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64話 「脱走してみよう」
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今日も僕は子供部屋で遊んでいます。
いっぱい遊んでウトウトしていたら毛布を掛けられていました。気付いたら床の上で寝ていたようですね。一緒に遊んでいたアーネは、メイドさん達と遊んでいます。アーネが走り回っているせいかこちらを誰も見ていませんね。鬼ごっこかな?
「少しトイレ行ってきますね」
「「「はーい」」」
僕のそばにいたメイドさんが部屋から出て行きました。今は僕一人だね。
ふとドアを見ると開いていました。あれ? 閉め忘れるなんて珍しいね。僕は良い子ですから閉めに行きましょう。静かにハイハイしてドアまで近づきます。
……よし、脱走しよう!
気が変わりました。赤ちゃんの僕一人で行動出来る機会はめったにありませんし別にいいよね?
◆
部屋から出るといつもの廊下ですね。すぐそばに両親の寝室があります。僕が夜寝るときはいつもあの部屋に行くのです。今日は反対側に行きましょう!
寝たので体力はバッチリ回復しました。誰かに見つかる前にいろいろ調べましょう。
「うぐぅ?(この部屋は?)」
ドアにアーネの部屋と書いてありました。なぜか開けっ放しなので僕でも入れますね。
「んぐ~(ここがアーネの部屋か)」
アーネの部屋は子供部屋の隣ですね。防音が完璧なのか子供部屋の音は聞こえてきません。こじんまりとした過ごし易そうな部屋です。広すぎる部屋よりこっちの方が落ち着きます。
ふむふむ、なんだか普通のお部屋ですね。ベッドがあるので寝るところはあります。でも両親の寝室を使っているのであまり使ってないようです。そのせいか人形だらけですもの。今のベッドはただの物置のようだね。
でもこっちの机や棚は散らかっています。そういえばアーネは勉強しているんだね。何を勉強しているのかわからないけど頑張ってね!
ん~。特に気になるものはありませんね。よし、次いくよー!
◆
アーネの部屋から次の部屋に向かいます。すぐ行き止まりが見えるのですが、そこにドアが1つありますね。ドアにはアニーキ―と書いてありますので兄貴の部屋だね。残念ながら戸締りバッチリなようで入れません。
どうやらここはナンス家の住む一角のようです。そういえば使用人達のお部屋もありましたね。きちんと棲み分けされているようです。
ハイハイでゆっくり子供部屋に戻ります。ドアの隙間から中を覗くとまだ僕の脱走に気付いていないようでした。メイドさんは大きい方のトイレでも行ってるのかな? まだ時間がありそうなのでもっと外を調べましょう!
てくてくと進むと窓から人が見えました。
「えぐぅ~?(誰かなあ~?)」
なんだか黒っぽい人が屋根の上にいますね。町とか出かけると、僕たちの周りを警戒して見張っているのがバレバレでしたよ。兄貴が母に魔法を見せたときも覗いてましたしね。僕が顔を覚えている限り、こっそりと隠れて警備している人達はたくさんいますね。きっとナンス家のボディーガード的な人なのでしょう。
じっと見ていたら目が合いました。あ、ヤバいです。僕が脱走したの見つかってしまいました。めっちゃ驚いてますね。
よし、ぼく悪いことちてないのゆるちてねアピールしましょう!
「んぐぅ~」ぶんぶん
ハイハイからお座りの姿勢になって手を振ります。片方の手は口に突っ込んでおしゃぶりの代わりです。すごい笑顔でまたねーってやりました。そこから何食わぬ顔でハイハイを開始して、窓から見えない位置に移動します。
「ふぅ~」
なんとか誤魔化せましたね。このまま進みましょう!
「メンテ様?!」
「んぐぅ?!」
うおおお?! いきなり声をかけられてびっくりです。というか見つかっちゃいましたね。この人は長いトイレのメイドさんです。こうなれば……。
「ぐぅううう~」ぎゅっ
「え? どうしたの?」
ハイハイで足に近づいてくっつきました。そのまま甘えます。
「もしかして私を追いかけて……?」
「えっぐ!(そうそう!)」
目をキラキラさせて見つめていると、メイドさんは勘違いしてくれました。これで脱走したのがバレずにすみましたね。僕は寂しくなって会いたくなっただけなのです!
子供部屋に戻ると、僕がいないとちょっとした騒ぎになっていました。僕を抱っこしながら連れ帰ったメイドさんは、離れたら泣いてしまったので仕方なく一緒にトイレに行ったと誤魔化しましたよ。僕もそうだよみたいな感じでくっついて甘えていました。
あとでこのメイドさんの名前を知ったのですが、ミスネ・ケアレスという人でした。名前すら覚えていなかったので申し訳なかったです。でもバッチリ覚えましたよ。また遊ぼうね!
<黒っぽい人の後日談>
タクシーに今日の報告をした黒っぽい人がいた。彼はこのナンス家の周辺を任されているうちの一人である。だが影が非常に薄かった。仲間ですら居場所が分らないほどである。ある意味自慢できるレベルであった。
「……メンテ様に見つかってしまいました。しかも手を振ってバイバイされました」
「ほほっ。赤ちゃんはおやっと思えば興味を持って見てしまうものですよ。油断してはいけませんな。もっと腕を磨きなさい」
こうして黒っぽい人は訓練を頑張り、さらに影が薄くなったという。それでもメンテは毎回すぐに発見して手を振るのであった。
いっぱい遊んでウトウトしていたら毛布を掛けられていました。気付いたら床の上で寝ていたようですね。一緒に遊んでいたアーネは、メイドさん達と遊んでいます。アーネが走り回っているせいかこちらを誰も見ていませんね。鬼ごっこかな?
