるっていうし・・・。
ま、人の好みにとやかく言うのは良くないよな。
ともかく素材もそんなに高くないし、これからのことを考えると急ぎ準備した方がよさそうだ。
バーンに乗れば雪の影響を受けることなく移動できるし、周辺の確認ついでに西の方へと足を向けるのもいいかもしれない。
あの使いやすさがあれば作業効率はグンと上がる。
雪は今日だけで終わるかわからないし、仮に毎日降るのであればそれこそ街中の人がそいつを求める事だろう。
一本銀貨1枚、いや1.5枚でも売れるんじゃないだろうか。
原価なんてたかが知れているし、この街で売れなくなっても他所で十分売れるので安心して仕入れができるはず。
冬。
まさかまさかの大雪で始まった23月。
これは何かの前触れか、あるいは・・・。
いや、マジでそうとしか思えない光景が広がっている。
一面真っ白で屋根の上も地面も雪に埋もれてしまっていた。
一晩、たった一晩でこれだ。
この世界が季節感に忠実なのはよくわかっているが、ここまで極端だと色々と考えるものがあるな。
この雪はどこから来たのかとかどうするんだとか。
窓を開けると暴力的な冷気が正面からぶつかってくる。
昨日も秋の割には寒いって言いながら過ごしていたが一晩のうちに軽々とその寒さを飛び越えて冬がやってきた。
うーさぶ。
窓を閉め、なんならカーテンも閉めて何も見なかったことにしてまだ熱の残ったベッドにもぐりこむ。
そう、これは夢だ。
いくら何でも一晩でこんなに雪が積もるはずがない。
「シロウ大変よ!」
夢だと割り切って寝ようとしたところで、ノックもなしにエリザが部屋に飛び込んできた。
俺は何も知らない、俺はまだ寝てる。
「寝てる。」
「寝てる場合じゃないわよ!外、外見て!」
「見ない、雪なんて絶対に見ないぞ。」
「なんだもう見てるんじゃない。ほら早く起きて雪かきするわよ、ルカ達に綺麗な雪を見せてあげなくちゃ。」
狸寝入りをするつもりだったのだが、子供の名前を出されるとそういうわけにもいかない。
彼らのキラキラと輝く顔を見るためにはどれだけつらくても現実に向かい合わなきゃなわないわけで。
仕方ない、起きるか。
ベッドサイドに立つエリザをベッドの中に引きずり込んで最後の抵抗をした後、髪の毛がぼさぼさになったと怒るエリザをなだめながらエントランスへ。
何かをお腹に入れておきたいところだがまずは雪かきが先決だ。
「おはようございますお館様。」
「おはようグレイス、どのぐらい積もってる?」
「およそ10cmほどでしょうか。ひとまず門扉まではウーラ様に除雪してもらいましたが、こまごまとした通路の雪が残ったままです。」
10cmか。
雪国に比べるとどうってことないんだろうが、5cmでも交通障害が起きるような都会で暮らしていた身としては中々の量。
雪とはあまり縁のないこの街も似たようなものだろう。
前に大雪が降った時の経験があるのでそこまで大騒ぎにはなっていないだろうが、また雪捨て場の確保やらなんやらと忙しくなりそうだ。
コートの前をしっかりと閉めてから扉を開けて極寒の地へと身を投じる。
まずは生活動線の確保から、それから子供達用の雪の確保だな。
真っ白い庭を見ながら気合いを入れ、エリザと二人で朝食までしっかりと手を動かすのだった。
「お二人共お疲れさまでした。」
「うーさぶさぶ、しょっぱなからこれとかこの冬どうなるんだ?」
「明日はもっと積もるとか?」
「毎日これはさすがに勘弁してほしいわ。雪そのものは軽くても、スコップが小さいから回数こなさなきゃダメなのよね。」
「わかる。おかげで腕がパンパンだ。」
まさか初日からこんなことになると思っていなかったので、雪かき用のスコップなんかを常備しているはずもなく穴掘り用のやつで雪かきをする羽目になってしまった。
