守護の聖魔術師

第一話 悲劇

かつて平和の先進国であったこの国『アイリス』。
世界における人口割合、経済成長率も他国では比にならない程の成長国であり、三つの国が隣接した共和国でもある。
経済による格差の激しさが注目される中、アイリスだけは貧困層にも毎月一定の給付金が配布されるという支援制度も行われていた程だ。
それで救われた人々は多い事だろう。
そういった支援制度が諸々あるこのアイリスは何百年と続き、世界に知れ渡れ、他国からも住まいを持つようになる人も多く現れた。
それにより国は更に成長していくという好循環が発生し、遂には世界の幸福度ランキングで圧倒的一位を獲得する程にまで大きく成長を遂げた。
そんな平和で絶えないアイリスに居住を持つ人々は、この生活が永遠に続くように思われていた……。

しかし、悲劇は起こってしまう。



––––––『聖魔戦争』。



それは聖族と魔族の争いにより起こった戦争である事からそう名付けられるようになった。
アイリスには代々子孫繁栄が絶えず、現在まで多くの人々が生き残り続ける一族がある。

それが『聖族』と『魔族』の二つ。

この一族同士は命の奪い合いをする程水と油の関係であり、決してお世辞でも仲が良いとは言えない関係だ。
そして後に、怒りと憎しみの情が抑えきれなくなった一族は、アイリスの平和を壊す程の大規模な戦争まで発展させてしまい、関係ない人々を巻き添えにしたのもあってか多くの被害者を生み出し、怒りと哀しみだけをもたらせた。

こうした長きに渡る戦争は、アイリスの平和に終わりを告げたのだ––––––。



––––––そして終戦から百年。



アイリスは平和時代の繁栄と経済成長を少しずつだが取り戻しつつあった。

それと同時に、力も欲するようになってしまった。

アイリスのトップに立つ『栄王』はその声に応えるべく、自己防衛の為に『武神』という強力な魔術を扱えるようになる為の『アルマの契約書』を全人々に配布する事を実行した。


それが悲劇の再来に繋がる事を知らずに……。