守護の聖魔術師

御船ノア

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第二話 守護の聖魔術師

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アイリス闘技場––––––。
ここはアイリス防衛隊が管轄している闘技場の一つ。

俺は今からここで、防衛隊に入る為の入隊試験が行われる。
入隊試験の内容はたった一つ。

『一対一形式で––––––相手を倒すか、降参宣言をさせるか』のどちらか。

ここで勝利した者が晴れて防衛隊に入隊する事が出来るのだ。
「では66番の方、どうぞお進み下さい」
闘技場の入り口手前で待機していた俺は試験監督に進むよう促され、落ち着いた歩みで闘技場内へと足を踏み入れた。
「おぉ……! 実際入ってみると迫力があるなぁ!」
ドーナツ型の闘技場の中心に立つ俺を迎えてくれたのは晴天の青空と大勢の観客達。
観客席の角四つ部分には目元にカメラ機能が搭載された人型ロボットが設置されていた。
四月に入ったばかりの日差しは暖かく心地良い。
その効果もあってか、観客達も気分が高揚していて盛り上がっていた。
この入隊試験は年に一度しか行われない為、いざその場に立つと過度に緊張してしまっている自分がいる事に気付く。
––––––いや、これは緊張というよりも、興奮に近いか。
ここまで鍛えてきた自分の力が果たしてどこまで通用するのか。
当たり前の話だが、この場に現れる相手は全力で向かってくる。
その全力を俺はねじ伏せる事が出来るのか、それを試したくて仕方が無いのだ。
「では30番の方、どうぞお進み下さい」
俺の出てきた入り口とは反対側の方から試験監督の声が聞こえた。
どうやら、俺の対戦相手が現れるようだ。
因みに、この入隊試験は当日まで対戦相手の情報が与えられる事は一切無く、試験監督によるランダムで振り分けられる。
そこに実力や性別など関係無い。
フェアな勝負にする為に相手への対策を取らせないという目的もあるのだが、それよりかは未知の相手に対して柔軟に対処するという目的意識が強いと思われる。
防衛隊として活動すれば未知の相手と戦う事にもなるからだ。
「……あなたが私の対戦相手ですね。本日はよろしくお願い致します」
俺の前に姿を現した銀髪少女が軽い挨拶を交わしてくる。
「ああ。よろしく頼むよ」
相手に敬意を示すようにと握手を交わす。
初めて握った女の子の手はお世辞にも防衛隊希望とは思えない程小さくて柔らかく、赤ちゃんのように可愛らしい手だった。
「私の名前は『アリル』。生まれも育ちも聖族である者です。お互い悔いの残らないよう全力で戦いましょう」
まさか『あの聖族』だったとは……。これは女の子だからといって油断は出来ないな。
その闘志に燃えた黄金色の瞳には自分が負ける事は微塵も思っていないようだ。
それは油断しているとか、相手を甘く見ているとかではない。
俺と同じで、全力の相手に対して自分の力がどこまで通用するのか、それを期待している感じだ。
「俺の名前は『カイ』。特に紹介出来るような事はないけど、悔いの残らない良い勝負にしよう」
お互いの挨拶を終えた所で試験監督が間に立ち、改めて試験の説明を始める。
「ではこれより、入隊試験を始めたいと思います。対戦は66番と30番。相手を倒すか、降参宣言をさせた方の勝者となります。『武神』の使用は許可しますが、それ以外の道具の使用は一切禁止です。もし使用した事が発見された場合、その時点でその者は失格となりますので注意してください。制限時間は20分。時間内に決着が付かなかった場合は両者失格扱いとなりますので、そちらも注意しながら挑むよう心掛けてください。残り時間が五分になりましたらこちらの方からコール致します」
どれも事前に確認済みの内容そのままだった。
「説明は以上になりますが、何か質問のある方は?」
「ないです」
「ありません」
確認後、試験監督は片手を上げて開始合図の準備にかかる。
それと同時に、俺とアリルも向き合いながら身構える。
「それでは––––––始め!!」


