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そうして私は、再び忙しい一日を過ごすことになった。
屋敷では領地経営の打ち合わせや、使用人の管理、そしてフローラの動きを警戒しながら緊張感を保ち続ける。
夜になってようやく一息ついたころ、書斎でギルバートと整理していた書類をとじ、ソファにどさりと倒れ込む。
「疲れた……」
「お疲れさま、アデル。今日は書類仕事も多かったですね」
ギルバートが、傍らで苦笑する。レオンは先に部屋へ戻って休んでいるらしく、この場にはいない。
そっと目を閉じると、頭の中でフローラの顔がちらつく。あの憎たらしい笑み。そして私に容赦なく罪を押し付けようとするやり方。本当に相容れない。
「正直、フローラが一人で暴走してるだけなら、まだマシなのよ。でも、王家の道具の件があるせいで、誰かが裏で糸を引いてる可能性が高いのよね」
「ええ。フローラをコントロールする形で、事件を利用している人物……そいつが一番の敵かもしれません」
「そう思うと、アルトがこちら側に手を貸してくれるだけでも多少は気が楽だけど……あんまり期待しすぎても痛い目見そう」
私が自嘲ぎみに笑うと、ギルバートはソファの背にもたれながら天井を見上げる。
「アデル、あなたはいつも自分で何とかしようとするけど、もう少し周りに頼ってもいいですよ。ヴィクトリア様や使用人たち、そして僕もそうです。レオンさんだって力になろうと必死なんですから」
「……わかってるわよ。でも、私が引っ張らないと話が進まない気がして」
「フフ、そこがあなたのいいところだけど、同時に危ういところでもある。大丈夫です、あなたが立ち止まっても、僕たちが背中を押しますから」
ギルバートが穏やかに微笑むのを見て、私はほんの少し肩の力が抜けた。
悪役令嬢として周囲から嫌われても、実はこうやって支えてくれる人がいる――それを再確認するだけで、救われる思いがする。
「ありがとう、ギル。本当にあなたがいてくれてよかった……」
何気なくつぶやいた言葉に、ギルバートがかすかに赤面したように見えたが、気のせいかもしれない。
一方、レオンは部屋に戻って布団に潜り込みながら、膨大な思考に耽っていた。
“仮登録”して王家と正式に繋がりを持つか、それとも今まで通り捨て猫として伯爵家の片隅で生きるか――こんな選択を迫られるとは思わなかったと、彼は何度も頭をかきむしる。
「でも、フローラに好き勝手されるのは嫌だし、アデルが疑われるのはもっと嫌。……なら、僕が動かなきゃだよな。王家の血筋を使うなんて抵抗あるけど……」
うつぶせになって枕を抱え込むようにしたレオンの目には、薄暗い部屋の明かりだけが差し込んでいる。外からは夜の静寂が漂い、かすかな風の音が聞こえる。
「明日になったら、また何か動きがあるかもしれない。怖いけど、やるしかないんだよな……」
誰に聞かせるでもないつぶやきが、闇に溶けていく。レオン自身も、ここまで巻き込まれるのは想定外だったかもしれないが、アデルと共にいる以上、もう逃げられないのだ。
一方フローラは、どこかの館で次の手を練っているのかもしれない。アルトの説得を無視して、さらなる根回しをしてくる可能性だってある。
あの事件の真犯人が誰なのか、王家の内部にいる“黒幕”が何を狙っているのか――解けない謎が山積みだ。
それでも私やレオン、そしてギルバートは、徐々に情報をつかみつつある。フローラの陰謀と王家の道具の流出を結びつけ、勝手な濡れ衣を晴らしてみせるしかない。
こうして伯爵家の夜は更けていく。日はまた昇り、明日が来るたびに事態は揺れ動く。
負け犬と捨て猫の物語は、まだまだ続く――私たちは知らない。近づく時限があることを。
でも、たとえ時限が迫ろうと、悪役令嬢が諦めるわけにはいかないのだ。事件の真相とフローラの計略に備え、私たちは手をこまねいて待つような弱い存在ではない。
