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1148.転売屋はダフ屋行為を見守る
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三日月亭を出た後は人でごった返す大通りを抜けて臨時のコンサート会場へと移動する。
開始までまだまだあるというのに付近は大勢の人であふれ、たくさんの出店に列を作っていた。
今は感謝祭。
もちろんここでの飲食も無料なので、各自好きなものを好きなだけ食べているようだ。
アネットの胃薬も酔い覚ましも用意してあるのでもしそうなっても問題ない。
もちろんそれをあてにされても困るのだが、使用すればするほど俺も儲かるので何も言うまい。
「コンサートのチケットまだあるよ!一枚銀貨40枚、40枚で歌姫が間近で見られるよ!」
大勢の人が行きかう中、一際大きな声だす人がいる。
ほとんどの人は興味が無いような感じだが何人かは物欲しそうな顔でその人をじっと見つめていた。
どの世界でもダフ屋は存在するようだ。
元の世界では大っぴらにできなくなっていたが、この世界にはそういう規制などはないのでこんな風に大声で客寄せだってできる。
もちろん俺も似たような感じでチケットを転売して大儲けをしたタイプなので彼らを否定することはしない。
需要と供給が合えばその値段でも売れることはあるだろう。
現に声をかけようかどうしようかと迷っている人はいるみたいだしな。
とはいえこの場に不釣り合いな大声は正直迷惑なんでやめてほしいところではある。
もう少し場所を変えて取引すればいいのに。
そんな風に思いながらダフ屋を眺めていると、その横から珍しい二人組が手を振って歩いてきた。
「あ、シロウじゃない。」
「エリザそれにアネットまで、もう会場に来てたのか?」
「だって待ちきれなかったんだもの。」
「美味しいお店もいっぱい出ているので、先にご飯を食べてからにするつもりです。」
なるほど、それは賢い判断だ。
遅くなるにつれ会場に人があふれ出店はもっと混んでくるだろう。
腹を膨らますには早い方が色々と都合がいい。
どうせ中に入っても色々と売り出されているんだろうけど、今回は出店関係に一切ノータッチなのでその辺は羊男がどうするつもりなのかわからない。
折角のコンサートなんだし中でわいわいするのはちょっと違うと思うんだが、どんな雰囲気なのか全然知らないんだよなぁ。
もしかして中々ロックな感じだったりして。
あれ?この世界にロックって概念はあるんだろうか。
聞いた話ではそれはもう蕩けてしまうような美声に誰もが声を失うんだとか。
そうなると激しい感じとは違う感じなんだろうけど・・・なんて適当なことを考えながら二人と立ち話をしていた時だった。
突然後ろから争うような声が聞こえてくる。
「それっぽっちで売れるわけないだろうが、出直してこい!」
「でもこれ以上は・・・。」
「銀貨40枚だ、それともなにか?その体で足りない分を払うってのか?」
どうやら先ほどのダフ屋が声をかけてきた女性と揉めているようだ。
身なりから察するに買おうとしているのは冒険者みたいだが、おっさんの勢いに泣きそうな顔になっている。
すかさずエリザが近づこうとするのを手を掴んで制止した。
「なんでよ。」
「俺に考えがある、ちょっと待て。」
「・・・わかった。」
「ちゃんと見せ場は作ってやるから安心しろ。それと朝渡したチケット持ってるよな?」
「え、それはあるけど。」
「預かるぞ。」
エリザがカバンから取り出したチケットを受け取り、ゆっくりとダフ屋の方へと近づく。
今にも泣きそうな女に対してセクハラ以上の卑猥な言葉をかけまくるおっさん。
うん、ダフ屋行為はどうでもいいが迷惑行為は許しがたい。
加えて俺の大事な客である冒険者を泣かす奴に遠慮は無用だ。
「まぁまぁ落ち着けって。」
「なんだ兄ちゃん、関係ない奴はすっこんでろ。」
「あんたには関係なくても俺には関係あるんだよ。なぁ、チケットが欲しいのか?」
おっさんにセクハラされまくったせいで俯いてしまった冒険者が俺の声に反応して少しだけ顔を上げる。
「・・・はい。」
「いくら出せるんだ?」
「銀貨15枚、です。」
半泣き、っていうかほぼ泣きながらその子は小さな声で教えてくれた。
年はリカと同じぐらいだろうか。
身に着けている装備品から新人冒険者だってことはわかる。
