簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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久しぶりに会うお祖母様は

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 リタ・ロレンス、私のお祖母様は王都の郊外に住んでいる。
 お祖父様のジョン・ロレンスはすでにこの世を去りお祖母様は一人暮らしだ。
 いっしょに住みましょうと打診したが、ここはふたりの思い出がいっぱいあるからと動こうとしなかった。
 とはいえ我がロレンス子爵邸から1日で往復できる距離なのでそのままなのだ。
 馬車の中、家族の言葉を思い出す。

「あなたには追々話そうと思ったのよ」
 と母
「ものすごく寄進しているのよ。
 止めても無駄なの。聞かないから」
 と姉
「からだが段々弱っていて…
 心配はしているんだがどうしたらいいものかと」
 と父。
 例の騒動の被害者がこんなそばにいたなんて。

「まあ!マルグリットなの!」
 馬車から降りるとエントランスからお祖母様が暖かく迎えてくれた。
「お祖母様、長らく来れなくてごめんなさい」
「いいのよ、元気でいてくれたら。それよりもっと顔を見せて」
 久しぶりにみるお祖母様はずいぶん痩せてしまっていた。

 部屋中に思い出の品、小さな肖像画や手紙などでいっぱいにしてお祖母様は嬉しそうに話した。
「マルグリットや、マルグリット、この名前は私が付けたのよ。ジョンと頑張って働いて働いて、爵位を賜った。しかも子爵よ!嬉しかった!
 貴族っぽい長い名前にあこがれたわ。
 だってリタにジョンでしょ?あなたのお父様はテオ。
 孫ができたって聞いた時絶対長い名前にしたかったの。
 でもジョンの方が早かった。『ヴァイオレット』って名付けたの。
 …あの人も長い名前に憧れてたのね。
 2番目の子は『ミカエラ』これはあなたのお母様のお父様。
 油断していたわ、取られたわ。
 次にあなたが生まれた。私はどうしても名付けたくて『マルグリット』を推したわ。
 でもテオたちも一度くらい自分たちで付けたいと『ララ』を推して譲らない。
 気持ちはわかるけど短すぎるのよ、ララは。せめて長い名前なら私も折れたわ。
 で、揉めに揉めた挙句、両方付けちゃったってわけ。」
 何度か繰り返されたこの話をお祖母様は満足げに語った。
 よかった!思ったより元気そうで。

 その時!
 ガガガっ!ドーン!
 ものすごい音がした。
「なにごと⁉︎」
 私が叫ぶとお祖母様はこともなげに
「忘れてたわ。
 解体の工事の人が来たのよ。」
 窓に駆け寄って庭を見ると花園の中央にある白いガゼボが取り壊されている最中であった。
「なんでもあのガゼボは珍しい石でできているんですって。
 だから神殿に寄進しようと思って。」
「なんで‼︎ 
 だってあのガゼボはお祖父様との思い出がたくさんあるのでしょう?」
「そうだけど…
 仕方ないわ。神様のためだもの。」
 そう言ってお祖母様は戸棚からリボンのかかった小瓶を出した。
 例の小瓶だ!
「寄進するとこの“聖水”がいただけるのよ。
 これはね、すごいの!体が軽くなって楽になるのよ!」
 キラキラした目で語るお祖母様に驚愕した。
 ダメよ!それは!
「ねぇお祖母様、それ私に譲っていただ…」
「ダメーっ!」
 お祖母様が突然叫んだ。
「これは最後の1本なのよ!
 だからガゼボを壊してこれをもらうの!
 欲しいなら神殿に寄進しなさい!」
 大きい声を出したせいか床に座り込んでしまった。
「お祖母様!」
 私は慌てて駆け寄りメイドたちを呼んだ。
 すぐさまお祖母様から小瓶を取り上げた。
 メイドたちに支えられ寝室に向かう時、私のほうへ両手をバタつかせて
「聖水!聖水!」
 と言ったお祖母様はもうさっきの優しい顔ではなかった。
「大丈夫、取ったりしないわ。
 後で寝室へ持っていくから。落としたら大変でしょ?」
 その言葉に安心したのか大人しく連れていかれた。
 私は素早くキッチンへいった。
 小瓶の中身を別の瓶に移し替え、リボン付き小瓶には普通の水を入れた。
「はあー」
 ため息が出た。

「お祖母様、持ってきましたよ。」
 私がそう言うとお祖母様は喜んでベッドから起き上がった。
 嬉しそうに“普通の水”を飲む。
「はぁーほら、やっぱりね!息するのが楽になったわ」

 お祖母様が寝てしまうと私はメイドたちに後のことを任せ、帰路についた。
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