     ★


開始の合図と共に両者大きく距離を取る。
その後、『武神の名前』を呼び始めた。
「来い––––––ヤヌス」
「来て––––––織姫」
両者の足元に魔法陣が出現し、それぞれ武神を手にする。
魔法陣は武神を手にすると何事もなかったかのように消失した。
カイの両手には革性の手袋が装着されており、アリルの右手には銀色の剣が握られていた。
「……それがあなたの武神ですか。もっと物騒な物が現れると思いました」
「そっちこそ、織姫という可愛らしい名前の割には随分と物騒な武器なんだな」
手袋と剣、どちらが物騒なのかは火を見るより明らかだ。
見た目だけで判断したら剣の方が強いに決まっている。ギャラリーの人達も何処か拍子抜けしていて、この勝負は決まったなと勝手に思っていそうだ。
だが、武神を見た目なんかで判断してはいけない。
武神の恐ろしい能力は『中身』にあるのだから。
「そのような不気味の武神は正直に言って初めてお目に掛かりました。どんな能力なのか楽しみ––––––」
「!」
突如、アリルの姿を見失う。
「ですね!」
いつの間にか俺の背後に回り込んでいて、既に薙ぎ払いのモーションに入っていた。
このままだと俺の体は一刀両断にされてしまうだろう。だが––––––。
「なっ!?」
俺は振り返りもせずに、片手だけで剣を受け止める。
剣の先を掴まれたアリルは振り解こうとするが、俺の力に抑えられ抜く事が出来ないでいる。
それでも抵抗しようと試みるが、ギチギチと剣を小刻みに揺らすのが精一杯だった。
その一瞬の出来事に観客達はどよめく。
「おいっ、お前ならさっきの攻撃防げたか?」
「ばか言え! あんなの反応出来るわけないだろ! 俺だったらとっくに真っ二つになっている!」
「だ、だよなぁ……。俺もあれは反応出来る自信はねぇ……」
「……いーや、大半の人はそれが普通だ。そもそも聖族の攻撃を防いでいる時点であのカイって奴が異常なんだよ……」

聖族で生まれ育った者は信仰的観念から代々伝わるとされる『武術』を習得させられる。
元々聖族が生み出した伝説の武術であり、『心・技・体』の三つの要素から成り立っている。


心……精神統一による気配の察知
技……戦闘における攻防の構えと動き
体……強靭な肉体作り


アリルが一瞬にしてカイの背後に回り込めたのは『体』が、背後に回り込んだ勢いを殺さず攻撃に活かせたのは『技』が、カイが攻撃に反応出来たのは『心』が関係していると思ってくれれば良い。
ここで言いたい事は、『聖族はこの三つの要素が比較的高い水準にある』という事。
「くっ」
アリルは剣が抜けない事から苦し紛れに俺の溝辺りを狙った左蹴りをかましてくる。
俺は仕方無くその攻撃を軽く払った後、態勢を整える為に一旦距離を置く事に。
「……まさか防ぐとは思いませんでした。お強いのですね」
「いや、間一髪だったよ。一瞬でも反応が遅れたら俺の負けだっただろうな」
「…………」
アリルが再びカイに突っ込んで行く。
今度は背後を取るのではなく、敢えて正面から。
これまで自分が鍛え上げてきた武術を全てぶつけるべく、殴りや蹴り、手刀なども用いて左右上下、時にはフェイントを入れたりして攻撃し、隙を誘おうとするが……どれもこれも上手く防がれてしまう。
(このカイっていう人、只者じゃありませんね。私の武術をこうもあっさりと防いでしまうとは……)
アリル自信、手加減は一切しておらず、最初の背後に回る所から現在まで全力で仕掛けていた。
薙ぎ払いも当然真っ二つにするつもりは毛頭無く、首元を捉えてフィニッシュを迎えるという算段だった。
それが覆された事により、聖族としての自信がかえって焦りを生んでしまう事に繋がる。
俺はアリルの攻撃を躱しつつ、隙を見つけた所で両肩を思いっきり突き放した。
「くっ!」
軽く壁に叩きつけられるアリル。
顔を歪ませ、僅かだが額には汗が滲み出ていた。
「……あなた、聖族の者ですね?」
アリル自身、ここまで完封されてしまっている事実に聞かずにはいられなくなったようだ。
「いや、分からない」
「分からない……?」
自分の予想していた返答とは違った事に困惑してしまうアリル。
もし素直に聖族と名乗り出れば自分の武術がここまで完封された事に納得がいったからだ。
カイは最初の自己紹介で聖族とは名乗り出ていなかった為、もう一度さりげなく聞いてみたものの……本当に分からない様子だった。
取り敢えずは、このカイっていう男が只者では無いという事だけは理解する。
「あなたの武術は聖族にも劣らない程、常人の域を超えている事が交えて感じました」
「聖族の人に褒められると、ちょっと恥ずかしいな」
「ですが––––––『魔術』はどうです?」
「!」
すると、アリルの剣に光が帯びる。
剣の周りには小さな星屑達が現れ始め、剣の周りを動きながら纏まり付いている。
「星、か」
「そうです。私の武神、織姫の能力は『星』。この力であなたを倒します!」
相手が武神、即ち魔術を使ってくるとなると、こちらも使わずにはいられなくなる。
「なら俺は、対抗するだけだ」
「……いきます! ––––––星の煌めき––––––」
アリルが剣を払うと、纏まり付いていた星屑達が勢いを増して無数に襲い掛かってくる。
俺はその場から移動する事なく、右手を伸ばし立ち尽くす。
無数の星屑達との衝撃により、闘技場内には砂煙が舞った。
その砂煙により観客達は勿論の事、アリルも視界が奪われる。
全員目に砂が入らないようにと顔の前で手を覆うなか、『一人だけ』平然と立ち尽くす者がいた。
やがて砂煙が落ち着くと、アリルは目の前の光景を目にして度肝を抜かれる。
「––––––なっ!?」
「星の煌めき……。数多くの星屑達を自分が思うままに動かす事が出来る、と言った所かな?」
分析出来た時間は一瞬しか無いので、推測でしか無いが……。
「な、なんなんですか……! その技はっ」
「これが俺の武神、ヤヌスの能力––––––絶対防御––––––だ」
俺の周りには縦横五メートル程のバリアが張られている。
このバリアこそが絶対防御であり、その名の通り全ての攻撃を防ぐ。
「絶対……防御……っ」
「ああ。技の名前から察したと思うけど、このバリアで星の煌めきを防いだ」
バリア周辺の地面は星屑達によって凸凹になっている。
もしこのバリアを使わなかったら俺もこうなっていただろうな。
それ程アリルの技は強力だった。今回は俺の防御力がアリルの攻撃力よりも上まっていただけのシンプルな結果だ。
「なるほど、バリアですか。––––––なら、それを壊すだけです!」
アリルは再び星の煌めきを使用し、攻撃の手を止める事なく打ち続けて来た。
狙いは俺のバリアの耐久力を削るといった所か?
それとも、わざとバリアを使用し続け、俺の体力を削るのが狙いか?

