13 / 28
はっきりさせる
しおりを挟む
翌朝、私は王宮で働くアンディを訪ねた。
事情を話し、移し替えた瓶をアンディに渡した。
「ありがとう!これの成分を調べれば詳しいことがわかると思うよ。それでララのお祖母様はどんな具合だい?」
「明らかに異常だわ。聖水に対する執着がものすごいの。体は弱ってきているみたい」
「そうか…とにかく急がせるよ」
「お願いね」
王宮を後にし、待たせた馬車に乗り込もうとした時
「ララ!待って!」
アンディが走って呼び止めてきた。
「あの…ケイレブには…会えたかい?」
息をきらして言った。
「いいえ、地方に行ってて留守だったわ」
「やっぱり。布教活動で聖女エレニとともに地方を周っているんだが物資補給のため戻ってきているらしい。すぐ別の地方へ出発するようだけどね」
「‼︎」
「どうもガードが固くて日時とかどこへ行くとか詳しいことはわからないけど…」
「いいえ!充分よ!ありがとう!」
私は馬車に飛び乗った。
「ひとりじゃ危険だ!キリアンに相談し…」
アンディの声が小さくなっていく。
私は神殿へと急いだ。
朝の神殿は人が多い。
一般の人が礼拝堂で祈りを捧げているからだ。
私は礼拝堂を見回した。
!いた!
黒の司祭服姿のケイレブが見えた!
少し痩せたようだが落ち着き払った大人のケイレブがそこにいた。
数人の修道士たちと話をしているようだか、私は意を決して声をかけた。
「ケイレブ!あの…私…」
一瞬驚いたようだが、ケイレブは静かに微笑んだ。
だがそれは張り付いたような笑顔であった。
「お久しぶりです。マルグリット嬢。
今日は朝の礼拝ですか?」
「…違うわ、あなたに話があるのよ。ケイレブ」
私はそのよそよそしい態度に少し苛立ちながら言った。
「今はケールと」
「それよ!なんで名前変えたの?
聖職者になるなんて一言も言わなかった。
なんで司祭なの?
キリアンやアンディを無視するのはなぜ?」
「別に無視しているわけではありませんよ。
宗教的考え方が相容れないのです。」
顔はケイレブなのに話し方や表情が全然違う、違和感しかなかった。
「…そんなに信心深かったかしら?」
「神学校で教えを受けて変わったのです」
「あなたが何の神様を信じようが自由よ。
でもね、人を騙したり健康を害したりしてお金をまきあげるようなまねは許されない」
「聞き捨てならないですね。我々は真面目に布教活動をしているだけです」
「あのケール、ちょっといいかしら」
私たちの言い争いに割って入るように美しい声がした。聖女エレニだった。
「こちらの方は?」
「マルグリット・ララ・ロレンス子爵令嬢です。
私の同級生ですよ。」
「神学校の?」
「いえ、アラータス学園のほうです」
「まぁ、ではソルを知っているのね!」
エレニが私の方へ向き直った。
「私たちの担任の先生です」
私は答えながらもケイレブが気になっていた。
「あっ、失礼しました。
エレニと申します。以後お見知りおきを」
そう言って微笑んだ彼女はとても聖女らしかった。
「…ロレンスと申します。こちらこそ」
「ケール、明日の出立について相談が…よろしくて?」
「ええ、話は終わりましたので」
「!」
エレニが口の動きだけで、“ごめんなさい”と言ってケイレブを連れて行こうとした。
「待って!まだ終わってない!」
私はこの機を逃せばもう2度と彼を取り戻せないと思った。