おかげで両腕は何もしていなくてもプルプルと震えている。
これが毎日ってのはいくら何でも勘弁してほしい。
とりあえず暖炉の前で体を温めつつ、ハーシェさんが持ってきてくれた香茶を美味しくいただく。
今日のははちみつとミルク入りか、冷えた体に染み渡るなぁ。
「確かに毎日この雪じゃ先が思いやられますね、裏の倉庫に行くのも一苦労でした。」
「今頃は街中大騒ぎだろうなぁ。とりあえず雪捨て場をどうするかだが、この雪で工事はできるのか?」
「下水道工事は大丈夫だと思いますが、物流が心配ですね。」
「数日止まる程度であればいいのですが、これがずっと続くとなると色々と問題も出てくると思います。」
これだけの雪になれば街道を行き来する馬車にも大きな遅れが出てくるだろう。
平野部でこれなんだ、山間部はかなりの雪になっているに違いない。
さすがに川が凍ることはないと思うが港町からの荷運びは陸路が使えなくなる可能性が高い。
後でバーンに乗って確認した方がいいかもなぁ。
こうして冬の始まり23月の初日は波乱の幕開けを迎えたわけだが、仕事は待ってくれるわけもなく。
午前中は雪景色を見ながら昨日届いた書類を片付けつつ街の状況について報告を受ける。
俺が思っているよりかは普通に稼働しているようだがやはりネックは除雪作業。
今回は広い拡張工事現場を雪捨て場にしているようだが、除雪用の道具があまりよろしくないのか作業は遅々として進んでいないようだ。
「シロウ様、どうしましょう。」
「とりあえず今あるもので何とかするしかないんだが・・・。土魔法じゃダメなのか?」
「あれをすると動かした後の地面がボコボコになっちゃうんで、固めるのが大変なんです。」
「そりゃ駄目だ。」
書類仕事を終わらせた後、巡回を兼ねて工事現場に顔を出したのだが状況は聞いていた以上によろしくなかった。
雪が運ばれてくるのはいいんだが、場所が決まっていないのかそこら中に雪の山ができてしまって収拾がついていない。
労働力はあるのに道具が良くないので処理が追い付いていない感じだ。
ここでも問題になっているのは除雪用のスコップ。
あくまでも土を掘るために使う仕様なので重たい上に量を動かすことができないんだよな。
雪国によくある幅広のプラスチック製のスコップとかなら作業効率も上がるんだろうけど・・・。
「板とかじゃだめだもんなぁ。」
「それも考えたんですけど押しても雪が盛り上がるだけですぐ動かなくなっちゃって、とはいえ掘るには効率が悪くて。いっそのこととかそうとも思ったんですけど、この寒さじゃお湯もすぐに冷めちゃうんですよね。」
「それが凍った時の方が面倒だ。焔の石って手もあるが、これだけの雪になると焼け石に水ってか。」
「むしろ皆さんのカイロに使われていて数が足りてないぐらいです。」
あー、そういえばそんな話になってたな。
この間のカイロ袋だが俺が思っていた以上に好評のようで、先行して屋外で作業する労働者に配られたんだとか。
天幕も寝具も冬仕様に変更されたそうだが、それでもこの寒さじゃ辛いので焔の石を複数個支給しているらしい。
その関係もあって一般に回す焔の石が一時的に足りなくなっているそうだが、冒険者が必死になって回収しているのでしばらくすると落ち着いては来るだろう。
そんな事よりも問題はこの雪をどう効率よく処理するか。
除雪車でもあればこの広さぐらいならあっという間にキレイにしてしまうんだろうが、生憎とショベルカーもホイールローダーも存在しない。
あるのは人力だけ、でもそれすらうまく使えていないわけで。
せめて除雪スコップがあればなぁ。
「ん?」
「どうしました?」
「いや、なんか面白いのを使っている人がいるなと思ってな。ちょっと待ってろ。」