武神を用いた技をこの世界では『魔術』と呼ぶのだが、その魔術を使用するには『ATP』という魔力を供給しなければならない。
魔力は己自身に存在する潜在的なエネルギーであり、体力同然でもある。
つまり、体力を鍛え続ける事は使える魔力の潜在的量が増えるという事。
逆に魔力を使用し続ければ体力までも消耗するので魔力切れとなり、魔術は使用出来なくなる。
アリルは聖族の者である為、体力には自身がある事だろう。
未だに猛攻の手を緩める事ない所から見て、狙っているのは俺の体力切れか。
その過程でバリアが破れたら御の字という所だろう。
星の煌めきは四方八方から不規則に襲い掛かってくる為、俺自身逃げ場は無く、絶対防御を引っ込める訳にはいかない状況に陥ってしまっている。
生憎と、俺はこれ以外の技を持ち合わせていない。

これはつまり、どちらが先に魔力が尽きるかの勝負。

流石に聖族のアリルでも、魔力を使用し続ければいずれ尽きる。
その証拠に、息が上がってきている。
「はぁ、はぁ……くっ!」
これだけの攻撃を続けても、未だに破れそうにもない絶対防御。
その名は伊達ではない事をアリルは痛感し始めているに違いない。
このまま今の攻撃を続けても、絶対防御を破るのは不可能だと。
現状、アリルの息が上がり始めているのに対し、俺は平然としている。
このまま続けば、先に体力が尽きるのはアリルだろう。
それは本人も理解してあるはず。
だからか、急に猛攻の追撃が止んだ。
(……攻撃をやめたか。今が攻めるチャンスだな)
俺も体力温存の為にバリアを引っ込め、アリルを探す。
闘技場内には星屑達の追撃によって砂煙が最初の時よりも濃く発生してしまっている為、視界がぼやけてしまっているのだ。
視界がぼやけている以上、頼りになるのは気配の察知のみ。
いつ、どこから攻撃がくるかも分からない為、警戒は怠らない。
(……妙だな)
アリルの気配が感じ取れない。
この広くも狭くもないこの闘技場内の範囲であれば気配を察知する事ぐらい容易い筈なのに……。
程なくして砂煙が収まったと思ったら、俺は不思議そうに驚いてしまう。
「いない……?」
そう。闘技場内にアリルの姿が無いのだ。
(逃げた? いや、そんな事をするようには見えなかった。なら隠れているのか? いや、闘技場内に人の気配は無い……どこに行った?)
キョロキョロと探す中、俺は『観客達の視線の先』を見てようやく気づいた。
「上か」
そう。アリルは高く跳び、闘技場を遥かに超える位置から既に攻撃を仕掛けてきていた。
剣には見惚れてしまう程の膨大な星による光を帯びていて、見るからに凄まじい魔力が使われていた。
恐らく、あの一撃に全てを託す気だ。
俺も思わず緊張と興奮が入り混じった高揚感に襲われ、固唾を吞んでしまう。
「これで終わりですッ! ––––––星剣エクスカリバー!!––––––」
「––––––絶対防御ッ!––––––」
バリアと剣がジリジリと音を鳴らしながらぶつかり合う。
頭上からの勢いもあるのか、これまでの攻撃とは比にならない程、強力な一撃。
ちょっとでも油断をしたらこの絶対防御は破れてしまう事だろう。
それだけ、この一撃にアリルの想いが集約されているような気がした。
でも、こちらとしても負ける訳にはいかない。
相手の全力に対して、こちらも『それだけの』力で応えるのが礼儀というものだろう。
俺は張っているバリアに対し、更に魔力を供給した。
破れつつありそうだった僅かのひびが魔力によって修復し始める。
「なッ!? まだこれだけの力を隠して––––––」


