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当たって砕けた
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キリアンの乗ってきた馬車に乗せられた。
私は黙っていた。
「…これじゃダメだな」
そう言ったと思ったらロレンス子爵邸を通り過ぎた。
「髪はボサボサ、ドレスは泥だらけ。
これじゃ驚かれる」
私が顔を上げると
「俺の家に行こうか」
「…うん」
バークレー家は商会事務所から少し離れた街中にあった。
「キリアン坊っちゃん、どこ行ってたんです?
執事が探してましたよ。
あぁララ様といっしょって…ララ様!
どうなさったんです⁈」
メイド長のメアリーさんに驚かれてしまった。
ほんとだ。
「街で転んだ。風呂に入れて少しはマシにしてくれ」
キリアンが言い終わらないうちにメアリーさんに連れて行かれた。
髪をきれいに結ってもらって、ドレスもどこから持ってきたのか新品を着せてもらって…
私はようやく人心地ついた。
「おっ、マシになったな」
「…うん」
「落ち着いた?」
「うん」
「腹、減ってないか?」
「朝から何も食べてない…」
ここで初めてキリアンが笑って
「メアリー、ララが朝から食べてないって」
「はぁーい、ただいまー」
…もう食事が用意されていた。
「そんな気がして風呂入っている間に用意させた。
アンディから連絡もらったんだ。だいぶ焦ってたよ。
何も食わずに王宮、神殿って飛び回っていたんだろ?」
私はガツガツ食べながら、この後のキリアンのお説教を聞いていた。
でも“何があったか話してみろ”のくだりになるとわんわん泣いてしまった。
それでも食べながら、泣きながら、神殿で起こったことを話した。
「はぁ、何やってんだか」
キリアンがため息をついた。
「なぁララ、『私だったらケイレブを連れ戻せる』とほんのちょっとでも思っていなかった?」
図星だ。
私が行けば、会えさえすれば、何とかなると思っていた。
なのに、エレニとふたりで行ってしまった。
「この件は根が深いんだ。
もっと慎重に行動しなくちゃ。
勝手に突撃して自信を砕かれちゃ世話ないだろ?」
おっしゃる通りです。
「で、今度は俺といっしょに突撃する」
「えっ?」
「ふたりでリーブス先生のところに行ってみないか?
殿下とアンディが何もしていないわけないんだ。
だけどあまり話には出てこないだろ?」
キリアンは少し考えて
「学園に行けば会えると思うんだ」
そうだわ、先生に会ってみたい。
すぐにでも会いに行きたかったが、そんな様子じゃダメだとキリアンが5日後にと設定した。
…私たちは今、アラータス学園に来ている。
「リーブス先生ですか?」
受付の人に面会を申し込むと思わぬ答えが返ってきた。
「5日前から無断欠勤してまして、今日やっと出勤したんですが、まぁびっくりしたことに」
少し言い淀んで
「あの、聞いてきます」
と言って奥に引っ込んでしまった。
しばらくして
「どうぞ、先生は研究室にいらっしゃいます」
許可がおりたので私たちは研究室へ向かった。
「やあ、いらっしゃい!
久しぶりだね。」
「「⁈」」
額から左目にかけて包帯をぐるぐる巻きにしているリーブス先生がいた。
「どうしたんですか?」
「いや…5日前、馬車で事故にあって…顔を怪我して」
なんだかしどろもどろでよくわからない。
「それよりケイレブのことでしょう?
私は何も知らないよ。
神学校を勧めたが、私と同じく教職につけばと思っていた。
まさか司祭になるとはね」
私たちが聞いてもないのに先生はまるで定型文のように話した。
私がどうしたものかと迷っていると
「先生はルーメン枢機卿とはどういうご関係ですか?
後見人のようですがなぜです?」
キリアンが直球勝負に出た。
「えっ、」
リーブス先生は明らかに動揺している。
「先生は神殿と深く関わり、ケイレブを取り込んで何かに利用しているんじゃないですか?」
キリアンがなおも続けた。
「…」
先生は否定しない、ただ黙っている。
「ティラーン教を否定しているわけではないのです。昔からの信仰ですから。
ただ今の有り様はあまりに酷い。
私の祖母も人生を狂わされてしまいました。
そんな人は他にもたくさんいます。
先生はこのことをどうお考えですか?」
私は先生の本心が聞きたかった。
「確かに事の異常さは認めるよ。
でも私はそれについて関与はしていないさ」
やはり話してもらえないのか?
「先生、ルーメン枢機卿との関係を知っているのは僕たちだけではないですよ」
キリアンは爆弾を落とした。
「!
そうか、だとするとレオンハート様か…」
先生はなにやらブツブツと言っている。
「先生!知っていることを話してください!」
私は懇願した。
リーブス先生は向き直った。
「君たちの知っての通りの関係だよ。だけどね、愛情なんてものはひとかけらもない。
あるのは憎しみだけだ。
この怪我だってルーメン枢機卿にやられた!」
「!」
「どうして⁈」
「…エレニを神殿から連れ出そうとしたからだ。
枢機卿に見つかって鞭で打たれた。何回かの1回が運悪く顔に当たったんだ」
先生は顔に手をあてた。
「聖女エレニを?なぜ?」
「あの子は聖女なんかじゃない。
普通の女の子に戻すため遠くへ逃げようと」
ダンっ‼︎
先生は拳で机を叩いた。
「失敗だ…」
私はキリアンと顔を見合った。
「話すことはもうないよ。
出て行ってくれ」
私は黙っていた。
「…これじゃダメだな」
そう言ったと思ったらロレンス子爵邸を通り過ぎた。
「髪はボサボサ、ドレスは泥だらけ。
これじゃ驚かれる」
私が顔を上げると
「俺の家に行こうか」
「…うん」
バークレー家は商会事務所から少し離れた街中にあった。
「キリアン坊っちゃん、どこ行ってたんです?