「これ以上話しても何も変わらない」
そこにはケイレブではなくケールがいた。
「神を信じる者と信じない者、どこまで行っても平行線ですよ」
尚も行こうとするケイレブの背に向かって
「神などっ!神など信じていないくせに!」
礼拝堂中に私の声が響き渡った。
修道士たちはギョとしてこちらを見た。
参拝者たちは憎しみを込めた目で今にも飛びかかりそうだ。
モンクたちが数人来て私を取り囲んだ。
ケイレブは右手をあげ動きを制した。
「このお嬢さんは心が疲れているのです。あのような暴言は彼女の本心ではありません。彼女が世界が平穏であるよう、みなさん祈りましょう。」
「そ、そうですね。みなさま、心穏やかに。」
さっきまで固まっていた聖女エレニはようやく言葉を発した。
この場は収まったようだ。
取り囲んでいるモンクたちに
「この方を外へ、丁重に」
と言ってケイレブは去って行く。
およそ丁重でない荒さで両腕を掴まれ、今まさに外へ連れ出されようとする時
「本当のあなたはどこなの⁈ケイレブ‼︎」
私は叫んだ。
その時だけ、ほんの一瞬だけケイレブと目が合った。
驚いたような、すがるようなそんな顔をした。
それは確かに昔のケイレブの顔だった。
だけど…
すぐにまたケールの顔に戻ってしまった。
結果、私は外につまみ出された。
冷たい石畳の上で座り込んでいた。
怪我はないが気力がなくて起き上がれそうにない。
「おい!大丈夫か⁈」
キリアンだった。
「まったく!無茶しすぎ」
そう言ってゆっくり抱き起こされ
「…帰ろう」
「うん…」
事情を話し、移し替えた瓶をアンディに渡した。
「ありがとう!これの成分を調べれば詳しいことがわかると思うよ。それでララのお祖母様はどんな具合だい?」
「明らかに異常だわ。聖水に対する執着がものすごいの。体は弱ってきているみたい」
「そうか…とにかく急がせるよ」
「お願いね」
王宮を後にし、待たせた馬車に乗り込もうとした時
「ララ!待って!」
アンディが走って呼び止めてきた。
「あの…ケイレブには…会えたかい?」
息をきらして言った。
「いいえ、地方に行ってて留守だったわ」
「やっぱり。布教活動で聖女エレニとともに地方を周っているんだが物資補給のため戻ってきているらしい。すぐ別の地方へ出発するようだけどね」
「‼︎」
「どうもガードが固くて日時とかどこへ行くとか詳しいことはわからないけど…」
「いいえ!充分よ!ありがとう!」
私は馬車に飛び乗った。
「ひとりじゃ危険だ!キリアンに相談し…」
アンディの声が小さくなっていく。
私は神殿へと急いだ。
朝の神殿は人が多い。
一般の人が礼拝堂で祈りを捧げているからだ。
私は礼拝堂を見回した。
!いた!
黒の司祭服姿のケイレブが見えた!
少し痩せたようだが落ち着き払った大人のケイレブがそこにいた。
数人の修道士たちと話をしているようだか、私は意を決して声をかけた。
「ケイレブ!あの…私…」
一瞬驚いたようだが、ケイレブは静かに微笑んだ。
だがそれは張り付いたような笑顔であった。
「お久しぶりです。マルグリット嬢。
今日は朝の礼拝ですか?」
「…違うわ、あなたに話があるのよ。ケイレブ」
私はそのよそよそしい態度に少し苛立ちながら言った。
「今はケールと」
「それよ!なんで名前変えたの?
聖職者になるなんて一言も言わなかった。
なんで司祭なの?