––––––キンッッッ。


金属が弾かれたような音が闘技場全体に響き渡る。
その金属とはアリルが手にしていた剣。
弾かれた剣は空中で周りながら後方に飛んで行く。
そして剣が地面にグサっと刺さる。
その剣の果てを目にしたアリルは自分が負けたのだと、全力の攻撃が通用しなかったという受け入れ難い現実に立ち尽くす事しか出来なかった。
俺はバリアを引っ込める。
勝負の行方は……見るからに明らかだったからだ。
観客達も、試験監督も。この場にいる全員がそう思った。
「の、残り五分……」
試験監督が腕時計に目をやり、残り時間を告げる。
俺達は十五分も戦闘を行っていたのか……。
今思えば時間への意識はとうに忘れていて、相手の動きやその対応に意識が向いてしまっていた事に気付く。
時間を意識するという余裕を感じさせないぐらいに、アリルという少女は強かった。
流石は聖族というべきか。他の選手が相手にしたら、アリルに勝てる者はどれほどいるのだろうか。
それぐらいにアリルは強かった。
自分の強さを確かめる為にも『二人目の相手』がアリルで良かったと心ながら思う。
両者共に動かずにいると、勝負はあったと思ったのか、試験監督は試合終了の合図をしようと––––––。
「まだです」
「えっ?」
試験監督が驚く。いや、俺もだ。
剣も封じられ、ましてや得意の武術までも封じられたなかで、アリルの勝利は見えなかったからだ。
一体、何が『まだ』というのだろうか。
「勝負はまだ、ついていません」
そう言い、俺に向けてきた目には諦めを感じさせない強い闘志の炎が宿っていた。
それは強がりや偽り等ではなく、本物だった。