執事が探してましたよ。
あぁララ様といっしょって…ララ様!
どうなさったんです⁈」
メイド長のメアリーさんに驚かれてしまった。
ほんとだ。
「街で転んだ。風呂に入れて少しはマシにしてくれ」
キリアンが言い終わらないうちにメアリーさんに連れて行かれた。
髪をきれいに結ってもらって、ドレスもどこから持ってきたのか新品を着せてもらって…
私はようやく人心地ついた。
「おっ、マシになったな」
「…うん」
「落ち着いた?」
「うん」
「腹、減ってないか?」
「朝から何も食べてない…」
ここで初めてキリアンが笑って
「メアリー、ララが朝から食べてないって」
「はぁーい、ただいまー」
…もう食事が用意されていた。
「そんな気がして風呂入っている間に用意させた。
アンディから連絡もらったんだ。だいぶ焦ってたよ。
何も食わずに王宮、神殿って飛び回っていたんだろ?」
私はガツガツ食べながら、この後のキリアンのお説教を聞いていた。
でも“何があったか話してみろ”のくだりになるとわんわん泣いてしまった。
それでも食べながら、泣きながら、神殿で起こったことを話した。
「はぁ、何やってんだか」
キリアンがため息をついた。
「なぁララ、『私だったらケイレブを連れ戻せる』とほんのちょっとでも思っていなかった?」
図星だ。
私が行けば、会えさえすれば、何とかなると思っていた。
なのに、エレニとふたりで行ってしまった。
「この件は根が深いんだ。
もっと慎重に行動しなくちゃ。
勝手に突撃して自信を砕かれちゃ世話ないだろ?」
おっしゃる通りです。
「で、今度は俺といっしょに突撃する」
「えっ?」
「ふたりでリーブス先生のところに行ってみないか?
殿下とアンディが何もしていないわけないんだ。
だけどあまり話には出てこないだろ?」
キリアンは少し考えて
「学園に行けば会えると思うんだ」
そうだわ、先生に会ってみたい。
すぐにでも会いに行きたかったが、そんな様子じゃダメだとキリアンが5日後にと設定した。
…私たちは今、アラータス学園に来ている。
「リーブス先生ですか?」
受付の人に面会を申し込むと思わぬ答えが返ってきた。
「5日前から無断欠勤してまして、今日やっと出勤したんですが、まぁびっくりしたことに」
少し言い淀んで
「あの、聞いてきます」
と言って奥に引っ込んでしまった。
しばらくして
「どうぞ、先生は研究室にいらっしゃいます」
許可がおりたので私たちは研究室へ向かった。
「やあ、いらっしゃい!
久しぶりだね。」
「「⁈」」
額から左目にかけて包帯をぐるぐる巻きにしているリーブス先生がいた。
「どうしたんですか?」
「いや…5日前、馬車で事故にあって…顔を怪我して」
なんだかしどろもどろでよくわからない。
「それよりケイレブのことでしょう?
私は何も知らないよ。
神学校を勧めたが、私と同じく教職につけばと思っていた。
まさか司祭になるとはね」
私たちが聞いてもないのに先生はまるで定型文のように話した。
私がどうしたものかと迷っていると
「先生はルーメン枢機卿とはどういうご関係ですか?
後見人のようですがなぜです?」
キリアンが直球勝負に出た。
「えっ、」
リーブス先生は明らかに動揺している。
「先生は神殿と深く関わり、ケイレブを取り込んで何かに利用しているんじゃないですか?」
キリアンがなおも続けた。
「…」
先生は否定しない、ただ黙っている。
「ティラーン教を否定しているわけではないのです。昔からの信仰ですから。
ただ今の有り様はあまりに酷い。
私の祖母も人生を狂わされてしまいました。
そんな人は他にもたくさんいます。
先生はこのことをどうお考えですか?」
私は先生の本心が聞きたかった。
「確かに事の異常さは認めるよ。
でも私はそれについて関与はしていないさ」
やはり話してもらえないのか?
「先生、ルーメン枢機卿との関係を知っているのは僕たちだけではないですよ」
キリアンは爆弾を落とした。
「!
そうか、だとするとレオンハート様か…」
先生はなにやらブツブツと言っている。
「先生!知っていることを話してください!」
私は懇願した。
リーブス先生は向き直った。
「君たちの知っての通りの関係だよ。だけどね、愛情なんてものはひとかけらもない。
あるのは憎しみだけだ。
この怪我だってルーメン枢機卿にやられた!」
「!」
「どうして⁈」
「…エレニを神殿から連れ出そうとしたからだ。
枢機卿に見つかって鞭で打たれた。何回かの1回が運悪く顔に当たったんだ」
先生は顔に手をあてた。
「聖女エレニを?なぜ?」
「あの子は聖女なんかじゃない。
普通の女の子に戻すため遠くへ逃げようと」
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先生は拳で机を叩いた。
「失敗だ…」
私はキリアンと顔を見合った。
「話すことはもうないよ。
出て行ってくれ」
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