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第二章 辺境の再起
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王都を追放されたその日から、私はひとり馬車で北の辺境へ向かった。
馬車の窓の外には、どこまでも広がる灰色の荒野。
冷たい風が頬を打つたびに、胸の奥の痛みが少しずつ凍っていく。
王都では、私は「悪役令嬢」として嘲られた。
だがこの辺境では、誰も私を知らない。
――ようやく、仮面を脱ぐことができる。
辿り着いたのは、国境近くの小さな村だった。
崩れかけた屋根、痩せた土地、そして怯えた目をした人々。
王都の繁栄とはまるで別世界のような貧しさ。
「ここが……私の新しい居場所、ね」
嘲るように呟いたが、心の奥では小さな炎が灯っていた。
この地なら、誰にも邪魔されずにやり直せる。
――そして、復讐の礎を築ける。
◇
屋敷代わりに与えられた古い塔は、誰も寄りつかない廃墟だった。
だが、私はそこに奇妙な“力”の気配を感じた。
夜、蝋燭の明かりのもとで古文書を読み解いていくうちに、胸の奥がざわめき始めた。
「……この紋章……どこかで……」
眠りに落ちた瞬間、頭の奥で光が弾けた。
――ああ、思い出した。
私は見知らぬ光景の中にいた。
巨大な城、金の王冠、群衆の歓声。
そして、自分の名を呼ぶ声。
『リュシア王女……!古の王国に光を!』
その声が、私の中で重なる。
リリアナと、リュシア。
ふたつの名が溶け合い、ひとつの真実に変わる。
「……私、だったのね」
かつて滅びた古代王国の王女。
裏切られ、封印され、時を越えて転生した存在。
私の魂は、千年の時を経てこの身体に戻ってきた。
◇
翌朝、私は村人たちを集めた。
彼らは不安げに私を見つめる。
無理もない、彼らにとって私はただの流刑貴族にすぎないのだから。
「この土地は、必ず豊かにできます」
そう宣言したとき、誰かが嘲笑した。
「侯爵令嬢さまが、魔法でも使えるってのか?」
「そんなもんで土地が肥えるなら苦労はしねえよ」
私は静かに微笑んだ。
「魔法ではなく、“理”の力です」
掌を掲げ、古代語を口にした瞬間、塔の下に眠る魔力の泉が目覚めた。
地を伝う光が走り、畑の土が柔らかく輝き出す。
干からびていた苗が一斉に芽吹き、村人たちは息をのんだ。
「まさか……本当に……!」
「聖女様だ……!」
誰かがそう呟いた。
その言葉に、胸の奥が少し痛んだ。
――いいえ、私は聖女なんかじゃない。
ただ、奪われたものを取り返すだけ。
◇
それから三ヶ月。
村は目に見えて変わった。
作物は豊かに実り、魔物の被害も減り、人々の顔に笑顔が戻った。
いつしか彼らは私を「辺境の守り姫」と呼び、崇敬の眼差しを向けた。
「リリアナ様、この薬草を――」
「ありがとう。次は畑の水路をもう少し広げましょう」
私は穏やかに答えながら、心の奥で冷たい決意を育てていた。
王都では、王太子と聖女が祝宴を開いていると聞いた。
民が飢え、北が苦しむ中で――彼らは踊り、笑っているのだという。
「笑うがいい。いずれ、その笑顔が絶望に変わる日が来る」
夜空を見上げ、私は指先に魔法陣を描く。
月光がその紋に反応し、銀の光が塔の先端を包んだ。
――見ていなさい、エドワード。
あなたの“聖女”がどんな化け物か、すぐに分かるでしょう。
そして、王家の呪いが再び動き出す。
始まりの地、辺境から。
私は静かに、滅びの鐘を鳴らす。
馬車の窓の外には、どこまでも広がる灰色の荒野。
冷たい風が頬を打つたびに、胸の奥の痛みが少しずつ凍っていく。
王都では、私は「悪役令嬢」として嘲られた。
だがこの辺境では、誰も私を知らない。
――ようやく、仮面を脱ぐことができる。
辿り着いたのは、国境近くの小さな村だった。
崩れかけた屋根、痩せた土地、そして怯えた目をした人々。
王都の繁栄とはまるで別世界のような貧しさ。
「ここが……私の新しい居場所、ね」
嘲るように呟いたが、心の奥では小さな炎が灯っていた。
この地なら、誰にも邪魔されずにやり直せる。
――そして、復讐の礎を築ける。
◇
屋敷代わりに与えられた古い塔は、誰も寄りつかない廃墟だった。
だが、私はそこに奇妙な“力”の気配を感じた。
夜、蝋燭の明かりのもとで古文書を読み解いていくうちに、胸の奥がざわめき始めた。
「……この紋章……どこかで……」
眠りに落ちた瞬間、頭の奥で光が弾けた。
――ああ、思い出した。
私は見知らぬ光景の中にいた。
巨大な城、金の王冠、群衆の歓声。
そして、自分の名を呼ぶ声。
『リュシア王女……!古の王国に光を!』
その声が、私の中で重なる。
リリアナと、リュシア。
ふたつの名が溶け合い、ひとつの真実に変わる。
「……私、だったのね」
かつて滅びた古代王国の王女。
裏切られ、封印され、時を越えて転生した存在。
私の魂は、千年の時を経てこの身体に戻ってきた。
◇
翌朝、私は村人たちを集めた。
彼らは不安げに私を見つめる。
無理もない、彼らにとって私はただの流刑貴族にすぎないのだから。
「この土地は、必ず豊かにできます」
そう宣言したとき、誰かが嘲笑した。
「侯爵令嬢さまが、魔法でも使えるってのか?」
「そんなもんで土地が肥えるなら苦労はしねえよ」
私は静かに微笑んだ。
「魔法ではなく、“理”の力です」
掌を掲げ、古代語を口にした瞬間、塔の下に眠る魔力の泉が目覚めた。
地を伝う光が走り、畑の土が柔らかく輝き出す。
干からびていた苗が一斉に芽吹き、村人たちは息をのんだ。
「まさか……本当に……!」
「聖女様だ……!」
誰かがそう呟いた。
その言葉に、胸の奥が少し痛んだ。
――いいえ、私は聖女なんかじゃない。
ただ、奪われたものを取り返すだけ。
◇
それから三ヶ月。
村は目に見えて変わった。
作物は豊かに実り、魔物の被害も減り、人々の顔に笑顔が戻った。
いつしか彼らは私を「辺境の守り姫」と呼び、崇敬の眼差しを向けた。
「リリアナ様、この薬草を――」
「ありがとう。次は畑の水路をもう少し広げましょう」
私は穏やかに答えながら、心の奥で冷たい決意を育てていた。
王都では、王太子と聖女が祝宴を開いていると聞いた。
民が飢え、北が苦しむ中で――彼らは踊り、笑っているのだという。
「笑うがいい。いずれ、その笑顔が絶望に変わる日が来る」
夜空を見上げ、私は指先に魔法陣を描く。
月光がその紋に反応し、銀の光が塔の先端を包んだ。
――見ていなさい、エドワード。
あなたの“聖女”がどんな化け物か、すぐに分かるでしょう。
そして、王家の呪いが再び動き出す。
始まりの地、辺境から。
私は静かに、滅びの鐘を鳴らす。
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