––––––その時だった。

「っ!」
突如、俺の両手足に何か絡まった。
「……星?」
地面から生えるように伸びたそれは星屑だった。
それは星の煌めきで使っていたのと全く同じ物。
「油断しましたね。星の煌めきは何も剣を手にしている必要はないのですよ。一度能力を使えば、武神を引っ込めない限り、消滅する事はありません」
「なるほど。砂に星屑を潜めていたってわけか」
全く違和感を感じなかった事から、上手くばらけさせていたのだろう。
一つの箇所にある程度の星屑が集まっていたら、踏んだりした時に気付かれるからな。
「その通りです。私が上からの襲撃を行ったのも地面から気が逸れるようにする為です。もちろん、エクスカリバーで決着を付けようとは思っていましたが」
「となると、これは決着が付かなかった時の『保険』ってわけか」
「そうなりますね。出来れば使いたくはありませんでしたが……」
アリル自身、魔力の使い過ぎで体力がキツいのは明白。
その証拠にここまで平静を装っていたが、ついには座り込んでしまう。
歩くのは愚か、立っているのさえままならないのだろう。
「––––––それで? この後はどうするんだ? 見た感じ星屑は使い果たしている。疲労から見て新たな星屑を出す魔力も無い。この星屑達も分解する訳にはいかないだろ?」
当然、星屑達を分解すれば力も分散してしまう。
今のアリルはこの量の星屑で何とか抑えている現状だ。
もしちょっとでも緩めるような事があれば、体力の余っている俺に強行突破させられる恐れもある。
つまりは、捕まえたのは良いが、攻撃する手段を持っていないという事だ。
勿論俺自身、降参宣言をするつもりはない。
「……ふふっ。もう既に、準備は整っていますよ」
「なに?」
アリルが空を仰ぐ。
俺もつられて空の方へと顔を向ける。
「……なるほどな」
空からはキラキラとした物が数多くこちらに向かって降り注いで来ている。
隕石やUFOなんかではない。
あれは––––––。
「星の煌めき……」
そう。こちらに降り注いで来ているのはアリルの技の一つ––––––『星の煌めき』だった。
おまけに、最初に比べるとかなりの量だ。
「驚きましたか? エクスカリバーを使用する際、頂上に上がった際に仕込んでおいたのですよ。––––––この時の為に」
広範囲に降り注いでくるそれは、逃げ場を与えないかのように闘技場全体を狙って…………全体? ––––––いや、ちょっと待て!
「おい、アリル! あのままでは他の人にも危害が!」
「––––––ハッ! しまった!!」
魔力の使い過ぎで意識が朦朧としていたアリル。
気付いた時には既にそこまで迫っていた。
アリル自信、このような展開は望んでいなかった筈だ。
最初に星の煌めきを使用した時は自分の手足のようにコントロール出来ていた。
つまりはこの攻撃も俺に向けての筈だ。
だが想定外な事に戦いは延長し、結果的に魔力を使い過ぎてしまった。
今のアリルは魔術をコントロール出来る程の気力と体力が残っていない事から、このような事態が発生してしまった。
そこに悪意は無いという事だけはしっかりと理解しなければな。
「おい! こっちに向かってくるぞ!!」
「誰か! 誰か助けてくれー!!」
「無理だ! あんな広範囲のもの防げるわけねぇ!!」
観客達が悲劇の叫びをしながら慌てふためく。
星の煌めきを直で受けたら致命傷は避けられない事だろう。
場合によっては死者も出してしまう。
そんな死に直結する絶望を急に迎える事になるなんて誰が予想していただろうか。
闘技場が歓声から悲鳴に変わる中、一人だけ絶望に浸っていない者がいた。
「カイ……くん?」
「多分、何とかなると思う」
俺は手足に纏まり付いている星屑達を強引に引き離す。
「––––––なっ!」
無残に千切れた星屑達を見てアリルは未だに信じられない様子であったが、今はそこに触れている場合ではない。
一刻も早く、みんなを守らなくては!
「––––––絶防防御––––––」
今度は『右手』だけではなく『左手』も使用。
すると、今度は俺のみならず、闘技場全体を包むバリアが張られる。

キンッキンッキンッ––––––。

頭上から物凄い勢いで降り注いでくる星屑達はバリアによって弾かれた。
全ての星屑達を防いだ事を確認し終え、俺はバリアを引っ込めた。
「……これで何とかなったな。––––––アリル、もう星屑は無いよな?」
「……はい。あ、ありがとう、ございます……」
一瞬の出来事に観客達も何が起こったのか腑に落ちない様子。
「お、おいっ。俺達、助かった、んだよな?」
「……ああ。俺、チラッと見たんだけどよ、何かバリアが張られて、それで助かったみたいだぜ?」
「バリアって……確かあのカイってやつの技だよな? いや、そんな事あり得るのか!? こんなデケェ闘技場にバリアを張るには相当な量の魔力が必要になるだろ! 防衛隊でも無い奴がそんな芸当出来るとは思えねぇ!」
「出来ねぇも何も……俺の見間違いじゃなければ、確かにカイって奴の技だったぞ」
「……仮にそうだとして、そんだけの魔力があるとしたら……そいつは––––––『魔族』としか考えられないぞ」
「それはないだろ。魔族は『第二次聖魔戦争』で滅びた筈だ」
「じゃあ、あいつは一体何者なんだよ。聖族とも武術で張り合えてたし」
「それは分からねぇ。ただ一つ言える事は俺達を救ってくれた救世主、っていう事だ。そこに聖族だろうが魔族だろうが些細な事だ」