ふと視界の端に気になるものを見つけ、雪に足を取られながらその人の所へと向かう。
周りが重たいスコップに四苦八苦している中、その人は涼しい顔でひょいひょいと雪の塊をどけていく。
「ちょっといいか?」
「ん?」
「随分と面白いスコップだな、自作か?」
「あぁ、これか。」
「見た感じ木の棒に刺してるだけみたいだが・・・見せてもらっていいか?」
「そんないいもんじゃないぞ。使い古してボロボロだし。」
恥ずかしそうにしながらもその人はスコップを手渡してくれた。
『プラティベロの歯。巨大な歯を持つ魔獣の一種で、その歯で泥の中を掘り起こし中に隠れている虫や小魚を食べている。大人しい性格と力強さから湿地帯の移動手段として重宝されている。歯は定期的に生え変わる。最近の平均取引価格は銅貨30枚。最安値銅貨17枚、最高値銅貨68枚、最終取引日は52日前と記録されています。』
うーん、あまり聞いたことのない魔獣のようだがこの大きさの歯から察するにかなりの巨体なんだろう。
横60㎝縦40cm程の長方形をしたそれは、真ん中が少しくぼんでいてぱっと見スコップの先端のようにしか見えない。
それを切れ目を入れた木の棒に刺して、根元をぐるぐる巻きにしてスコップ代わりにしている。
持たせてもらったが非常に軽い、でも歯っていうぐらいだからかなり硬くて多少踏まれた雪でも難なく差し込むことができるようだ。
これはいい、非常にいい。
「プラティベロの歯か、この辺じゃ見かけない魔獣だな。」
「西の方じゃごくありふれた魔獣だけど、こんなに乾燥しているんじゃ出番はないだろうなぁ。」
「確かに、湿地帯なんてダンジョンの中ぐらいなものだ。なんでまたこんなものを?」
「床に敷いて座るのに便利なんだよ。歯っていう割に柔らかいし、じかに座るより汚れないしな。」
「確かに。」
気にしない人は気にしないんだろうけど、直接地面に座るぐらいなら段ボールか何かでも敷きたくなってしまう。
座布団代わりに使うには柔らかさは足りないが、この人はそういうのを求めてるんじゃないんだろうな。
「悪い、邪魔した。」
「いやいや、気にしないでくれ。」
「いつもと違う仕事にはなるが引き続きよろしく頼む、じゃあまた。」
プラティベロかぁ・・・ここじゃあまりお目にかかれない魔獣だが、西の方に行けば同じものが手配できるかもしれない。
「どうでした?」
「プラティベロって魔獣の歯らしい。知ってたか?」
「いえ、全く。」
「私知ってますよ、出っ歯の可愛い魔獣ですよね。」
「それ、可愛いのか?」
「可愛いに決まってるじゃないですか!」
現物を見ていないので何とも言えないんだが、女性の可愛いの基準が時々わからなくなる。
ハダカデバネズミとか、普通に見たらどこにも可愛い要素がないはずなのにそれが可愛く見える人もいるっていうし・・・。
ま、人の好みにとやかく言うのは良くないよな。
ともかく素材もそんなに高くないし、これからのことを考えると急ぎ準備した方がよさそうだ。
バーンに乗れば雪の影響を受けることなく移動できるし、周辺の確認ついでに西の方へと足を向けるのもいいかもしれない。
あの使いやすさがあれば作業効率はグンと上がる。
雪は今日だけで終わるかわからないし、仮に毎日降るのであればそれこそ街中の人がそいつを求める事だろう。
一本銀貨1枚、いや1.5枚でも売れるんじゃないだろうか。
原価なんてたかが知れているし、この街で売れなくなっても他所で十分売れるので安心して仕入れができるはず。
冬。
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これは何かの前触れか、あるいは・・・。
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