本来新人冒険者ってのはこういうもんだよなぁ。
新人ながらも必死にダンジョンに潜ってお金を貯め、どうにかしようと思ったが結局まとまった金額を用意できなかったって感じだろう。
因みに俺のチケット転売価格は銀貨10枚。
この前売り出していたそれぐらいを意識してお金を貯めたんだろうけど、ちょいとばかし読みが甘かったようだ。
当日券が高くなるのは当然の話。
とはいえこっさんのこれは少しやりすぎな感じはある。
「おい、こいつは俺の客だぞ横取りするな。」
「客ってのはな、お互いに納得して初めて成立する関係のことを言うんだ。今のあんたがしていることは相手の弱みに付け込んだただの脅しだっての。」
「なんだとてめぇ!」
「いいからおっさんは黙ってなさい。」
おっさんが声を荒げて手を振り上げると同時にエリザが割って入り、逆におっさんをにらみ返す。
流石のおっさんもエリザの気迫に何も言えなくなってしまったようだ。
「さて、ここにチケットが一枚ある。これを銀貨20枚でなら売ってやってもいいが、銀貨15枚じゃ譲れない。じゃあどうしたらいいと思う?」
「え・・・。わ、私を買ってもらう?」
「そういう手もあるが残念ながらその体じゃ銀貨5枚出すのは難しいな。」
「うぅ・・・。」
「ちょっとシロウ、それじゃこの人とやってることが変わらないわよ。」
「悪い悪い、言い過ぎたから泣くなって。」
ボロボロと涙を流し始めた女を慌てて慰めて泣き止ませる。
ったく、めんどくさいなぁ。
「足りないのは銀貨5枚。幸いここにはギルドの新人教育担当がいるわけだが・・・職員さん、確かギルドには緊急融資の制度があったよな。」
「あるわね。」
「あれの上限金額が新人で最大銀貨5枚。それを使えばこのチケットが手に入るが、金を借りるってことがどういうことかわかっているか?」
「・・・わかりません。」
「売られる覚悟があるのかってことだ。そこで立ってる女もな、前は自分の装備もうっぱらってそれでも金が返せないからって奴隷に落ちそうになったんだ。どれだけ実力があったって金がなきゃ望まないことだってしなきゃならない。今回のコンサートはそこまでして見る必要があるのか?」
国一番の歌姫が出るコンサートとはいえ、命を懸けてまで見るものではない。
俺みたいなやつはそう考えてしまうが彼女のようにそう思わない人もいる。
「あります。何をしてでもお金は返します。」
命を懸けてでもこのチャンスを逃したくない。
そこまでの勢いと信念があるのなら借りた金を返すのは容易いだろう。
こういう子ほど案外図太く生き残って成長するもんだ。
「よく言った、さきに銀貨15枚見せてみろ。」
「はい!」
ワタワタと慌てた様子でカバンから袋を取り出し、俺の前に差し出す。
それを受け取りひっくり返すと、右手の上に銀貨が転がり落ちてきた。
全部で15枚、間違いない。
「よし、これがチケットだ。足りない分はコンサートが終わってから買取屋まで持ってこい。」
「あの、ありがとうございました!」
「逃げるなよ?」
「逃げません!絶対にお金は返します!」
「だってよ、エリザ聞いたな?」
「もちろん。でもさ、あのチケット私のなんだけど。」
そういえばそうだったな。
話の流れて自分のチケットを転売され、不服そうな顔をするエリザ。
それを聞いていたおっさんがなぜか目を輝かせて俺の方を見る。
いやいやおっさん、お前から買うはずがないだろうが。
何を期待した顔してるんだよ。
「お前はこれを使って入ってくれ。」
「え、でもこれはシロウの。」
「俺は別の方法で入るから心配するな。な、シープさん。」
「本来は関係者以外立ち入り禁止なんですが、シロウさんは歌姫直々に招待されていますからねぇ。」
そういいながら俺の横から現れたのは満面の笑みを浮かべる羊男。
聞いた話じゃあまりにもコンサートが楽しみすぎて突貫工事を指揮しながらもずっとこの表情らしい。
締まりがないというかなんというか・・・。
まぁなんだかんだ言いながらいい仕事するので誰も文句を言えないわけだけど。
「なるほどね、じゃあ遠慮なく。」
「そういうことだから俺たちに買わせようと思うのはあきらめることだな。もっとも、このままここで売れると思っているのなら大間違いだが。」
エリザがおっさんの前から離れ、入れ違うように笑顔の羊男がおっさんの前に立ちふさがる。
言っておくがこの人の方が何倍も怖いからな、覚悟しろよ。