『魔族』というのは武神を生み出す為に必要な『アルマの契約書』を作った一族。
元々は聖族に対抗する目的で作られた代物で、禁忌に触れているのを承知の上だった。
潜在的魔力を多く所持している魔族にとって有利になるように作られた物である為、魔族による魔術の技と威力、その範囲までも比較的高い傾向にある。
カイが闘技場全体にバリアを張れたのはその潜在的魔力の多さゆえに実演出来た事。
ここで言いたい事は、『魔族はこの魔力が比較的高い傾向にある』という事。
俺の絶対防御を目にした者は皆、魔族の者だと最初は思う事だろう。
武術は聖族、魔術は魔族。生まれや育ちによって特化する部分も変わってくる。
聖族や魔族以外にも、こういった何かに特化する一族、または個人の能力として現れる場合もある。
言ってしまえば、聖族や魔族でなくとも、武術や魔術を超える事は可能であるという事。
そうなる為には日頃から底知れぬ鍛錬を続けないといけないだろうな。
試験監督は先程までの一連のを見て、時間を確認するのを忘れていた。
場が落ち着き、我に帰って腕時計に目を向けた時には既に試合時間は過ぎていた。
戦闘中に起こってしまったちょっとしたハプニング。
この状況を見て試験監督はどうジャッジするのか迷っていたが、イレギュラーの部分もあったので、その事もしっかりと踏まえた上でジャッジして貰いたいものだ。
「ええ、試合の結果ですが、時間切れにより––––––両者失格とみなします」
「で、ですよね~……」


     ★


入隊試験が無事終了(色んな意味で)し、渋々と帰路に立つ俺だったが、背後から知らない女性に声を掛けられる。
「ちょっと待って」
「ん? あれ、アリル?」
振り向むくと、アリルと知らない一人の女性が迎えてくれた。
その女性はモデル活動していてもおかしくない程綺麗な容姿をしていて、サラサラのロング銀髪と黄金色の瞳をしている。
隣同士で立つ二人を見て、思わずアリルのお姉さんかなとも思ってしまう。
違いがあるとすれば、アリルがパッチリとした可愛い瞳に対し、この女性はシュッとしたかっこいい瞳をしている所だろう。
後、身長もアリルより一回り大きい。
そんな二人を見比べていると、アリルの隣にいる女性が声を発した。
「唐突にごめんなさい。私はアリルの姉、名を『プロラ』と言います」
これは驚いた。まさか本当にアリルのお姉さんだったとは……。
俺が困惑しているとプロラは続けた。
「おとう……コホンっ。アロン様から二人を呼び出すよう命じられました。誠に急で申し訳ございませんが、アロン様の元までご足労願いますか?」
礼儀正しく丁寧な言葉遣いでお願いを申すプロラ。
しかしこれはまた驚いた。
『アロン』という人は、ここスリミラル共和国の一つ、アイリスの頂点に立つ『栄王』の一人。
権力は勿論の事、実力に関しても右に出る者は誰一人いないと恐れられる程の実力者だ。
そんな国を動かせる程の人が俺とアリルを呼び出すとは一体……。
二人が共通している部分があるとすれば、さっきの闘技場の一件だけだが……。
考えても仕方がなく、どのみちこの後の予定は特に無い為、承諾する。
「分かりました」
「ありがとうございます。––––––では、私に付いて来て下さい」
俺はプロラの後に続いてアロン様の元まで歩いて行った。


     ★


アイリス防衛隊が活動の拠点となる城内に連れてこられた俺はその大きさに目を奪われる。
その城は何千人の人が住んでいてもおかしくない、と思わせる程の巨大建築物だからだ。
実際、防衛隊として活動する際はこの城内で住む事になっている。
理由としては何か緊急事態が発生した際に直ぐに出動出来るようにする為だ。
緊急事態の基準は不明だが、例えるなら大規模となった聖魔戦争か。
それに匹敵、もしくはそれに近い規模の事件が起きたのであれば緊急事態命令が発せられる事だろう。
防衛隊は国や町の治安を守る事を目的として作られた特殊部隊。
誰かの助けが必要ならば、率先して向かう意志が求められる。
事件はいつ起こるのか予測などつかない。
だから仲間達と同じ屋根の下で過ごし、備えておく必要があるのだ。
そんな場内の広さにも感動をしていると、あっという間に目的地に着いた。
「アロン様、二人をお連れして参りました」
着いた場所は一つの大きなドア前。
この中にアロン様いるという事だろう。
「ご苦労。入って構わないぞ」
男の声が入室の許可を出す。
それを確認すると、プロラは一枚のカードを取り出し、ドアの横に設置されていたセキリュティらしき機械にかざす。
––––––ピッ、と音が鳴ると、ドアが自動で開き始める。
どうやらカードをかざすと部屋が開く仕組みらしい。
「失礼します」
俺とアリルも続いて頭を軽く下げて入室する。
部屋の中は広いものの、置いてある物は至ってシンプルだった。
社長室で良く見かけそうなでかい机に背もたれが長い革製の椅子、コート掛け、やや大きめの観葉植物が一つ置いてある程度。
他にも置くスペースがあるのに置かないのは節約主義である為か、仕事に関係の無い物は置かない主義か。
とにかく感じる事は、律儀で真面目な性格という雰囲気が何となく感じるという事。
「急に呼び出してすまない。二人にはどうしても伝えたい事があるのでな」
(伝えたい事?)
「まずは試合の方、お疲れ様。二人の戦いは見させてもらったが、実にレベルの高いものであった」
何か叱られるかと思いきや、まさかの褒め言葉であった事に心がくすぐられる。
「だが結果は時間制限による両者失格。二人の実力はそれだけ拮抗していたと言えよう」
「––––––っ」
アリルが悔しさを噛み締めるように唇を噛んだ。
「……いえ、彼の方が実力は上です。私の攻撃が全て通じなかったうえ、私が起こした失態を、彼は大勢の人達を守って見せました。私の、完敗です……」
目を伏せてしまうアリルには、先程まで堪えていた悔しい想いが露骨に顔に現れていた。
「……うむ。確かに入隊試験は防衛隊を選抜する為の選手同士の戦い。そこに関係の無い人達を巻き込んでしまう事はあってならない事だ。その事は重々反省をしてほしいと思う」
「……はい。申し訳ございませんっ」
「いえ、ちょっと待って下さい」
「「「!」」」
三人が一斉にこちらを向く。
「さっきの試合、本来なら負けていたのは俺です。もし戦っている場所が闘技場ではなく、観客達のいない二人だけの場所であったのなら状況は変わったはずです。つまりは、作戦の罠に上手く誘い込んだアリルの方が上手だと俺は思いました」
アリルは隣で何を言っているんだという目をしているが気にしない。
「なるほど。両者の意見はごもっともだ。この場に置いて譲り合いの精神とは実に微笑ましい事だな」
アロンは一瞬だけ薄い笑みを浮かべた。
「だが俺はどっちの方が実力が上だとか、勝利したのかなどを伝えにここに呼んだわけではない」
「え?」
「是非とも––––––防衛隊に入ってはくれないだろうか」
急な衝撃的の発言に俺とアリルは度肝を抜かれた。
「でも俺達、さっきの試合で失格になってしまったんですが……」
「それなら『推薦入隊』として扱えばいいだけだ。これは正式に認められている制度だ。俺が推薦すれば誰でも入隊出来る。まぁ、それだけ説得のある証拠を提示しなければならないがな」
「証拠を提示って、一体何を提示するんですか?」
「ああ。それを今から見せようと思う」
どうやら既に準備はしてあるらしい。
俺達を呼んだのは始めから推薦入隊させる為の話をする為か。
アロンは机の上に置いてあったタブレットを持ち、画面をこちらに見せてきた。
「アリル……?」
画面左上にはアリルの顔と名前、その横には星の聖魔術師とアルファベットのBという文字、画面下半分には武術と魔術のそれぞれに帯グラフが付いてあった。
「これは先程の入隊試験での試合を元に、AIが分析した個人のステータスを表したものだ」
「AI……。確か、闘技場にあった四つの人型ロボットの事ですか?」
「その通りだ。よく気付いたな」
目元にカメラらしき物が備え付けられていたが、分析する為のものだったか。
俺とアリルの戦いを事細かく映像として記録し、ステータスを分析していたに違いない。
そして分析した結果はあのタブレットに自動的に送られる仕組みといったところか。
アロンはタブレットに指をさしながら説明をしてくれた。
「この説明は入隊後にもするが、折角だから今説明させてもらうぞ。––––––既に大方理解したと思うが、画面にはアリルの顔と名前がある。つまりは、この画面にはアリルの情報が記載されているという事になる」
誰の情報なのかは顔と名前を見れば一目で分かるという事。
