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リーブス先生の話
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翌る日アラータス学園に集まった。
リーブス先生の話を聞くためだ。
先生は少し元気になったようだが、包帯が取れた顔は額から左目、頬と一直線に大きな傷があった。
話しやすいようにと学園の中の応接室を借りた。
さっきからずっと沈黙が続いている。
「…まずは助けてくれてありがとう。あのままだったら命が危なかったよ」
リーブス先生が頭を下げた。
「何があったか話してもらえますね」
レオンハート様が静かに言った。
「もうここまできたら逃げも隠れもしないよ」
「知っての通り私はルーメン枢機卿の息子だ。だけど母親は知らないだろう?母は…
先代聖女イリアだよ」
「「「 !! 」」」
みんな驚きすぎて言葉が出ない。
「ルーメンの望みは初めはささやかなものだった。ティラーン教を国教にすること、聖女イリアの地位を確固たるものにすること。
そして名乗りをあげられなくても親子3人水入らずで奥の院で会うこと。
初めて聖女イリアに会った日のことは忘れられない。5歳の時、母とは知らずあったんだ」
「あなたがソルね。もっと近くに」
奥の院で聖女イリアが待っていた。私は連れられてたルーメンの手を離れそばに進み出た。
「ソル、もっと顔を見せてくれる?」
そう言って優しく頬を撫でる。すると突然涙を流し
「今は…今だけは…母と呼んでください…」
と声を震わせた。
私は何のことやらわからず
「うれしいです。ぼく、かあさんがいません。
せいぼイリアさま!」
…残酷な言葉だ。わたしはかあさんとは呼ばず、覚えたての聖母という言葉を使ったんだ。
「…えぇ、そうですとも…」
母は私を抱きしめていつまでも泣いていた。
「その頃からルーメンも少しずつ変わっていったのかもしれない」
部屋は重苦しい空気に包まれていた。それとともに先生の話に惹きつけられていた。
「いつまで経っても王室に嫌われて国教になる目処さえたたない。信者を集めても駄目だった」
「王室には王室の事情があるのだ…」
レオンハート様が横を向いた。
「他にも問題が起きた。聖女イリアの体が徐々に弱ってきたのだ。聖女としての力を使う度に。
今のエレニと違って多少は“聖女の力”が使えた。だが力によって生命力がなくなるとは歴代の聖女で誰もいない。
でもねルーメンには思い当たることがあった。歴代聖女との違いは…」
「子どもを産んだこと…」
私が思わず口にした。
「そのとおり。まあ真偽のほどはわからないが。当然ふたりの枢機卿は怪しんだ。
ちなみに3人の枢機卿は神学校の同級生だ。そんなこともあってお互いをよく知っている。だからこそ察したんだと思う」
「関係を気づいた?」
キリアンが眉を寄せた。
「まあ、その気づきは私も関係あるのだが」
先生がふっと遠い目をした。
「20年前、あの事件が起こった」
20年前のあの日、私が何度目かの神殿を訪問した日だ。なぜか夜眠れなくて神殿の中庭で星を見ていた。
すると言い争う声がして私は咄嗟に隠れた。
「ルーメン!貴様イリア様に何をしたんだ!
神殿によく来るあの少年は何なんだ!」
「アロ、あまり怒鳴るな。ルーメン、正直に話してくれ。我々にはやらねばならぬことがあるではないか」
「何が悪い…」
「なに?」
「イリアを愛して何が悪い!」
「なっ!」
ヘルバ様は言葉を失った。
「あの少年は…私たちの子だ」
ルーメンが言った言葉に私は驚きの声を上げるのを必死に止めた。
「ルーメン‼︎」
アロ様が襟首を掴んだ。
「イリア様のあの弱り方はそのことに関係するのか?」
「わからない。でも他には思い当たらない」
「これから我々は次代の聖女様を探し育てなければならない。才能ある子どもたちを探さなければならない」
ヘルバ様は涙を流しながら
「イリア様が亡くなったらどうするのだ!
まだ次代は見つかっていないのだぞ!