「コンサートを円滑に運営するためにもあなたのような迷惑行為は断じて許されるものではありません。チケット販売に違法性はありませんが、その手法に聊か問題がありすぎます。少々お話を聞きたいので詰所まで来てもらえますか?なに、コンサートが終われば解放しますから。」
「ちょ、ちょっとまってくれ!俺はそんなつもりじゃ・・・。」
「まぁまぁ話は向こうで聞きますから。それじゃあシロウさん、後ほど。」
「おぅ、よろしくな。」
みんなが楽しくコンサートを見るためにも、あぁいうやり方をする輩にはご退場願うとしよう。
転売が悪いっていうんじゃない、あくまでもやり方がよろしくなかっただけだ。
「さすがご主人様です。」
「別に、ちょいと気が向いただけだ。」
「とか言ってなかなかいい顔してたわよ。」
そんなにドヤ顔していた覚えはないのだが、それが面白かったのかエリザとアネットがニヤニヤしている。
コンサート開始までまだ少し。
さてと、最後の一儲けと行きますか。
羊男がいなくなったのを確認してから様子を遠巻きに見ていたギャラリーに向かって目を向ける。
「さぁコンサートのチケットはいかが?一枚銀貨20枚、これで歌姫を間近に見られるのなら安いもんだろ?」
さっきのおっさんと似たような内容で客を呼ぶ。
手元に残ったのは10枚のチケット。
この間まで銀貨10枚で売っていたことを考えるとその倍の値段になるのだが、さっきのおっさんのおかげで随分と安くなったように感じる事だろう。
俺の声に反応して慌てて駆けてくる人影が五つ。
「先着10人、早い者勝ちだ。さぁ、並べ並べ!」
こうしてコンサート前の一儲けはあっという間に終了し、無事にその瞬間を迎える事となる。
歌姫オリガと吟遊詩人マイクによるコンサートは俺の想像をはるかに超えるクオリティで街中の観客を一瞬にして虜にしてしまった。
もちろん俺もその一人。
いや、マジですごい。
こんなすごい子にうちの化粧品を使ってもらえるなんて・・・こりゃ大変なことになるぞ。
そう確信しつつ次なる曲に再び魅了されるのだった。
開始までまだまだあるというのに付近は大勢の人であふれ、たくさんの出店に列を作っていた。
今は感謝祭。
もちろんここでの飲食も無料なので、各自好きなものを好きなだけ食べているようだ。
アネットの胃薬も酔い覚ましも用意してあるのでもしそうなっても問題ない。
もちろんそれをあてにされても困るのだが、使用すればするほど俺も儲かるので何も言うまい。
「コンサートのチケットまだあるよ!一枚銀貨40枚、40枚で歌姫が間近で見られるよ!」
大勢の人が行きかう中、一際大きな声だす人がいる。
ほとんどの人は興味が無いような感じだが何人かは物欲しそうな顔でその人をじっと見つめていた。
どの世界でもダフ屋は存在するようだ。
元の世界では大っぴらにできなくなっていたが、この世界にはそういう規制などはないのでこんな風に大声で客寄せだってできる。
もちろん俺も似たような感じでチケットを転売して大儲けをしたタイプなので彼らを否定することはしない。
需要と供給が合えばその値段でも売れることはあるだろう。
現に声をかけようかどうしようかと迷っている人はいるみたいだしな。
とはいえこの場に不釣り合いな大声は正直迷惑なんでやめてほしいところではある。
もう少し場所を変えて取引すればいいのに。
そんな風に思いながらダフ屋を眺めていると、その横から珍しい二人組が手を振って歩いてきた。
「あ、シロウじゃない。」
「エリザそれにアネットまで、もう会場に来てたのか?」
「だって待ちきれなかったんだもの。」
「美味しいお店もいっぱい出ているので、先にご飯を食べてからにするつもりです。」
なるほど、それは賢い判断だ。
遅くなるにつれ会場に人があふれ出店はもっと混んでくるだろう。
腹を膨らますには早い方が色々と都合がいい。
どうせ中に入っても色々と売り出されているんだろうけど、今回は出店関係に一切ノータッチなのでその辺は羊男がどうするつもりなのかわからない。
折角のコンサートなんだし中でわいわいするのはちょっと違うと思うんだが、どんな雰囲気なのか全然知らないんだよなぁ。
もしかして中々ロックな感じだったりして。
あれ?この世界にロックって概念はあるんだろうか。
聞いた話ではそれはもう蕩けてしまうような美声に誰もが声を失うんだとか。
