簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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王子との面会

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 1週間後、私たちはバークレー商会事務所の応接室に集まった。
 レオンハート様との面会は王宮でとも思ったが、やはり非公式がよかろうとこの場所が選ばれた。

「やあ、ふたりともお久しぶり。
 卒業式以来だね」
 レオンハート様は長い金髪を朱の組紐で後ろにひとつに束ね、相変わらず麗しい姿であった。
 お忍びなのにキラキラして目立ちすぎだ。
 でもどんなに見め麗しくても女性の敵だ。
「いろいろ話したいことがあって…あの…マルグリット嬢、そんな射殺すような目で見ないでくれるかな?」
「ララ!きみは誤解してるよ!
 レオンハート殿下はそんな人じゃないんだ!」
 アンディが慌てて間に割って入った。
「え?そうなの?」
 まだわからない。警戒は緩めない。
「ははは、あの婚約白紙以来、女性に人気ないからなあ」
 レオンハート様は困り顔で力なく笑った。
「レオンハート殿下は今でもセレンティア様一筋なんだ!危険が及ばないよう少しの間遠ざけただけなんだ!」
 アンディの捲し立てに私は驚いた。
「つまりそんな前から怪しい動きがあると?」
 キリアンが場を落ち着かせた。
「そう。…私はね、キリアン。この騒動は始まりに過ぎない。もっとよくないことが起きると思うんだ」


「ことの起こりは20年前だ。
 2人の枢機卿が病で次々と亡くなった。
 神殿はね、もともと3人の枢機卿によって運営されている。全国のティラーン教関係者の選挙によって3人選出され、その3人が聖女を選出する。
 だがここ20年残ったルーメン枢機卿がずっとひとりで仕切っている。
 聖女候補も本当は何人かいるはずなのに、今の聖女エレニだけだった。
 明らかに神殿を独占している。
 そしてその独占する先になにがあるかだ」
 レオンハート様は難しい顔をしていた。

「ケイレブは意図的に神殿に取り込まれたと考えている」
「⁉︎」
「優秀な人だからね」
「どういうことです?」
 私は不安な思いでいっぱいだった。
「わたしは採用にあたって第一希望にケイレブ・コクトー、第二希望にアンディ・ワトソンズを指名したんだ。
 あ、アンディ、ごめんね」
「いえ、お気になさらず」
「途中まで何の問題もなかったと思う。
 だけど土壇場でケイレブからアンディに変わったんだ。
 平民が王族付きの文官になるのは前例がないからダメだということだ。
 急におかしくないか?」
 レオンハート様は言葉を切った。
「もしも意図的なら王宮の、しかも人事関係者が神殿側にかなり懐柔されているということになりますよ」
 キリアンがすかさず言った。
「…そうだね。問題だよ」



「…これから先の話は協力してくれないと話せないな。どうする?」
 レオンハート様が微笑んで穏やかに言った。
「協力といっても何をすればいいんですか?」
「当面はケイレブとの接触だ。
 我々よりは親しいだろう?
 できることならあそこから救い出したい」
「…わかりましたわ。キリアンは?」
「もちろん、協力するよ」
「よかった!」
 レオンハート様は満足げに笑った。

「さてケイレブの話を続けるとどこへも就職できなかった彼はリーブス先生に相談した。
 そして先生のすすめで神学校に入った」
「ええ、本人からそう聞きましたけど」
 私は卒業式のあの日を思い返していた。
 式の後、ケイレブと先生がなにやら真剣に話していた。
 でもパーティーの時彼は…
「待って!彼は神学校へ行っても聖職者にはならないと言っていたわ」
「そうだ!地方の文官とか、教職とか、そういうのになろうとしていたんじゃないか」
 キリアンも思い出したようだ。
「リーブス先生の経歴を調べたんだ。
 地方の孤児院から地元の学校、最後は神学校に2年通って教職についた。
 その時々の後見人がルーメン枢機卿だ。
 …ソル・リーブスは
 ルーメン枢機卿と繋がっている。
 神殿側の人間だ。」
「「えっ!」」
「信じられない!
 もしそうだとしたら、先生のあの教えは?
 ティラーン教とは相反すると思うけれど」
「そこはわたしも疑問なのだがね。
 ソル・リーブスとルーメン枢機卿の関係を知ろうとわたしは変装して彼の育った孤児院を訪ねたんだ。
 思わぬ収穫があったよ」
 レオンハート様はその時のことを詳しく話してくれた。



 わたしは学園の事務官を装い、彼の育った“リーブス孤児院”を訪ねた。
「リーブス院長先生ですね。
 わたくし、こういうものです」
「なんですかな、なになに
 王立アラータス学園 事務官 レオ・ノース 様?」
 渡した名刺を覗き込んで言った。もうご高齢で目も不自由らしい。
「ソル・リーブス先生の身元調査です」
「なっ‼︎ソルが何かしでかしましたか?」
「いえいえ、その逆ですよ。
 この度教授にと推薦の声が上がったので身元の再調査です」
「そうでしたか!
 それはよかった、よかった」
「そこでですが、なぜルーメン枢機卿が後見人なのですか?
 孤児院の子どもたちはどこも院長が後見人ですよね?」
「それは…ルーメン様が是非にと。
 ソルは赤ん坊の時ルーメン様自ら抱いて来られたのです。
 学校に上がる時、先生になる時、いつもルーメン様自ら手続きなさいました」
「…やはり疑問は残る?なぜ?」
「それくらい特別な子・・・・だったのでしょう」
「‼︎…まさか…」
 リーブス院長は大きくうなづいた。
「そんな大事な話、どうしてわたしに?」
「わたしは歳を取り過ぎました。
 墓場まで持っていくには重過ぎる話だったからかも知れません。
 誰かに打ち明けたかったから。
 レオンハート様・・・・・・・
「‼︎」


「諸君、これで分かっただろう。
 ソル・リーブスはルーメン枢機卿の隠し子だ」
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