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エピローグ 花の都にて
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王都は、かつての姿をすっかり変えていた。
瓦礫の街は花咲く都へと生まれ変わり、季節ごとに異なる花が石畳を彩る。
今では「千花の都」と呼ばれ、遠国からも人が訪れるようになっている。
私はその中心にある研究院の中庭で、小さな薬草の苗を植えていた。
「リリアナ先生、今日も土いじりですか?」
「ええ、知識だけでなく“命”も育てられるようになりたいの」
弟子の少女が笑いながら頷く。
彼女の髪にはかつて私が愛した香草――アルステッドの白花が挿されていた。
それは、私の家名と同じ名を持つ花。
滅びた家の象徴が、今では新しい命の象徴となっている。
――あの日の呪いも、痛みも、もう遠い過去のようだった。
◇
午後になると、研究院の塔に王――ルシアンがやって来た。
王冠を外し、軽装のまま。
民の間を歩くことを好む彼は、昔と変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。
「また自分で来たの? 護衛もつけずに」
「君がここにいる限り、誰も俺を傷つけたりしないだろう?」
その冗談に私は小さく笑い、ティーカップを差し出した。
香るのは、薬草と紅茶を調合した“春の香”。
「懐かしい香りだな。学園時代に君が淹れてくれたものに似ている」
「ええ。あの頃は、殿下の好みに合わせてばかりいたけれど……今は私の配合よ」
「――こっちの方がずっと好きだ」
彼の言葉に、胸が温かくなる。
◇
夕陽が沈むころ、ルシアンは王都の方角を眺めた。
黄金色に染まる屋根と、鐘の音。
かつて罪と嘘で覆われていたこの都が、今では希望の光で満ちている。
「君がいなければ、この景色はなかった」
「それは違うわ。私はただ、壊れた場所を見つめ続けただけ。立ち直ったのは、人々の力よ」
そう言うと、彼は私の手を取り、そっと指先に口づけた。
「それでも、俺は君に救われた」
頬を染めた私に、春風が優しく吹き抜ける。
遠くで白い鳥が飛び立ち、空の彼方へと消えていった。
◇
夜。
研究院の灯りを落とし、私は窓辺で月を見上げた。
まるで静かに微笑むような満月。
――“真実は、いずれ王都を焼くでしょう”
あの日、学園で言い放った言葉を思い出す。
あの時は、ただの呪いだった。
けれど今は、それが「再生の炎」だったと分かる。
焼け跡の上に花が咲き、人が笑い、未来が築かれる。
それこそが、私が望んでいた本当の“ざまぁ”だったのかもしれない。
◇
ルシアンが静かに部屋に入り、肩に薄いショールをかけてくれた。
「また夜更かしか?」
「ええ、少しだけ昔のことを思い出していたの」
「君の過去も、君のすべてだ。だから、俺はそれを誇りに思う」
その言葉に、私は小さく笑い、頷いた。
そして――月光の下、彼の肩に頭を預けた。
「ありがとう、ルシアン。あなたに出会えたこの人生が、ようやく報われた気がする」
外では、春の花がそよ風に揺れていた。
その香りが、まるで祝福のように二人を包む。
かつて“悪役”と呼ばれた令嬢は、今――王と共に、新しい時代の夜明けを見つめている。
すべての呪いが溶け、静かな幸福が訪れた。
もう涙はいらない。
笑顔で、生きていける。
瓦礫の街は花咲く都へと生まれ変わり、季節ごとに異なる花が石畳を彩る。
今では「千花の都」と呼ばれ、遠国からも人が訪れるようになっている。
私はその中心にある研究院の中庭で、小さな薬草の苗を植えていた。
「リリアナ先生、今日も土いじりですか?」
「ええ、知識だけでなく“命”も育てられるようになりたいの」
弟子の少女が笑いながら頷く。
彼女の髪にはかつて私が愛した香草――アルステッドの白花が挿されていた。
それは、私の家名と同じ名を持つ花。
滅びた家の象徴が、今では新しい命の象徴となっている。
――あの日の呪いも、痛みも、もう遠い過去のようだった。
◇
午後になると、研究院の塔に王――ルシアンがやって来た。
王冠を外し、軽装のまま。
民の間を歩くことを好む彼は、昔と変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。
「また自分で来たの? 護衛もつけずに」
「君がここにいる限り、誰も俺を傷つけたりしないだろう?」
その冗談に私は小さく笑い、ティーカップを差し出した。
香るのは、薬草と紅茶を調合した“春の香”。
「懐かしい香りだな。学園時代に君が淹れてくれたものに似ている」
「ええ。あの頃は、殿下の好みに合わせてばかりいたけれど……今は私の配合よ」
「――こっちの方がずっと好きだ」
彼の言葉に、胸が温かくなる。
◇
夕陽が沈むころ、ルシアンは王都の方角を眺めた。
黄金色に染まる屋根と、鐘の音。
かつて罪と嘘で覆われていたこの都が、今では希望の光で満ちている。
「君がいなければ、この景色はなかった」
「それは違うわ。私はただ、壊れた場所を見つめ続けただけ。立ち直ったのは、人々の力よ」
そう言うと、彼は私の手を取り、そっと指先に口づけた。
「それでも、俺は君に救われた」
頬を染めた私に、春風が優しく吹き抜ける。
遠くで白い鳥が飛び立ち、空の彼方へと消えていった。
◇
夜。
研究院の灯りを落とし、私は窓辺で月を見上げた。
まるで静かに微笑むような満月。
――“真実は、いずれ王都を焼くでしょう”
あの日、学園で言い放った言葉を思い出す。
あの時は、ただの呪いだった。
けれど今は、それが「再生の炎」だったと分かる。
焼け跡の上に花が咲き、人が笑い、未来が築かれる。
それこそが、私が望んでいた本当の“ざまぁ”だったのかもしれない。
◇
ルシアンが静かに部屋に入り、肩に薄いショールをかけてくれた。
「また夜更かしか?」
「ええ、少しだけ昔のことを思い出していたの」
「君の過去も、君のすべてだ。だから、俺はそれを誇りに思う」
その言葉に、私は小さく笑い、頷いた。
そして――月光の下、彼の肩に頭を預けた。
「ありがとう、ルシアン。あなたに出会えたこの人生が、ようやく報われた気がする」
外では、春の花がそよ風に揺れていた。
その香りが、まるで祝福のように二人を包む。
かつて“悪役”と呼ばれた令嬢は、今――王と共に、新しい時代の夜明けを見つめている。
すべての呪いが溶け、静かな幸福が訪れた。
もう涙はいらない。
笑顔で、生きていける。
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