元悪役令嬢、学園追放後に王太子一家を全員ざまぁします

由香

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第二章 辺境の再起

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 王都を追放されたその日から、私はひとり馬車で北の辺境へ向かった。
 馬車の窓の外には、どこまでも広がる灰色の荒野。
 冷たい風が頬を打つたびに、胸の奥の痛みが少しずつ凍っていく。

 王都では、私は「悪役令嬢」として嘲られた。
 だがこの辺境では、誰も私を知らない。
 ――ようやく、仮面を脱ぐことができる。

 辿り着いたのは、国境近くの小さな村だった。
 崩れかけた屋根、痩せた土地、そして怯えた目をした人々。
 王都の繁栄とはまるで別世界のような貧しさ。

「ここが……私の新しい居場所、ね」

 嘲るように呟いたが、心の奥では小さな炎が灯っていた。
 この地なら、誰にも邪魔されずにやり直せる。
 ――そして、復讐の礎を築ける。



 屋敷代わりに与えられた古い塔は、誰も寄りつかない廃墟だった。
 だが、私はそこに奇妙な“力”の気配を感じた。
 夜、蝋燭の明かりのもとで古文書を読み解いていくうちに、胸の奥がざわめき始めた。

「……この紋章……どこかで……」

 眠りに落ちた瞬間、頭の奥で光が弾けた。

 ――ああ、思い出した。

 私は見知らぬ光景の中にいた。
 巨大な城、金の王冠、群衆の歓声。
 そして、自分の名を呼ぶ声。

『リュシア王女……!古の王国に光を!』

 その声が、私の中で重なる。
 リリアナと、リュシア。
 ふたつの名が溶け合い、ひとつの真実に変わる。

「……私、だったのね」

 かつて滅びた古代王国の王女。
 裏切られ、封印され、時を越えて転生した存在。
 私の魂は、千年の時を経てこの身体に戻ってきた。



 翌朝、私は村人たちを集めた。
 彼らは不安げに私を見つめる。
 無理もない、彼らにとって私はただの流刑貴族にすぎないのだから。

「この土地は、必ず豊かにできます」

 そう宣言したとき、誰かが嘲笑した。

「侯爵令嬢さまが、魔法でも使えるってのか?」

「そんなもんで土地が肥えるなら苦労はしねえよ」

 私は静かに微笑んだ。

「魔法ではなく、“理”の力です」

 掌を掲げ、古代語を口にした瞬間、塔の下に眠る魔力の泉が目覚めた。
 地を伝う光が走り、畑の土が柔らかく輝き出す。
 干からびていた苗が一斉に芽吹き、村人たちは息をのんだ。

「まさか……本当に……!」

「聖女様だ……!」

 誰かがそう呟いた。
 その言葉に、胸の奥が少し痛んだ。
 ――いいえ、私は聖女なんかじゃない。
 ただ、奪われたものを取り返すだけ。



 それから三ヶ月。
 村は目に見えて変わった。
 作物は豊かに実り、魔物の被害も減り、人々の顔に笑顔が戻った。
 いつしか彼らは私を「辺境の守り姫」と呼び、崇敬の眼差しを向けた。

「リリアナ様、この薬草を――」

「ありがとう。次は畑の水路をもう少し広げましょう」

 私は穏やかに答えながら、心の奥で冷たい決意を育てていた。

 王都では、王太子と聖女が祝宴を開いていると聞いた。
 民が飢え、北が苦しむ中で――彼らは踊り、笑っているのだという。

「笑うがいい。いずれ、その笑顔が絶望に変わる日が来る」

 夜空を見上げ、私は指先に魔法陣を描く。
 月光がその紋に反応し、銀の光が塔の先端を包んだ。

 ――見ていなさい、エドワード。
 あなたの“聖女”がどんな化け物か、すぐに分かるでしょう。

 そして、王家の呪いが再び動き出す。
 始まりの地、辺境から。
 私は静かに、滅びの鐘を鳴らす。




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