簡単にすらすらと神様を語る人を私は信用致しません

バオバブの実

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はっきりさせる

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 翌朝、私は王宮で働くアンディを訪ねた。
 事情を話し、移し替えた瓶をアンディに渡した。
「ありがとう!これの成分を調べれば詳しいことがわかると思うよ。それでララのお祖母様はどんな具合だい?」
「明らかに異常だわ。聖水に対する執着がものすごいの。体は弱ってきているみたい」
「そうか…とにかく急がせるよ」
「お願いね」

 王宮を後にし、待たせた馬車に乗り込もうとした時
「ララ!待って!」
 アンディが走って呼び止めてきた。
「あの…ケイレブには…会えたかい?」
 息をきらして言った。
「いいえ、地方に行ってて留守だったわ」
「やっぱり。布教活動で聖女エレニとともに地方を周っているんだが物資補給のため戻ってきているらしい。すぐ別の地方へ出発するようだけどね」
「‼︎」
「どうもガードが固くて日時とかどこへ行くとか詳しいことはわからないけど…」
「いいえ!充分よ!ありがとう!」
 私は馬車に飛び乗った。
「ひとりじゃ危険だ!キリアンに相談し…」
 アンディの声が小さくなっていく。

 私は神殿へと急いだ。

 朝の神殿は人が多い。
 一般の人が礼拝堂で祈りを捧げているからだ。
 私は礼拝堂を見回した。
 !いた!
 黒の司祭服姿のケイレブが見えた!
 少し痩せたようだが落ち着き払った大人のケイレブがそこにいた。
 数人の修道士たちと話をしているようだか、私は意を決して声をかけた。
「ケイレブ!あの…私…」
 一瞬驚いたようだが、ケイレブは静かに微笑んだ。
 だがそれは張り付いたような笑顔であった。
「お久しぶりです。マルグリット嬢。
 今日は朝の礼拝ですか?」
「…違うわ、あなたに話があるのよ。ケイレブ」
 私はそのよそよそしい態度に少し苛立ちながら言った。
「今はケールと」
「それよ!なんで名前変えたの?
 聖職者になるなんて一言も言わなかった。
 なんで司祭なの?
 キリアンやアンディを無視するのはなぜ?」
「別に無視しているわけではありませんよ。
 宗教的考え方が相容れないのです。」
 顔はケイレブなのに話し方や表情が全然違う、違和感しかなかった。

「…そんなに信心深かったかしら?」
「神学校で教えを受けて変わったのです」
「あなたが何の神様を信じようが自由よ。
 でもね、人を騙したり健康を害したりしてお金をまきあげるようなまねは許されない」
「聞き捨てならないですね。我々は真面目に布教活動をしているだけです」

「あのケール、ちょっといいかしら」
 私たちの言い争いに割って入るように美しい声がした。聖女エレニだった。
「こちらの方は?」
「マルグリット・ララ・ロレンス子爵令嬢です。
 私の同級生ですよ。」
「神学校の?」
「いえ、アラータス学園のほうです」
「まぁ、ではソルを知っているのね!」
 エレニが私の方へ向き直った。
「私たちの担任の先生です」
 私は答えながらもケイレブが気になっていた。
「あっ、失礼しました。
 エレニと申します。以後お見知りおきを」
 そう言って微笑んだ彼女はとても聖女らしかった。
「…ロレンスと申します。こちらこそ」

「ケール、明日の出立について相談が…よろしくて?」
「ええ、話は終わりましたので」
「!」
 エレニが口の動きだけで、“ごめんなさい”と言ってケイレブを連れて行こうとした。

「待って!まだ終わってない!」
 私はこの機を逃せばもう2度と彼を取り戻せないと思った。
「これ以上話しても何も変わらない」
 そこにはケイレブ・・・・ではなくケール・・・がいた。
「神を信じる者と信じない者、どこまで行っても平行線ですよ」

 尚も行こうとするケイレブの背に向かって
「神などっ!神など信じていないくせに!」
 礼拝堂中に私の声が響き渡った。
 修道士たちはギョとしてこちらを見た。
 参拝者たちは憎しみを込めた目で今にも飛びかかりそうだ。
 モンクたちが数人来て私を取り囲んだ。
 ケイレブは右手をあげ動きを制した。
「このお嬢さんは心が疲れているのです。あのような暴言は彼女の本心ではありません。彼女が世界が平穏であるよう、みなさん祈りましょう。」
「そ、そうですね。みなさま、心穏やかに。」
 さっきまで固まっていた聖女エレニはようやく言葉を発した。
 この場は収まったようだ。

 取り囲んでいるモンクたちに
「この方を外へ、丁重に」
 と言ってケイレブは去って行く。
 およそ丁重でない荒さで両腕を掴まれ、今まさに外へ連れ出されようとする時
「本当のあなたはどこなの⁈ケイレブ・・・・‼︎」
 私は叫んだ。
 その時だけ、ほんの一瞬だけケイレブと目が合った。
 驚いたような、すがるようなそんな顔をした。
 それは確かに昔のケイレブの顔だった。
 だけど…
 すぐにまたケールの顔・・・・・に戻ってしまった。

 結果、私は外につまみ出された。


 冷たい石畳の上で座り込んでいた。
 怪我はないが気力がなくて起き上がれそうにない。
「おい!大丈夫か⁈」
 キリアンだった。
「まったく!無茶しすぎ」
 そう言ってゆっくり抱き起こされ
「…帰ろう」


「うん…」
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