そうなると激しい感じとは違う感じなんだろうけど・・・なんて適当なことを考えながら二人と立ち話をしていた時だった。
突然後ろから争うような声が聞こえてくる。
「それっぽっちで売れるわけないだろうが、出直してこい!」
「でもこれ以上は・・・。」
「銀貨40枚だ、それともなにか?その体で足りない分を払うってのか?」
どうやら先ほどのダフ屋が声をかけてきた女性と揉めているようだ。
身なりから察するに買おうとしているのは冒険者みたいだが、おっさんの勢いに泣きそうな顔になっている。
すかさずエリザが近づこうとするのを手を掴んで制止した。
「なんでよ。」
「俺に考えがある、ちょっと待て。」
「・・・わかった。」
「ちゃんと見せ場は作ってやるから安心しろ。それと朝渡したチケット持ってるよな?」
「え、それはあるけど。」
「預かるぞ。」
エリザがカバンから取り出したチケットを受け取り、ゆっくりとダフ屋の方へと近づく。
今にも泣きそうな女に対してセクハラ以上の卑猥な言葉をかけまくるおっさん。
うん、ダフ屋行為はどうでもいいが迷惑行為は許しがたい。
加えて俺の大事な客である冒険者を泣かす奴に遠慮は無用だ。
「まぁまぁ落ち着けって。」
「なんだ兄ちゃん、関係ない奴はすっこんでろ。」
「あんたには関係なくても俺には関係あるんだよ。なぁ、チケットが欲しいのか?」
おっさんにセクハラされまくったせいで俯いてしまった冒険者が俺の声に反応して少しだけ顔を上げる。
「・・・はい。」
「いくら出せるんだ?」
「銀貨15枚、です。」
半泣き、っていうかほぼ泣きながらその子は小さな声で教えてくれた。
年はリカと同じぐらいだろうか。
身に着けている装備品から新人冒険者だってことはわかる。
本来新人冒険者ってのはこういうもんだよなぁ。
新人ながらも必死にダンジョンに潜ってお金を貯め、どうにかしようと思ったが結局まとまった金額を用意できなかったって感じだろう。
因みに俺のチケット転売価格は銀貨10枚。
この前売り出していたそれぐらいを意識してお金を貯めたんだろうけど、ちょいとばかし読みが甘かったようだ。
当日券が高くなるのは当然の話。
とはいえこっさんのこれは少しやりすぎな感じはある。
「おい、こいつは俺の客だぞ横取りするな。」
「客ってのはな、お互いに納得して初めて成立する関係のことを言うんだ。今のあんたがしていることは相手の弱みに付け込んだただの脅しだっての。」
「なんだとてめぇ!」
「いいからおっさんは黙ってなさい。」
おっさんが声を荒げて手を振り上げると同時にエリザが割って入り、逆におっさんをにらみ返す。
流石のおっさんもエリザの気迫に何も言えなくなってしまったようだ。
「さて、ここにチケットが一枚ある。これを銀貨20枚でなら売ってやってもいいが、銀貨15枚じゃ譲れない。じゃあどうしたらいいと思う?」
「え・・・。わ、私を買ってもらう?」
「そういう手もあるが残念ながらその体じゃ銀貨5枚出すのは難しいな。」
「うぅ・・・。」
「ちょっとシロウ、それじゃこの人とやってることが変わらないわよ。」
「悪い悪い、言い過ぎたから泣くなって。」
ボロボロと涙を流し始めた女を慌てて慰めて泣き止ませる。
ったく、めんどくさいなぁ。
「足りないのは銀貨5枚。幸いここにはギルドの新人教育担当がいるわけだが・・・職員さん、確かギルドには緊急融資の制度があったよな。」
「あるわね。」
「あれの上限金額が新人で最大銀貨5枚。それを使えばこのチケットが手に入るが、金を借りるってことがどういうことかわかっているか?」
「・・・わかりません。」
「売られる覚悟があるのかってことだ。そこで立ってる女もな、前は自分の装備もうっぱらってそれでも金が返せないからって奴隷に落ちそうになったんだ。どれだけ実力があったって金がなきゃ望まないことだってしなきゃならない。今回のコンサートはそこまでして見る必要があるのか?」
国一番の歌姫が出るコンサートとはいえ、命を懸けてまで見るものではない。
俺みたいなやつはそう考えてしまうが彼女のようにそう思わない人もいる。
「あります。何をしてでもお金は返します。」
命を懸けてでもこのチャンスを逃したくない。
そこまでの勢いと信念があるのなら借りた金を返すのは容易いだろう。
こういう子ほど案外図太く生き残って成長するもんだ。
「よく言った、さきに銀貨15枚見せてみろ。」
「はい!」
