簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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いよいよ神殿へ

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 朝キリアンが迎えに来てくれた。
 いっしょに神殿へ向かう。

「ケール司祭ですか?
 えっとですね、少々お待ちください」
 神殿の入り口にいた若い修道士に話したところ待たされてしまった。
「どうしたのかしら?帰って来ないわ」

 しばらくしてさっきの修道士が帰ってきた。
「お待たせしました。こちらへ」
 荘厳な礼拝堂を通り抜けて奥の小部屋に案内された。
「ここで会えるのかしら?」
「…呼んでまいります」

「……一歩進んだのかな?
 前は門前払いだったよ」
 キリアンは怪しみながら言った。

 コンコンっ、
 ドアが開いた。

 私の目に飛び込んできたのは“鮮やかな赤”だった。
「お待たせ致しました」
 それは赤の法衣をまとったルーメン枢機卿だった。
「‼︎」
 (なんで?)

「ケール司祭に会いにいらっしゃったとか。
 申し訳ありません。
 ケール司祭は聖女エレニととも地方をまわっているのです。
 帰りは…あと5,6日かかるかと」
「そうですか…」
 がっかりした。
「なぜルーメン枢機卿が直々に?」
 キリアンが警戒しながら言った。

「失礼ながらバークレーさんに会いたかったわけでなく、マルグリット・ララ・ロレンス嬢にお会いしたかったからなのですよ」
「えっ、私?」
「ええ、ええ、そうですとも。
 リタ・ロレンス様には大変お世話になっているものですから」
「?リタ・ロレンスは私の祖母ですが…」
「ええ、ええ、存じ上げておりますとも。
 とても信心深いお方でたくさんの『お力添え』を頂戴しております。
 わたくしども大変助かっておるのです」
「‼︎」
「あのかたのお孫さんのマルグリット嬢にも是非とも感謝の意を表したいと」
「…そうでしたか」
「まことにありがとうございます」
 ルーメン枢機卿は頭を下げた。
「あ…いえ…」
 私はそれだけ言うのに精一杯だった。

 コンコン!
 またノックの音がした。
 ガチャ
 小さな男の子が入ってきた。
 手にはトレーを持っている。
 二つのゴブレットが置かれていた。
「るーめんさまぁ
 おみず、もってきましたぁ」
 かわいい声がした。
 大人が後ろで付き添いこぼすまいとしている。
「あぁ、ありがとう。
 お客さまにお出しして。
 すごいでしょう?こんな小さな子どもまで奉仕活動をしてくれるのですよ。
 ありがたいことです」
 さすがに子どもがテーブルの上に置くのは難しく、後ろの男性が引き取り私達の前にゴブレットを置いた。
「どーぞ」
 男の子がにっこり笑っている。

 (どうしよう?
 これじゃ断れないじゃない)
 できればこの水、飲みたくない!
 キリアンは?
 目を見開いていたが意を決したようだ。
 手をのばしている。
 ハッ!
 私は咄嗟にキリアンのゴブレットを奪い、自分の前のゴブレットも持った。
 両手に持ってそれぞれ一気飲みした。
「おい‼︎」
「喉が…渇いていたのよ」

 ゴブレットを置いた瞬間、頭がぐわんとして目が回った。
「ララ!ララ!」
 キリアンの声
「うわあぁぁーん」
 男の子の泣き声
 そして…
 ルーメン枢機卿のニタッとした顔

 私はテーブルに突っ伏し意識を失った。


 ……?……
 ‥夢?
 赤い法衣の人、枢機卿?ふたりいる。
 噴水があって…花壇にはハーブかしら?
 あれ?
 ふたりが私を指さしている。
『…ラ…ラ  き…くれ   』
 なんて言ってるの?
『おねが… …   た…けて…しい…』
 何ですか?
『ララ…たすけて!』
 ハッ!
 目が覚めた。

「ララ」
 キリアンが覗き込んでいる。
「よかった…」

 私は簡易なベッドに寝かされていた。
「あれ?ここどこ?」
「神殿の中の救護室みたいなとこだ」
「…どうなった?」
 私が意識を失った後のことを聞いた。

「アイツっ!頭にくる‼︎」
 キリアンの話によると


「ララ!ララ!
 アンタ何飲ませたんだ⁉︎」
「聖水です」
「‼︎」
「冗談ですよ。
 奥の院の湧水です。
 飲みやすいよう果実酒が少量入っておりますが、マルグリット様はお酒に弱かったのですかな?」
 ルーメン枢機卿はすまして言うと救護室で休ませるよう指示して出ていった。
 そして今に至る。
「果実酒って感じでもなかったけど…」
 まだクラクラする頭をおさえながら私が言うと
「脅しだよ。
 嗅ぎ回るなってことだろ」
 と、吐き捨てるように言った。
 そして
「あんまり無理してくれるな…」
 とも。
「ごめん…」

 キリアンに肩を借りて救護室を後にした。
「ねぇ、私が寝ている時私に助けてを求めなかった?」
「?」
「『ララ、助けて!』とか」
「はぁ?寝てる人に助けなんか求めないでしょ。
 助けがいるのは今のララでしょ?」
 キリアンは何も言っていないらしい。
 やっぱり夢?

 外に出るとさっきの男の子と修道士が見送りにきていた。
「大丈夫ですか?
 もう少し休んでいかれますか?」
「おねえちゃん、あの…ぼく…」
「ご心配をおかけしました。
 もう大丈夫です。」
 私はしゃがんで男の子に
「ちょっと体の調子が悪かっただけ。
 キミのせいではないよ」
 と、頭を撫でた。

 帰り道の馬車の中、私は次のやるべきことを考えていた。
 お祖母様に会わなければ!
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