聖女不在になってしまうのだぞ!」
最後は叫んでいた。
「だからこそだ。今大変な時だ。ふたりとも力を貸してくれ。ともだちだろ?」
ルーメンの言葉にふたりは
「…もう、ともだちでもなんでもない」
「ルーメン、我々はお前を罷免する」
「どうしてもか?」
「ああ」
「それだけのことをお前はやったんだ」
その時ルーメンの赤い法衣の下からキラッと光ったかと思ったらそれはもうアロ様の腹を刺していた。
「うぅ…おまぇ…」
アロ様は呻いていた。
ルーメンはヘルバ様を狙った。今度ははっきり見える。血塗られた短剣だ。
「やめろ!ルー…」
ヘルバ様の声が聞こえてなくなった。アロ様より致命的だったんだろう。
ルーメンは倒れているふたりを狂ったように刺している。
私は右手で口元を抑えながら見つからないように礼拝堂へと逃げた。
「ふたりは病死ではなく殺されたんですか⁈」
アンディが声をあげた。
「記録では流行り病による病死と。そんなふうに欺けるものでしょうか?」
アンディが1番すべての記録に目を通している。信じられないという様子だった。
「ふたりの枢機卿が亡くなりルーメンだけになった。権力の集中だよ。神殿内でうまく揉み消して病死として国に届け出たんだろう」
リーブス先生はそう言うと少し疲れたのか、ふーっと息を吐いた。
「今のルーメン枢機卿の望みは何なんだ?」
レオンハート様が難しい顔をして言った。
「それは…先代聖女イリアが亡くなった時決定的になった」
リーブス先生の話は続く。
リーブス先生の話を聞くためだ。
先生は少し元気になったようだが、包帯が取れた顔は額から左目、頬と一直線に大きな傷があった。
話しやすいようにと学園の中の応接室を借りた。
さっきからずっと沈黙が続いている。
「…まずは助けてくれてありがとう。あのままだったら命が危なかったよ」
リーブス先生が頭を下げた。
「何があったか話してもらえますね」
レオンハート様が静かに言った。
「もうここまできたら逃げも隠れもしないよ」
「知っての通り私はルーメン枢機卿の息子だ。だけど母親は知らないだろう?母は…
先代聖女イリアだよ」
「「「 !! 」」」
みんな驚きすぎて言葉が出ない。
「ルーメンの望みは初めはささやかなものだった。ティラーン教を国教にすること、聖女イリアの地位を確固たるものにすること。
そして名乗りをあげられなくても親子3人水入らずで奥の院で会うこと。
初めて聖女イリアに会った日のことは忘れられない。5歳の時、母とは知らずあったんだ」
「あなたがソルね。もっと近くに」
奥の院で聖女イリアが待っていた。私は連れられてたルーメンの手を離れそばに進み出た。
「ソル、もっと顔を見せてくれる?」
そう言って優しく頬を撫でる。すると突然涙を流し
「今は…今だけは…母と呼んでください…」
と声を震わせた。
私は何のことやらわからず
「うれしいです。ぼく、かあさんがいません。
せいぼイリアさま!」
…残酷な言葉だ。わたしはかあさんとは呼ばず、覚えたての聖母という言葉を使ったんだ。
「…えぇ、そうですとも…」
母は私を抱きしめていつまでも泣いていた。
「その頃からルーメンも少しずつ変わっていったのかもしれない」
部屋は重苦しい空気に包まれていた。それとともに先生の話に惹きつけられていた。
「いつまで経っても王室に嫌われて国教になる目処さえたたない。信者を集めても駄目だった」
「王室には王室の事情があるのだ…」
レオンハート様が横を向いた。
「他にも問題が起きた。聖女イリアの体が徐々に弱ってきたのだ。聖女としての力を使う度に。
今のエレニと違って多少は“聖女の力”が使えた。だが力によって生命力がなくなるとは歴代の聖女で誰もいない。
でもねルーメンには思い当たることがあった。歴代聖女との違いは…」
「子どもを産んだこと…」
私が思わず口にした。
「そのとおり。まあ真偽のほどはわからないが。当然ふたりの枢機卿は怪しんだ。
ちなみに3人の枢機卿は神学校の同級生だ。そんなこともあってお互いをよく知っている。だからこそ察したんだと思う」
「関係を気づいた?」
キリアンが眉を寄せた。
「まあ、その気づきは私も関係あるのだが」
先生がふっと遠い目をした。
「20年前、あの事件が起こった」
20年前のあの日、私が何度目かの神殿を訪問した日だ。なぜか夜眠れなくて神殿の中庭で星を見ていた。
すると言い争う声がして私は咄嗟に隠れた。
「ルーメン!貴様イリア様に何をしたんだ!
神殿によく来るあの少年は何なんだ!」
「アロ、あまり怒鳴るな。ルーメン、正直に話してくれ。我々にはやらねばならぬことがあるではないか」
「何が悪い…」
「なに?」
「イリアを愛して何が悪い!」
「なっ!」
ヘルバ様は言葉を失った。
「あの少年は…私たちの子だ」
ルーメンが言った言葉に私は驚きの声を上げるのを必死に止めた。
「ルーメン‼︎」
アロ様が襟首を掴んだ。
「イリア様のあの弱り方はそのことに関係するのか?」
「わからない。でも他には思い当たらない」
「これから我々は次代の聖女様を探し育てなければならない。才能ある子どもたちを探さなければならない」
ヘルバ様は涙を流しながら
「イリア様が亡くなったらどうするのだ!
まだ次代は見つかっていないのだぞ!
聖女不在になってしまうのだぞ!」
最後は叫んでいた。
「だからこそだ。今大変な時だ。ふたりとも力を貸してくれ。ともだちだろ?」
ルーメンの言葉にふたりは
「…もう、ともだちでもなんでもない」
「ルーメン、我々はお前を罷免する」
「どうしてもか?」
「ああ」
「それだけのことをお前はやったんだ」
その時ルーメンの赤い法衣の下からキラッと光ったかと思ったらそれはもうアロ様の腹を刺していた。
「うぅ…おまぇ…」
アロ様は呻いていた。
ルーメンはヘルバ様を狙った。今度ははっきり見える。血塗られた短剣だ。
「やめろ!ルー…」
ヘルバ様の声が聞こえてなくなった。アロ様より致命的だったんだろう。
ルーメンは倒れているふたりを狂ったように刺している。
私は右手で口元を抑えながら見つからないように礼拝堂へと逃げた。
「ふたりは病死ではなく殺されたんですか⁈」
アンディが声をあげた。
「記録では流行り病による病死と。そんなふうに欺けるものでしょうか?」
アンディが1番すべての記録に目を通している。信じられないという様子だった。
「ふたりの枢機卿が亡くなりルーメンだけになった。権力の集中だよ。神殿内でうまく揉み消して病死として国に届け出たんだろう」
リーブス先生はそう言うと少し疲れたのか、ふーっと息を吐いた。
「今のルーメン枢機卿の望みは何なんだ?」
レオンハート様が難しい顔をして言った。
「それは…先代聖女イリアが亡くなった時決定的になった」
リーブス先生の話は続く。
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