18 / 28
リーブス先生の話
しおりを挟む
翌る日アラータス学園に集まった。
リーブス先生の話を聞くためだ。
先生は少し元気になったようだが、包帯が取れた顔は額から左目、頬と一直線に大きな傷があった。
話しやすいようにと学園の中の応接室を借りた。
さっきからずっと沈黙が続いている。
「…まずは助けてくれてありがとう。あのままだったら命が危なかったよ」
リーブス先生が頭を下げた。
「何があったか話してもらえますね」
レオンハート様が静かに言った。
「もうここまできたら逃げも隠れもしないよ」
「知っての通り私はルーメン枢機卿の息子だ。だけど母親は知らないだろう?母は…
先代聖女イリアだよ」
「「「 !! 」」」
みんな驚きすぎて言葉が出ない。
「ルーメンの望みは初めはささやかなものだった。ティラーン教を国教にすること、聖女イリアの地位を確固たるものにすること。
そして名乗りをあげられなくても親子3人水入らずで奥の院で会うこと。
初めて聖女イリアに会った日のことは忘れられない。5歳の時、母とは知らずあったんだ」
「あなたがソルね。もっと近くに」
奥の院で聖女イリアが待っていた。私は連れられてたルーメンの手を離れそばに進み出た。
「ソル、もっと顔を見せてくれる?」
そう言って優しく頬を撫でる。すると突然涙を流し
「今は…今だけは…母と呼んでください…」
と声を震わせた。
私は何のことやらわからず
「うれしいです。ぼく、かあさんがいません。
せいぼイリアさま!」
…残酷な言葉だ。わたしはかあさんとは呼ばず、覚えたての聖母という言葉を使ったんだ。
「…えぇ、そうですとも…」
母は私を抱きしめていつまでも泣いていた。
「その頃からルーメンも少しずつ変わっていったのかもしれない」
部屋は重苦しい空気に包まれていた。それとともに先生の話に惹きつけられていた。
「いつまで経っても王室に嫌われて国教になる目処さえたたない。信者を集めても駄目だった」
「王室には王室の事情があるのだ…」
レオンハート様が横を向いた。
「他にも問題が起きた。聖女イリアの体が徐々に弱ってきたのだ。聖女としての力を使う度に。
今のエレニと違って多少は“聖女の力”が使えた。だが力によって生命力がなくなるとは歴代の聖女で誰もいない。
でもねルーメンには思い当たることがあった。歴代聖女との違いは…」
「子どもを産んだこと…」
私が思わず口にした。
「そのとおり。まあ真偽のほどはわからないが。当然ふたりの枢機卿は怪しんだ。
ちなみに3人の枢機卿は神学校の同級生だ。そんなこともあってお互いをよく知っている。だからこそ察したんだと思う」
「関係を気づいた?」
キリアンが眉を寄せた。
「まあ、その気づきは私も関係あるのだが」
先生がふっと遠い目をした。
「20年前、あの事件が起こった」
20年前のあの日、私が何度目かの神殿を訪問した日だ。なぜか夜眠れなくて神殿の中庭で星を見ていた。
すると言い争う声がして私は咄嗟に隠れた。
「ルーメン!貴様イリア様に何をしたんだ!
神殿によく来るあの少年は何なんだ!」
「アロ、あまり怒鳴るな。ルーメン、正直に話してくれ。我々にはやらねばならぬことがあるではないか」
「何が悪い…」
「なに?」
「イリアを愛して何が悪い!」
「なっ!」
ヘルバ様は言葉を失った。
「あの少年は…私たちの子だ」
ルーメンが言った言葉に私は驚きの声を上げるのを必死に止めた。
「ルーメン‼︎」
アロ様が襟首を掴んだ。
「イリア様のあの弱り方はそのことに関係するのか?」
「わからない。でも他には思い当たらない」
「これから我々は次代の聖女様を探し育てなければならない。才能ある子どもたちを探さなければならない」
ヘルバ様は涙を流しながら
「イリア様が亡くなったらどうするのだ!
まだ次代は見つかっていないのだぞ!