ワタワタと慌てた様子でカバンから袋を取り出し、俺の前に差し出す。
それを受け取りひっくり返すと、右手の上に銀貨が転がり落ちてきた。
全部で15枚、間違いない。
「よし、これがチケットだ。足りない分はコンサートが終わってから買取屋まで持ってこい。」
「あの、ありがとうございました!」
「逃げるなよ?」
「逃げません!絶対にお金は返します!」
「だってよ、エリザ聞いたな?」
「もちろん。でもさ、あのチケット私のなんだけど。」
そういえばそうだったな。
話の流れて自分のチケットを転売され、不服そうな顔をするエリザ。
それを聞いていたおっさんがなぜか目を輝かせて俺の方を見る。
いやいやおっさん、お前から買うはずがないだろうが。
何を期待した顔してるんだよ。
「お前はこれを使って入ってくれ。」
「え、でもこれはシロウの。」
「俺は別の方法で入るから心配するな。な、シープさん。」
「本来は関係者以外立ち入り禁止なんですが、シロウさんは歌姫直々に招待されていますからねぇ。」
そういいながら俺の横から現れたのは満面の笑みを浮かべる羊男。
聞いた話じゃあまりにもコンサートが楽しみすぎて突貫工事を指揮しながらもずっとこの表情らしい。
締まりがないというかなんというか・・・。
まぁなんだかんだ言いながらいい仕事するので誰も文句を言えないわけだけど。
「なるほどね、じゃあ遠慮なく。」
「そういうことだから俺たちに買わせようと思うのはあきらめることだな。もっとも、このままここで売れると思っているのなら大間違いだが。」
エリザがおっさんの前から離れ、入れ違うように笑顔の羊男がおっさんの前に立ちふさがる。
言っておくがこの人の方が何倍も怖いからな、覚悟しろよ。
「コンサートを円滑に運営するためにもあなたのような迷惑行為は断じて許されるものではありません。チケット販売に違法性はありませんが、その手法に聊か問題がありすぎます。少々お話を聞きたいので詰所まで来てもらえますか?なに、コンサートが終われば解放しますから。」
「ちょ、ちょっとまってくれ!俺はそんなつもりじゃ・・・。」
「まぁまぁ話は向こうで聞きますから。それじゃあシロウさん、後ほど。」
「おぅ、よろしくな。」
みんなが楽しくコンサートを見るためにも、あぁいうやり方をする輩にはご退場願うとしよう。
転売が悪いっていうんじゃない、あくまでもやり方がよろしくなかっただけだ。
「さすがご主人様です。」
「別に、ちょいと気が向いただけだ。」
「とか言ってなかなかいい顔してたわよ。」
そんなにドヤ顔していた覚えはないのだが、それが面白かったのかエリザとアネットがニヤニヤしている。
コンサート開始までまだ少し。
さてと、最後の一儲けと行きますか。
羊男がいなくなったのを確認してから様子を遠巻きに見ていたギャラリーに向かって目を向ける。
「さぁコンサートのチケットはいかが?一枚銀貨20枚、これで歌姫を間近に見られるのなら安いもんだろ?」
さっきのおっさんと似たような内容で客を呼ぶ。
手元に残ったのは10枚のチケット。
この間まで銀貨10枚で売っていたことを考えるとその倍の値段になるのだが、さっきのおっさんのおかげで随分と安くなったように感じる事だろう。
俺の声に反応して慌てて駆けてくる人影が五つ。
「先着10人、早い者勝ちだ。さぁ、並べ並べ!」
こうしてコンサート前の一儲けはあっという間に終了し、無事にその瞬間を迎える事となる。
歌姫オリガと吟遊詩人マイクによるコンサートは俺の想像をはるかに超えるクオリティで街中の観客を一瞬にして虜にしてしまった。
もちろん俺もその一人。
いや、マジですごい。
こんなすごい子にうちの化粧品を使ってもらえるなんて・・・こりゃ大変なことになるぞ。
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著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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【作者より、感謝を込めて】
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
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