屋敷では領地経営の打ち合わせや、使用人の管理、そしてフローラの動きを警戒しながら緊張感を保ち続ける。
夜になってようやく一息ついたころ、書斎でギルバートと整理していた書類をとじ、ソファにどさりと倒れ込む。
「疲れた……」
「お疲れさま、アデル。今日は書類仕事も多かったですね」
ギルバートが、傍らで苦笑する。レオンは先に部屋へ戻って休んでいるらしく、この場にはいない。
そっと目を閉じると、頭の中でフローラの顔がちらつく。あの憎たらしい笑み。そして私に容赦なく罪を押し付けようとするやり方。本当に相容れない。
「正直、フローラが一人で暴走してるだけなら、まだマシなのよ。でも、王家の道具の件があるせいで、誰かが裏で糸を引いてる可能性が高いのよね」
「ええ。フローラをコントロールする形で、事件を利用している人物……そいつが一番の敵かもしれません」
「そう思うと、アルトがこちら側に手を貸してくれるだけでも多少は気が楽だけど……あんまり期待しすぎても痛い目見そう」
私が自嘲ぎみに笑うと、ギルバートはソファの背にもたれながら天井を見上げる。
「アデル、あなたはいつも自分で何とかしようとするけど、もう少し周りに頼ってもいいですよ。ヴィクトリア様や使用人たち、そして僕もそうです。レオンさんだって力になろうと必死なんですから」
「……わかってるわよ。でも、私が引っ張らないと話が進まない気がして」
「フフ、そこがあなたのいいところだけど、同時に危ういところでもある。大丈夫です、あなたが立ち止まっても、僕たちが背中を押しますから」
ギルバートが穏やかに微笑むのを見て、私はほんの少し肩の力が抜けた。
悪役令嬢として周囲から嫌われても、実はこうやって支えてくれる人がいる――それを再確認するだけで、救われる思いがする。
「ありがとう、ギル。本当にあなたがいてくれてよかった……」
何気なくつぶやいた言葉に、ギルバートがかすかに赤面したように見えたが、気のせいかもしれない。
一方、レオンは部屋に戻って布団に潜り込みながら、膨大な思考に耽っていた。
“仮登録”して王家と正式に繋がりを持つか、それとも今まで通り捨て猫として伯爵家の片隅で生きるか――こんな選択を迫られるとは思わなかったと、彼は何度も頭をかきむしる。
「でも、フローラに好き勝手されるのは嫌だし、アデルが疑われるのはもっと嫌。……なら、僕が動かなきゃだよな。王家の血筋を使うなんて抵抗あるけど……」
うつぶせになって枕を抱え込むようにしたレオンの目には、薄暗い部屋の明かりだけが差し込んでいる。外からは夜の静寂が漂い、かすかな風の音が聞こえる。
「明日になったら、また何か動きがあるかもしれない。怖いけど、やるしかないんだよな……」
誰に聞かせるでもないつぶやきが、闇に溶けていく。レオン自身も、ここまで巻き込まれるのは想定外だったかもしれないが、アデルと共にいる以上、もう逃げられないのだ。
一方フローラは、どこかの館で次の手を練っているのかもしれない。アルトの説得を無視して、さらなる根回しをしてくる可能性だってある。
あの事件の真犯人が誰なのか、王家の内部にいる“黒幕”が何を狙っているのか――解けない謎が山積みだ。
それでも私やレオン、そしてギルバートは、徐々に情報をつかみつつある。フローラの陰謀と王家の道具の流出を結びつけ、勝手な濡れ衣を晴らしてみせるしかない。
こうして伯爵家の夜は更けていく。日はまた昇り、明日が来るたびに事態は揺れ動く。
負け犬と捨て猫の物語は、まだまだ続く――私たちは知らない。近づく時限があることを。
でも、たとえ時限が迫ろうと、悪役令嬢が諦めるわけにはいかないのだ。事件の真相とフローラの計略に備え、私たちは手をこまねいて待つような弱い存在ではない。
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