キリアンやアンディを無視するのはなぜ?」
「別に無視しているわけではありませんよ。
宗教的考え方が相容れないのです。」
顔はケイレブなのに話し方や表情が全然違う、違和感しかなかった。
「…そんなに信心深かったかしら?」
「神学校で教えを受けて変わったのです」
「あなたが何の神様を信じようが自由よ。
でもね、人を騙したり健康を害したりしてお金をまきあげるようなまねは許されない」
「聞き捨てならないですね。我々は真面目に布教活動をしているだけです」
「あのケール、ちょっといいかしら」
私たちの言い争いに割って入るように美しい声がした。聖女エレニだった。
「こちらの方は?」
「マルグリット・ララ・ロレンス子爵令嬢です。
私の同級生ですよ。」
「神学校の?」
「いえ、アラータス学園のほうです」
「まぁ、ではソルを知っているのね!」
エレニが私の方へ向き直った。
「私たちの担任の先生です」
私は答えながらもケイレブが気になっていた。
「あっ、失礼しました。
エレニと申します。以後お見知りおきを」
そう言って微笑んだ彼女はとても聖女らしかった。
「…ロレンスと申します。こちらこそ」
「ケール、明日の出立について相談が…よろしくて?」
「ええ、話は終わりましたので」
「!」
エレニが口の動きだけで、“ごめんなさい”と言ってケイレブを連れて行こうとした。
「待って!まだ終わってない!」
私はこの機を逃せばもう2度と彼を取り戻せないと思った。
「これ以上話しても何も変わらない」
そこにはケイレブではなくケールがいた。
「神を信じる者と信じない者、どこまで行っても平行線ですよ」
尚も行こうとするケイレブの背に向かって
「神などっ!神など信じていないくせに!」
礼拝堂中に私の声が響き渡った。
修道士たちはギョとしてこちらを見た。
参拝者たちは憎しみを込めた目で今にも飛びかかりそうだ。
モンクたちが数人来て私を取り囲んだ。
ケイレブは右手をあげ動きを制した。
「このお嬢さんは心が疲れているのです。あのような暴言は彼女の本心ではありません。彼女が世界が平穏であるよう、みなさん祈りましょう。」
「そ、そうですね。みなさま、心穏やかに。」
さっきまで固まっていた聖女エレニはようやく言葉を発した。
この場は収まったようだ。
取り囲んでいるモンクたちに
「この方を外へ、丁重に」
と言ってケイレブは去って行く。
およそ丁重でない荒さで両腕を掴まれ、今まさに外へ連れ出されようとする時
「本当のあなたはどこなの⁈ケイレブ‼︎」
私は叫んだ。
その時だけ、ほんの一瞬だけケイレブと目が合った。
驚いたような、すがるようなそんな顔をした。
それは確かに昔のケイレブの顔だった。
だけど…
すぐにまたケールの顔に戻ってしまった。
結果、私は外につまみ出された。
冷たい石畳の上で座り込んでいた。
怪我はないが気力がなくて起き上がれそうにない。
「おい!大丈夫か⁈」
キリアンだった。
「まったく!無茶しすぎ」
そう言ってゆっくり抱き起こされ
「…帰ろう」
「うん…」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……
しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」
そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。
魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。
「アリス様、冗談は止してください」
震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。
「冗談ではありません、エリック様ぁ」
甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。
彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。
「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」
この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。
聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。
魔法を使えないレナンとは大違いだ。
それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが……
「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」
そう言うレナンの顔色はかなり悪い。
この状況をまともに受け止めたくないようだ。
そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。
彼女の気持ちまでも守るかのように。
ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。
同名キャラで様々な話を書いています。
話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。
お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。
中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^)
カクヨムさんでも掲載中。
聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。
青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。
婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。
王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で“優秀な女性”だと溺愛される
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アンナ・ローレンスはグランベル王国第一王子ダニエル・クロムハートに突然の婚約破棄を言い渡された。
その理由はアンナの職業にあった。職業至上主義の世界でアンナは無能と言われる職業を成人の儀で神に与えられた。その日からアンナは転落人生を歩むことになった。公爵家の家族に使用人はアンナに冷たい態度を取り始める。
アンナにはレイチェルという妹がいた。そのレイチェルの職業は神に選ばれた人しかなれない特別な職業と言われる聖女。アンナとレイチェルは才能を比較された。姉のアンナは能力が劣っていると言われて苦しい日常を送る。
そして幼馴染でもある婚約者のダニエルをレイチェルに取られて最終的には公爵家当主の父ジョセフによって公爵家を追放されてしまった。
貴族から平民に落とされたアンナは旅に出て違う国で新しい生活をスタートする。一方アンナが出て行った公爵家では様々な問題が発生する。実はアンナは一人で公爵家のあらゆる仕事をこなしていた。使用人たちはアンナに無能だからとぞんざいに扱って仕事を押し付けていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる