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第88話 起死回生
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「なんとなく見当はついていたのだ。魔術が使えるのであれば、そこにたどり着くのは自然なことだ」
どうしてその兵器のことが分かったのか、というユリウスの疑問にヴァンはそう答えた。
「あれはサレジア起死回生の兵器になるはずだったと聞いています」
「そうか」
ヴァンは、その時のエルフの絶望を想像し、同情せざるを得なかった。
「ですが、帝国軍の規模は想定をはるかに超えたものでした」
「それで秘匿したというわけか」
「はい、当時の威力では一時的な挽回はできても、結局は敗れるだろうと。であれば、ここで明かさず、秘密裏に研究を継続して、より大きな威力のものを作るべきだろうと」
ユリウスはそう言って、一息ついた。
「兵器の存在を知った時、ユリウス殿は何を考えた」
ヴァンに核心を問われたユリウスは、ためらうことなく答えた。
「正直なところ厄介なものを抱え込んだと思いました。サレジアの独立がなってそれ自体の存在意義がなくなってしまったのですから。研究を継続するほどの資金もありませんでした。結果として研究は凍結し、研究者らの流出を防ぐために兵器に利用した原理を、産業用エネルギーに転用する研究に彼らを移動させました。少ない資金でも研究を続ければ、エネルギー資源に乏しいサレジアに資すると考えたのです」
ユリウスの説明に、ヴァンも一応の納得はした。
「確かにこれは魔術を使えるエルフでないと使えない技術だからな。しかし、兵器への再転用が可能なのことは、いずれ帝国に知られてしまうだろう」
「帝国に知らせることを先伸ばしにしていたのは事実ですが、我らにしてみれば開発するのにそれなりの資金を投じてきたもので、それを安易に譲り渡すわけにはいかなかったのです」
「技術がわかれば、サレジアより経済的に豊かな国に人材も技術も奪われてしまうことを危惧したのだな」
はい、とユリウスは頷いた。
「これは難問だな」
ヴァンはそう言って腕を組んで目を閉じた。
「私としては、帝国との平和条約の締結を機会に、この技術について明らかにしても良いと考えています。もちろん条件はありますが」
ユリウスはヴァンを見て言った。
「前提として明かさないということは両国の将来に禍根を残すからな、その決断は尊重できる。が、その条件が問題だ」
「閣下の言われる通りです。我々としては国益を損なわず、同時に帝国にも疑念を抱かれなくはない。これはサレジアの存亡にかかわる大事なのです」
勢いよくユリウスにそう言われた時に、ヴァンの頭には何か嫌な予感がよぎった。
「閣下、つきましては何か良い案はないでしょうか」
ヴァンは立ち上がると、ユリウスを指さすと低い声で告げた。
「アリにしてもサレジア王にしても私を何だと思ってるのだ」
「閣下、私のことは、もうユリウスと呼んで頂けませんか」
そう言ったユリウスは、憤然としてうろうろと歩き回るヴァンを面白そうに見ていた。
「こんなことなら、見て見ぬふりをすればよかった」
そうつぶやいて、仕方なく椅子に腰かけたヴァンは、あきらめたようにユリウスに言った。
「宰相殿を呼んでくれるか、ユリウス」
どうしてその兵器のことが分かったのか、というユリウスの疑問にヴァンはそう答えた。
「あれはサレジア起死回生の兵器になるはずだったと聞いています」
「そうか」
ヴァンは、その時のエルフの絶望を想像し、同情せざるを得なかった。
「ですが、帝国軍の規模は想定をはるかに超えたものでした」
「それで秘匿したというわけか」
「はい、当時の威力では一時的な挽回はできても、結局は敗れるだろうと。であれば、ここで明かさず、秘密裏に研究を継続して、より大きな威力のものを作るべきだろうと」
ユリウスはそう言って、一息ついた。
「兵器の存在を知った時、ユリウス殿は何を考えた」
ヴァンに核心を問われたユリウスは、ためらうことなく答えた。
「正直なところ厄介なものを抱え込んだと思いました。サレジアの独立がなってそれ自体の存在意義がなくなってしまったのですから。研究を継続するほどの資金もありませんでした。結果として研究は凍結し、研究者らの流出を防ぐために兵器に利用した原理を、産業用エネルギーに転用する研究に彼らを移動させました。少ない資金でも研究を続ければ、エネルギー資源に乏しいサレジアに資すると考えたのです」
ユリウスの説明に、ヴァンも一応の納得はした。
「確かにこれは魔術を使えるエルフでないと使えない技術だからな。しかし、兵器への再転用が可能なのことは、いずれ帝国に知られてしまうだろう」
「帝国に知らせることを先伸ばしにしていたのは事実ですが、我らにしてみれば開発するのにそれなりの資金を投じてきたもので、それを安易に譲り渡すわけにはいかなかったのです」
「技術がわかれば、サレジアより経済的に豊かな国に人材も技術も奪われてしまうことを危惧したのだな」
はい、とユリウスは頷いた。
「これは難問だな」
ヴァンはそう言って腕を組んで目を閉じた。
「私としては、帝国との平和条約の締結を機会に、この技術について明らかにしても良いと考えています。もちろん条件はありますが」
ユリウスはヴァンを見て言った。
「前提として明かさないということは両国の将来に禍根を残すからな、その決断は尊重できる。が、その条件が問題だ」
「閣下の言われる通りです。我々としては国益を損なわず、同時に帝国にも疑念を抱かれなくはない。これはサレジアの存亡にかかわる大事なのです」
勢いよくユリウスにそう言われた時に、ヴァンの頭には何か嫌な予感がよぎった。
「閣下、つきましては何か良い案はないでしょうか」
ヴァンは立ち上がると、ユリウスを指さすと低い声で告げた。
「アリにしてもサレジア王にしても私を何だと思ってるのだ」
「閣下、私のことは、もうユリウスと呼んで頂けませんか」
そう言ったユリウスは、憤然としてうろうろと歩き回るヴァンを面白そうに見ていた。
「こんなことなら、見て見ぬふりをすればよかった」
そうつぶやいて、仕方なく椅子に腰かけたヴァンは、あきらめたようにユリウスに言った。
「宰相殿を呼んでくれるか、ユリウス」
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