聖女不在になってしまうのだぞ!」
最後は叫んでいた。
「だからこそだ。今大変な時だ。ふたりとも力を貸してくれ。ともだちだろ?」
ルーメンの言葉にふたりは
「…もう、ともだちでもなんでもない」
「ルーメン、我々はお前を罷免する」
「どうしてもか?」
「ああ」
「それだけのことをお前はやったんだ」
その時ルーメンの赤い法衣の下からキラッと光ったかと思ったらそれはもうアロ様の腹を刺していた。
「うぅ…おまぇ…」
アロ様は呻いていた。
ルーメンはヘルバ様を狙った。今度ははっきり見える。血塗られた短剣だ。
「やめろ!ルー…」
ヘルバ様の声が聞こえてなくなった。アロ様より致命的だったんだろう。
ルーメンは倒れているふたりを狂ったように刺している。
私は右手で口元を抑えながら見つからないように礼拝堂へと逃げた。
「ふたりは病死ではなく殺されたんですか⁈」
アンディが声をあげた。
「記録では流行り病による病死と。そんなふうに欺けるものでしょうか?」
アンディが1番すべての記録に目を通している。信じられないという様子だった。
「ふたりの枢機卿が亡くなりルーメンだけになった。権力の集中だよ。神殿内でうまく揉み消して病死として国に届け出たんだろう」
リーブス先生はそう言うと少し疲れたのか、ふーっと息を吐いた。
「今のルーメン枢機卿の望みは何なんだ?」
レオンハート様が難しい顔をして言った。
「それは…先代聖女イリアが亡くなった時決定的になった」
リーブス先生の話は続く。
リーブス先生の話を聞くためだ。
先生は少し元気になったようだが、包帯が取れた顔は額から左目、頬と一直線に大きな傷があった。
話しやすいようにと学園の中の応接室を借りた。
さっきからずっと沈黙が続いている。
「…まずは助けてくれてありがとう。あのままだったら命が危なかったよ」
リーブス先生が頭を下げた。
「何があったか話してもらえますね」
レオンハート様が静かに言った。
「もうここまできたら逃げも隠れもしないよ」
「知っての通り私はルーメン枢機卿の息子だ。だけど母親は知らないだろう?母は…
先代聖女イリアだよ」
「「「 !! 」」」
みんな驚きすぎて言葉が出ない。
「ルーメンの望みは初めはささやかなものだった。ティラーン教を国教にすること、聖女イリアの地位を確固たるものにすること。
そして名乗りをあげられなくても親子3人水入らずで奥の院で会うこと。
初めて聖女イリアに会った日のことは忘れられない。5歳の時、母とは知らずあったんだ」
「あなたがソルね。もっと近くに」
奥の院で聖女イリアが待っていた。私は連れられてたルーメンの手を離れそばに進み出た。
「ソル、もっと顔を見せてくれる?」
そう言って優しく頬を撫でる。すると突然涙を流し
「今は…今だけは…母と呼んでください…」
と声を震わせた。
私は何のことやらわからず
「うれしいです。ぼく、かあさんがいません。
せいぼイリアさま!」
…残酷な言葉だ。わたしはかあさんとは呼ばず、覚えたての聖母という言葉を使ったんだ。
「…えぇ、そうですとも…」
母は私を抱きしめていつまでも泣いていた。
「その頃からルーメンも少しずつ変わっていったのかもしれない」
部屋は重苦しい空気に包まれていた。それとともに先生の話に惹きつけられていた。
「いつまで経っても王室に嫌われて国教になる目処さえたたない。信者を集めても駄目だった」
「王室には王室の事情があるのだ…」
レオンハート様が横を向いた。
「他にも問題が起きた。聖女イリアの体が徐々に弱ってきたのだ。聖女としての力を使う度に。
今のエレニと違って多少は“聖女の力”が使えた。だが力によって生命力がなくなるとは歴代の聖女で誰もいない。
でもねルーメンには思い当たることがあった。歴代聖女との違いは…」
「子どもを産んだこと…」
私が思わず口にした。
「そのとおり。まあ真偽のほどはわからないが。当然ふたりの枢機卿は怪しんだ。
ちなみに3人の枢機卿は神学校の同級生だ。そんなこともあってお互いをよく知っている。だからこそ察したんだと思う」
「関係を気づいた?」
キリアンが眉を寄せた。
「まあ、その気づきは私も関係あるのだが」
先生がふっと遠い目をした。
「20年前、あの事件が起こった」
20年前のあの日、私が何度目かの神殿を訪問した日だ。なぜか夜眠れなくて神殿の中庭で星を見ていた。
すると言い争う声がして私は咄嗟に隠れた。
「ルーメン!貴様イリア様に何をしたんだ!
神殿によく来るあの少年は何なんだ!」
「アロ、あまり怒鳴るな。ルーメン、正直に話してくれ。我々にはやらねばならぬことがあるではないか」
「何が悪い…」
「なに?」
「イリアを愛して何が悪い!」
「なっ!」
ヘルバ様は言葉を失った。
「あの少年は…私たちの子だ」
ルーメンが言った言葉に私は驚きの声を上げるのを必死に止めた。
「ルーメン‼︎」
アロ様が襟首を掴んだ。
「イリア様のあの弱り方はそのことに関係するのか?」
「わからない。でも他には思い当たらない」
「これから我々は次代の聖女様を探し育てなければならない。才能ある子どもたちを探さなければならない」
ヘルバ様は涙を流しながら
「イリア様が亡くなったらどうするのだ!
まだ次代は見つかっていないのだぞ!