「少しトイレ行ってきますね」
「「「はーい」」」
僕のそばにいたメイドさんが部屋から出て行きました。今は僕一人だね。
ふとドアを見ると開いていました。あれ? 閉め忘れるなんて珍しいね。僕は良い子ですから閉めに行きましょう。静かにハイハイしてドアまで近づきます。
……よし、脱走しよう!
気が変わりました。赤ちゃんの僕一人で行動出来る機会はめったにありませんし別にいいよね?
◆
部屋から出るといつもの廊下ですね。すぐそばに両親の寝室があります。僕が夜寝るときはいつもあの部屋に行くのです。今日は反対側に行きましょう!
寝たので体力はバッチリ回復しました。誰かに見つかる前にいろいろ調べましょう。
「うぐぅ?(この部屋は?)」
ドアにアーネの部屋と書いてありました。なぜか開けっ放しなので僕でも入れますね。
「んぐ~(ここがアーネの部屋か)」
アーネの部屋は子供部屋の隣ですね。防音が完璧なのか子供部屋の音は聞こえてきません。こじんまりとした過ごし易そうな部屋です。広すぎる部屋よりこっちの方が落ち着きます。
ふむふむ、なんだか普通のお部屋ですね。ベッドがあるので寝るところはあります。でも両親の寝室を使っているのであまり使ってないようです。そのせいか人形だらけですもの。今のベッドはただの物置のようだね。
でもこっちの机や棚は散らかっています。そういえばアーネは勉強しているんだね。何を勉強しているのかわからないけど頑張ってね!
ん~。特に気になるものはありませんね。よし、次いくよー!
◆
アーネの部屋から次の部屋に向かいます。すぐ行き止まりが見えるのですが、そこにドアが1つありますね。ドアにはアニーキ―と書いてありますので兄貴の部屋だね。残念ながら戸締りバッチリなようで入れません。
どうやらここはナンス家の住む一角のようです。そういえば使用人達のお部屋もありましたね。きちんと棲み分けされているようです。
ハイハイでゆっくり子供部屋に戻ります。ドアの隙間から中を覗くとまだ僕の脱走に気付いていないようでした。メイドさんは大きい方のトイレでも行ってるのかな? まだ時間がありそうなのでもっと外を調べましょう!
てくてくと進むと窓から人が見えました。
「えぐぅ~?(誰かなあ~?)」
なんだか黒っぽい人が屋根の上にいますね。町とか出かけると、僕たちの周りを警戒して見張っているのがバレバレでしたよ。兄貴が母に魔法を見せたときも覗いてましたしね。僕が顔を覚えている限り、こっそりと隠れて警備している人達はたくさんいますね。きっとナンス家のボディーガード的な人なのでしょう。
じっと見ていたら目が合いました。あ、ヤバいです。僕が脱走したの見つかってしまいました。めっちゃ驚いてますね。
よし、ぼく悪いことちてないのゆるちてねアピールしましょう!
「んぐぅ~」ぶんぶん
ハイハイからお座りの姿勢になって手を振ります。片方の手は口に突っ込んでおしゃぶりの代わりです。すごい笑顔でまたねーってやりました。そこから何食わぬ顔でハイハイを開始して、窓から見えない位置に移動します。
「ふぅ~」
なんとか誤魔化せましたね。このまま進みましょう!
「メンテ様?!」
「んぐぅ?!」
うおおお?! いきなり声をかけられてびっくりです。というか見つかっちゃいましたね。この人は長いトイレのメイドさんです。こうなれば……。
「ぐぅううう~」ぎゅっ
「え? どうしたの?」
ハイハイで足に近づいてくっつきました。そのまま甘えます。
「もしかして私を追いかけて……?」
「えっぐ!(そうそう!)」
目をキラキラさせて見つめていると、メイドさんは勘違いしてくれました。これで脱走したのがバレずにすみましたね。僕は寂しくなって会いたくなっただけなのです!
子供部屋に戻ると、僕がいないとちょっとした騒ぎになっていました。僕を抱っこしながら連れ帰ったメイドさんは、離れたら泣いてしまったので仕方なく一緒にトイレに行ったと誤魔化しましたよ。僕もそうだよみたいな感じでくっついて甘えていました。
あとでこのメイドさんの名前を知ったのですが、ミスネ・ケアレスという人でした。名前すら覚えていなかったので申し訳なかったです。でもバッチリ覚えましたよ。また遊ぼうね!
<黒っぽい人の後日談>
タクシーに今日の報告をした黒っぽい人がいた。彼はこのナンス家の周辺を任されているうちの一人である。だが影が非常に薄かった。仲間ですら居場所が分らないほどである。ある意味自慢できるレベルであった。
「……メンテ様に見つかってしまいました。しかも手を振ってバイバイされました」
「ほほっ。赤ちゃんはおやっと思えば興味を持って見てしまうものですよ。油断してはいけませんな。もっと腕を磨きなさい」
こうして黒っぽい人は訓練を頑張り、さらに影が薄くなったという。それでもメンテは毎回すぐに発見して手を振るのであった。
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