簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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事の真相

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「ふたりの枢機卿が殺された翌年だった。聖女イリアが亡くなった」
「待って、年が合わないわ。先代聖女は確か14年前亡くなったはず」
先生の話だと19年前になってしまう。
「枢機卿もいない、聖女もいないではティラーン教は立ち行かない。5年くらいかな、生きているように見せかけたんだ」
リーブス先生は遠い目をした。



聖女イリアが亡くなった日のことはよく覚えている。
奥の院に青白い顔をして伏せっていた。
「聖女イリアにお別れを」
ルーメンに導かれ、ベッドの横で手を握った。彼女は私の手をそっと握り返し、振り解いて私の頬に手をあてた。
そして両手を胸元で組むと
「神よ、お許しを…」
そう言って涙を流し、…息を引きとった。
私は一連の出来事があまりにも美しく神々しかったので泣くことも忘れただ茫然としていた。
ところがルーメンの思いは違ったらしい。
禁忌を犯してまで愛した女が最後に言った言葉が神への許しだと。自分への愛でもなく、息子への愛でもなく、神への許しだと、彼女は私たちを恥じているのか!…多分そういった思いなんだろう。
「ソルよ、私たち・・・の息子よ」
ルーメンは私を抱きしめた。
「我々の国を作ろう。ティラーン教国!」
「ノストルム王国はもう駄目だ。国教なんていらない!我々の国を作ればいいのだ!」
私はその狂っている様が恐ろしくなった。
「それには…言うことを聞く聖女が必要だな…」



「ルーメン枢機卿の目的は国を作ることなのか?」
レオンハート様が質問した。
「あぁ…でもそれは信仰心からではない。神への復讐さ。神を語って民衆からすべてを巻き上げる。貴族、王族を謀る。
崇高なる神を地の底に落としたいんだ!」




しばらくしてルーメンは小さな女の子を連れてきた。エレニだ。
「この子はエレニ。聖女だ」
その頃私は神殿で暮らしていた。エレニの世話をしていた。
ルーメンとふたりで聖女教育・・・・をした。細工をして奇跡を起こしたと思い込ませた。何度も。
小さな女の子など騙すのは簡単だ。エレニはどんどん自分が特別な力を持った聖女だと思い込んでいく。
ただそれを見て私の良心は痛んだ。
元々気乗りしない計画だ。それでも手を貸したのは父親だったからか…
そんなこともあって外の情報を得るという名目で神殿を出て学園で教鞭を取るようになった。
外へ出てもエレニのことが気がかりだったよ。
ルーメンの目的が達成されたらエレニを自由にしてもらおう。
エレニが外の世界へ出ても生きていけるよう、教育によって女性の地位を高めよう、あの教育はきみたちのためじゃない、すべてエレニのためだった。



「ケイレブは?ケイレブのことは?
どうなんですか?」
私はたまらず聞いた。
「ケイレブは優秀な男だよ」
先生は私をまっすぐ見た。
「外の情報を得る他に優秀な人材をスカウトする目的もあった。
ケイレブは入学当初から目をつけていた。
…あの聖水を製品化できたのはケイレブの頭脳のおかげだ」
「何ですって⁉︎」

「我々も聖水を作るまではできたんだ。ところがまったく安定しない。
不安定なままでは大量生産が難しい。
ケイレブはそこの問題を解決したんだ。おかげであの“聖女お披露目の義”まで何とかこぎつけた」
応接室は静まり返った。誰も言葉が出てこなかった。
ケイレブ、あなたは何ということをしたの!

「私のせいだ。ケイレブを責められないよ。
神学校にしか行けないよう仕向けた。
あの頃のケイレブは貴族社会を憎み、自暴自棄になってたんだ。
この社会を壊すことだけを考えてた」
リーブス先生はもう一度私をまっすぐに見た。
「文官となり、出世して愛する人にプロポーズする。そんな青写真を描いていたんだろう。
それを私が滅茶苦茶にした」
「愛する人にプロポーズ?」
私はおうむ返しに聞いた。
「…これ以上私が言うのは野暮だな。あとは本人に聞きたまえ」


「先生はなぜ2度も捕まったんです?」
レオンハート様が疑問を口にした。
「1度目はエレニを逃がそうとした。これ以上あそこにいたらさらに大きな悪事に加担することになる。
2度目は…きみたちと接触したから。何か余計なことを話さないよう身柄を拘束したんだろう」
私とキリアンはハッとした。
「あの時は話す気などなかったが。結局はこうなってしまったね」
「ごめんなさい…」
「いや、助けてくれたんだし、大丈夫」
リーブス先生は椅子から立ち上がり歩き回りながら
「今までのことよりこれからだ!
今から話すことこそルーメンが言ってほしくない事だ。いよいよ国作りの仕上げに入る。
だが私はこの計画だけは看過できない!」

「それは」

グワァーン!
私は体に信じられないほどの圧を感じた!
動かない!
周りは…
すべて止まっていた・・・・・・
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