聖女不在になってしまうのだぞ!」
最後は叫んでいた。
「だからこそだ。今大変な時だ。ふたりとも力を貸してくれ。ともだちだろ?」
ルーメンの言葉にふたりは
「…もう、ともだちでもなんでもない」
「ルーメン、我々はお前を罷免する」
「どうしてもか?」
「ああ」
「それだけのことをお前はやったんだ」
その時ルーメンの赤い法衣の下からキラッと光ったかと思ったらそれはもうアロ様の腹を刺していた。
「うぅ…おまぇ…」
アロ様は呻いていた。
ルーメンはヘルバ様を狙った。今度ははっきり見える。血塗られた短剣だ。
「やめろ!ルー…」
ヘルバ様の声が聞こえてなくなった。アロ様より致命的だったんだろう。
ルーメンは倒れているふたりを狂ったように刺している。
私は右手で口元を抑えながら見つからないように礼拝堂へと逃げた。
「ふたりは病死ではなく殺されたんですか⁈」
アンディが声をあげた。
「記録では流行り病による病死と。そんなふうに欺けるものでしょうか?」
アンディが1番すべての記録に目を通している。信じられないという様子だった。
「ふたりの枢機卿が亡くなりルーメンだけになった。権力の集中だよ。神殿内でうまく揉み消して病死として国に届け出たんだろう」
リーブス先生はそう言うと少し疲れたのか、ふーっと息を吐いた。
「今のルーメン枢機卿の望みは何なんだ?」
レオンハート様が難しい顔をして言った。
「それは…先代聖女イリアが亡くなった時決定的になった」
リーブス先生の話は続く。
0
あなたにおすすめの小説
論破!~召喚聖女は王子様が気に食わない
中崎実
ファンタジー
いきなり異世界に召喚されて、なんかイケメンに「世界を救ってもらいたい事情」を説明される、よくあるWEBファンタジーあるあるパターンが発生した。
だけどねえ、あなたの言い草が気に食わないのよね?からの、聖女が帰宅するまでのおはなし。
王子「自分達より強い敵をどうにかしてくれる相手を呼ぼう。女なら押し倒してしまえば、思うがままにできる!」
聖女1「有能な人を呼びました、としゃあしゃあと抜かすツラだけ良い男、なぁんか気に入らないのよねえ……」
聖女2「はよ帰ろ~」
聖女3「……」
論破というより爆破してませんか、あなた達?
傷物の大聖女は盲目の皇子に見染められ祖国を捨てる~失ったことで滅びに瀕する祖国。今更求められても遅すぎです~
たらふくごん
恋愛
聖女の力に目覚めたフィアリーナ。
彼女には人に言えない過去があった。
淑女としてのデビューを祝うデビュタントの日、そこはまさに断罪の場へと様相を変えてしまう。
実父がいきなり暴露するフィアリーナの過去。
彼女いきなり不幸のどん底へと落とされる。
やがて絶望し命を自ら断つ彼女。
しかし運命の出会いにより彼女は命を取り留めた。
そして出会う盲目の皇子アレリッド。
心を通わせ二人は恋に落ちていく。
どちらの王妃でも問題ありません【完】
mako
恋愛
かつて、広大なオリビア大陸にはオリビア帝国が大小合わせて100余りある国々を治めていた。そこにはもちろん勇敢な皇帝が君臨し今も尚伝説として、語り継がれている。
そんな中、巨大化し過ぎた帝国は
王族の中で分別が起こり東西の王国として独立を果たす事になり、東西の争いは長く続いていた。
争いは両国にメリットもなく、次第に勢力の差もあり東国の勝利として呆気なく幕を下ろす事となった。
両国の友好的解決として、東国は西国から王妃を迎え入れる事を、条件として両国合意の元、大陸の二大勢力として存在している。
しかし王妃として迎えるとは、事実上の人質であり、お飾りの王妃として嫁ぐ事となる。
長い年月を経てその取り決めは続いてはいるが、1年の白い結婚のあと、国に戻りかつての婚約者と結婚する王女もいた。
兎にも角にも西国から嫁いだ者が東国の王妃として幸せな人生を過ごした記録は無い。
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。
下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。
アルファポリス様で10話以上に肉付けしたものを読みたいとのリクエストいただき大変嬉しかったので調子に乗ってやってみました。
小説家になろう様でも投稿しています。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
聖女じゃない私の奇跡
あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。
だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。
「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。
アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!
古森真朝
ファンタジー
大学生の理咲(りさ)はある日、同期生・星蘭(せいら)の巻き添えで異世界に転移させられる。その際の着地にミスって頭を打ち、いきなり流血沙汰という散々な目に遭った……が、その場に居合わせた騎士・ノルベルトに助けられ、どうにか事なきを得る。
怪我をした理咲の行動にいたく感心したという彼は、若くして近衛騎士隊を任される通称『銀鷹卿』。長身でガタイが良い上に銀髪蒼眼、整った容姿ながらやたらと威圧感のある彼だが、実は仲間想いで少々不器用、ついでに万年肩凝り頭痛持ちという、微笑ましい一面も持っていた。
世話になったお礼に、理咲の持ち込んだ趣味グッズでアロマテラピーをしたところ、何故か立ちどころに不調が癒えてしまう。その後に試したノルベルトの部下たちも同様で、ここに来て『じゃない方』の召喚者と思われた理咲の特技が判明することに。
『この世界、アロマテラピーがめっっっっちゃ効くんだけど!?!』
趣味で極めた一芸は、異世界での活路を切り開けるのか。ついでに何かと手を貸してくれつつ、そこそこ付き合いの長い知人たちもびっくりの溺愛を見せるノルベルトの想いは伝わるのか。その背景で渦巻く、王宮を巻き込んだ陰謀の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる