収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

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195.今潜るべき場所へとむかいました

城崎ダンジョンギルドへのがさ入れは未だ終わりを見せず、テレビでも大々的に取り上げられる大事件へと発展していた。

タヌキおやじことギルド長は即日逮捕され今は山のような余罪を追及され続けているのだとか。

それを調査しているのは監査役の木之元さんであり、その裏では岡本さんが暗躍しているという噂も聞こえてくる。

兵庫探索者連盟はその総力を挙げて不正を調査しそこに関わった者を捕縛、さらに汚名返上するべく全力で取り組むという声明も出しておりその本気度は計り知れない。

ギルド内部の不正だけならまだしも特に問題になっているのはそれが大企業にも波及しているという事、あのタヌキおやじにそそのかされて関係を持ち不正に関わっていたとしていくつもの大手工業メーカーの名前がテレビに映し出されている。

その中には大手探索者メーカーも名前を連ねておりその余波は当分残り続けるだろう。

もちろんそこに大道寺グループならびにレリーズ商会の名前はなかった。

「さて、久々の川西ダンジョンだな。」

城崎ダンジョンは未だ封鎖中、本当であれば装備を整えて階層主へ挑戦していたところだけど残念ながらそれが叶わない以上別のダンジョンに潜る必要がある。

俺達のランクはD、一応梅田ダンジョンなんかにも潜ることはできるけれど単独で潜ることができない以上選択肢には入らない。

となると残ったのはD級ダンジョン、その中で攻略していないのは途中で止まっていた川西ダンジョンだけだ。

本当は桜さんと一緒に潜れたら良かったんだけど序盤のバンシー等で怯えてしまって以降彼女がここに挑戦することはなかった。

まぁ、潜らなくてもCランクになれるように城崎ダンジョンを選んだんだけど、そこに潜れない以上別の場所に行くしかない。

そんな中、李社長こと鈴蘭さんが新商品の使用感を確かめてほしいという依頼を桜さん達に打診、それを引き受けた彼女達は今頃宿の地下練習場で大騒ぎをしていることだろう。

俺が稽古をつけてもらっている中、女性同士でどんな話をしていたのかは知らないけれど最初の件アクサはどこへやら非常に親し気な感じで話すようになっていた。

まぁ仲がいいのはいいことだ、ってことで俺一人でダンジョンに潜ることになったわけだ。

「ここからは魔物が三種類出る下層になるけど、まぁ和人君とリルちゃんの実力なら大丈夫だね。」

「だといいんだがな。」

「目標は十三階層、同じDランクでも城崎みたいに環境に左右されないから戦いやすいと思うよ。出てくる魔物に癖もないし一度に戦う数さえコントロールできれば大丈夫だって。」

「それが出来れば苦労しないっての。」

「大丈夫だよ、僕も一緒だし下手に逃げ回らなかったらバッティングしないから、たぶんだけど。」

「いや、どっちなんだよ。」

大丈夫なんだったらせめて安心させてくれと文句を言いつつ、転送装置に手を伸ばす。

一瞬の暗転の後到着したのはかび臭く薄暗い石畳の通路。

不快といえば不快だけど、あの暑さに比べたらこのぐらいどうってことない範疇だ。

「さて、行くか。」

「ここから先は魔灯も設置されてないからランタンは必須、この前のシャドウウォーカーみたいなのはいないけど罠が多めだから気を付けてね。」

「ってことだから気を付けような、リル。」

「ガウ!」

「任せとけって?そんじゃ先行よろしく。」

ブレスレットから姿を現したリルの首元には魔ランタンがぶら下げられており、彼女の足元を煌々と照らしている。

眩しくないのかと心配したのだが自分の胴体で直接的な光はさえぎっているようで特に問題はなさそうな感じだ。

まず警戒すべきはベルウォーカー、あいつが持つ鈴の音は他の魔物を寄せ付けるので見つけたら速攻でベルを壊すか倒すかしなければならない。

そしてそいつの鐘に集まってくるのは火の玉ウィル・オ・ウィスプと怖い少女スクリーマー

川西ダンジョンなのでどちらもアンデッド系だが、同時に襲われると異常に厄介な存在だ。

火の玉に囲まれれば鈍化の効果を受けて生きたまま焼き殺されるし、スクリーマーは叫びながら手に持った草切鎌で襲い掛かってくる。

それが一体や二体ならまだしもベルウォーカーに呼ばれると何匹でもわき続けるというのだから非常に厄介な相手だ。

人によってはそれを使ってドロップ品を回収する人もいるらしいけど、手に入るのはそこまで高くない素材ばかりなので金儲けには向いてないんだよなぁ。

魔装銃を手に先を行くリルの明かりを頼りに暗い通路を進んでいく。

途中何度か罠が発動したけれど、特に危なげなくリルが避けるのであまり心配せず先に進めるのがありがたい。

その時だ、リルの足がピタリと止まり耳をぴくぴく動かしながらその場にすぐしゃがみこむ。

視界が開け、急ぎ魔装銃を構えてスコープで先を確認する。

俺には聞こえないけれどリルには何かが聞こえているんだろう、静かに狙いを定め続ける事数十秒。

真っ暗い通路の奥からうすぼんやりと光るベルを持った少年が姿を現した。

顔面の一部から骨が見えているものの、金髪のよく似合う西洋風の面持ちをしたその子は静かにこちらを見つめてきた。

どうやら向こうも俺がいることに気が付いたらしい、スコープ越しに彼が手を伸ばして鈴を鳴らそうとするよりも早くトリガーを引いた。

「くそ、外した!」

「グァゥ!」

「悪かったって!」

弾は命中、だが目的の鈴ではなく鈴を持つ手に当たっただけで更には腕を吹き飛ばすには至らなかった。

文句を言いながらリルが飛びだし、俺も再び銃を構えてスコープを覗き込む。

穴の開いた腕を無表情の顔で一瞥してから再び腕を伸ばして鐘を鳴らすベルウォーカー、透明ながらどこか物悲しいその音が通路中に響き渡ってしまった。

一度、二度、三度目に鈴が降られるよりも早くリルが少年の首元に食らいつき、そのまま左右に顔を振って胴体と弾を分離させる。

が、それだけで死なないのがゾンビなんだよなぁ。

頭のない体が三度目の鈴を鳴らすと同時にやっと鈴を撃ち落とすことに成功した。

「くそ、三回も鳴ったか。」

「仕方ないよ、その数ならそこまで集まってこないはず!」

「筈じゃ困るんだよなぁ。」

リルに胸元を踏みつぶされた少年はそのまま地面に吸い込まれていった。

残されたのは撃ち落としたはずの鈴、ドロップ品なのでさっきのとは全く違う物なんだけどいったいどういう原理なんだろうなぁ。

「来た!」

そんなことを考えていると壁の向こう側から、ふわふわと青色の火の玉が姿を現した。

壁を抜けてきたのは全部で四匹、そいつらはリルの周りをぐるぐると周りそれと同時に明らかに彼女の動きが遅くなる。

これが鈍化、いくら早さが自慢のリルも複数のデバフを付与されるとそれを生かすことが出来なくなる。

解除するには魔物を倒すしかない。

実体がない為実弾や実攻撃は当たらないけれど、ブレスや魔装銃の魔力弾は効果があるので連射をしてすぐに二匹を撃破、それにより少し動きが速くなったリルがブレスでもう一匹を倒した。

が、残る一匹が天井付近に移動しつつ高速で動くため中々攻撃を当てることができない。

更には、そいつに手間取っている間にこの階層最後の一匹が通路の向こうからふらふらと現れてしまった。

薄汚れてところどころ破れた白いワンピースを着た少女。

長い前髪が顔を隠してしまっているせいでその表情は読み取れないが、通路の向こうで立ち止まり首を傾けながらじっとこちらを見つめて来る。

その子の手には錆び錆びになった草刈り鎌。

それを振り上げたかと思ったら、耳をつんざくような悲鳴を上げものすごい速度でこちらへと走ってきた。
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