「そしてその横にある『星の聖魔術師』とアルファベットの『B』という文字が書いてあるが、これは聖魔術師としての『称号』と『ランク』だ。称号は武神の能力から、ランクは武術や魔術の使い方や強さの総合評価から算出されている。因みにランクはD~Sの五段階評価で決まる」
アリルの武神は『星』を使った能力である為、星の聖魔術師という称号が与えられた。
ランクにおいては武術や魔術の使い方や強さの総合評価と言っていたが、具体的に何を何処に焦点を当て、何を基準に分析しているのかは分からない。
『総合』というぐらいだから使い方から応用、潜在能力といった事細い部分から導き出された評価と考えられる。
アリルが五段階評価のうち、三番目であるBランクというのは正直意外だった。
あれ程の実力を持っておきながらもBとなると、最後の星の煌めきによる失態がマイナス評価へと響いたか。
あと少し魔力を温存した戦いが出来ていれば評価はまた違っていたのだろう。
それはアリル自身、痛感しているはずだ。
「最後に下の武術と魔術の帯グラフだが、それはどれだけ極めているかのグラフになる。グラフの中心部分には線が引かれているが、それは平均値を表している。アリルは武術と魔術。共に平均値を超えているな。だが魔術の帯グラフは平均寄りだ。つまりアリルの課題は魔術の習得という事になるだろう。これらはあくまでも参考程度として見てくれれば良い」
つまりはタブレットに載っている情報は一概に100%正しい結果とは言えないという事だ。
精密に分析されている事から99・9%正しい事は言えるだろうが、もしかしたら0・1%の確率で間違っている可能性だってある。
何せ機械だからな。時には誤作動を起こしてしまう事だってある。
アリルはタブレットには一瞬だけしか目を向けず、その後は現実から目を逸らすように俯いてしまっていた。
握り拳をプルプルと振るわせていることから相当悔やんでいるのが分かる。
その姿に気付いたアロンは励ましの声を掛けた。
「アリル、そんなに悔やむ事は無い。これまで入隊試験で合格した者達の殆どはDとCランクばかりだ。Bランクと評価されただけでも喜ぶべきだ」
「……ありがとうございます」
それでもアリルの気が晴れる事は無い。
自分はこんは筈じゃない、と認めていないかのように。
アロンはこれ以上触れるべきではないと思ったのか、俺の話へと移った。
「次はカイ、だったな。お前は特に興味深い評価だったぞ」
「え?」
アロンはタブレットを操作し、俺の評価が映っている画面へとシフトした。
「これを見てみろ」
タブレットを見せつけてくるので、少しだけ前屈みになりながら興味深そうに画面を見る。
「えっとぉ…………あれ? 何これ? 『エラー』?」
そう。俺の画面には名前と顔、称号以外の項目が全て『エラー』と表示されているのだ。
アリルの画面はしっかりと記載されていただけに不気味さも感じた。
「そうだ。お前の評価は全てエラーと表示されている。これが何を意味するのか、正直我々も検討もつかない。このような評価がされたのは過去に一度も無い」
そんな異例の事実に俺も驚きを隠せない。
「これは俺の持論だが、恐らくカイはAIでも分析しきれない『何か』を秘めていると見ている。それは我々防衛隊にとっては期待の新人と言えるだろう」
何故こうなったか知らないが、俺は秘められた力を持っていると勝手に結論付けられて腑に落ちないでいる。
でも、AIがそう分析したのなら、そうなのかもしれない。
俺があまりにも弱者過ぎてエラーと表示されたという事は考えづらい。
何故なら俺はそれなりにアリルと渡り合えていた実感がある。
そんなアリルとほぼ同等であってもおかしくない俺だけが、エラーと表示されるのはおかしな話だからだ。
「機械が故障していたという事は?」
「いや、それはない。こちらも一度機械のメンテナスをしたが、どこにも異常は見られなかった」
「……そうですか」
となると、AIが分析した俺の評価は正しい(?)と考えるのが妥当か。
「何か秘めているって言われても、俺自身何も分からないのですけど」
「うむ。さっきも言ったがこれは私の持論だ。間違っている可能性だってある。それに、何も秘めたる力を持っているからといって、それを発揮しろと言っているわけではない。あくまでもその可能性として我々と共に防衛隊の一員として協力をお願いしたいだけだ。––––––どうだ?」
つまりは、純粋にそれだけの実力がある者を失格で見放すのは勿体ないから、即戦力として防衛隊に入ってくれ、という事か。
入隊試験を受けた俺達にとって断る理由は一切無い。最初から防衛隊に入りたくて入隊試験を受けたのだから。むしろ喜ばしい事だ。
「はい! 喜んで」
「うむ。アリルもそれで大丈夫か?」
「はい、よろしくお願いします……」
「よしっ、これで二人は合格扱いとする。よって、君達二人は明日から防衛隊の一員だ。明日午前9時に今日行った闘技場入り口前に集合するように。––––––以上だ」
呼び出しの件はこれにて済んだのだろう。
アロンから退出の許可を頂いた所で俺達は帰路に立つ。


こうして––––––『守護の聖魔術師』は誕生したのであった。
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