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書斎のテーブルに、先ほどの書類を広げる。
査問会の概要と、参加者の名簿がざっくりと書かれている。そこにはフローラの名前だけでなく、アルト、そして王族関係者の何名かが含まれていた。
どうやら“関係しそうな人物”を一挙に呼び出して、まとめて事情を聞くつもりらしい。
「フローラは当然として、アルトも出席するのね。王族関係者は……あまり名前が知られていないけど、分家の方とかかな」
私が名簿を眺めながら言うと、レオンが肩越しに覗き込み、「あ、この人……遠い昔に会った気がする」と指差す。
「誰? “イザベラ・ルークレティア”……聞いたことないけど」
「覚えてないけど、もしかすると父方の親戚かもしれない。だいぶ遠縁らしいけど、子どものころに会ったような……うわ、記憶が曖昧だ」
レオンが頭を抱える。ギルバートも目を細めながら名簿を確認するが、ピンと来ないらしく、首をかしげる。
「いずれにしても、王族や公爵家の要人が集まる場だ。アデル、レオンさん、カッチリした対応をしないと痛い目を見ますよ」
「わかってるわよ。最初からふざける気なんてないわ。むしろ“悪役令嬢”ってレッテルをいい具合に利用して、開き直ってやるだけ」
私は背もたれに身体を預ける。
フローラが何か小細工を仕掛けてきても、こちらは“正々堂々”と事実を述べればいい。王家の道具についても、ヴィクトリア経由で掴んだ情報をうまく使えば、逆にフローラを追い込むことも可能かもしれない。
「……だけど、やっぱり緊張するわね」
本音を漏らすと、ギルバートとレオンが苦笑する。
「アデルでも緊張するんですね。ちょっと意外です」
「そりゃするわよ。悪役は度胸が据わってるように見えて、実は繊細なんだからね」
軽い冗談を交わしたあと、私たちは具体的な想定問答を始めることにした。
たとえば「なぜレオンと一緒に住んでいるのか」「王家の道具を所持していないか」
「先日の式典で何をしていたのか」――質問を挙げればキリがないが、あらかじめ答え方を考えておくだけでも違うだろう。
「レオンに王家の血筋があるかどうか、ズバリ聞かれたらどう答える?」
ギルバートが尋ねる。レオンは少し考えてから、「正直に答えるしかない」と絞り出すように言った。
「王家の血を引いてるのは事実だから、それを嘘で隠しても逆効果だよね。でも、だからといって“王家に戻る”と表明するつもりもまだない。……難しいけど、保留にしたい」
「保留ってのは“仮登録”みたいな話かしら。確かにその辺はうまく言葉を選ばないと、向こうから“今すぐ戻れ”とか言われる可能性もあるわ」
「うん、それが嫌で捨て猫やってるのに……。とにかく、そこはアデルとギルもフォローしてね」
そんなふうに議論を重ね、書斎にこもって一気に時間が過ぎる。使用人が昼食やお茶を運んでくれるが、それを食べながらも口論に近い形でシミュレーションを行う。
正直、想定問答だけで完璧に乗り切れる保証はないが、何も準備せずに臨むよりはだいぶ安心だ。
査問会の概要と、参加者の名簿がざっくりと書かれている。そこにはフローラの名前だけでなく、アルト、そして王族関係者の何名かが含まれていた。
どうやら“関係しそうな人物”を一挙に呼び出して、まとめて事情を聞くつもりらしい。
「フローラは当然として、アルトも出席するのね。王族関係者は……あまり名前が知られていないけど、分家の方とかかな」
私が名簿を眺めながら言うと、レオンが肩越しに覗き込み、「あ、この人……遠い昔に会った気がする」と指差す。
「誰? “イザベラ・ルークレティア”……聞いたことないけど」
「覚えてないけど、もしかすると父方の親戚かもしれない。だいぶ遠縁らしいけど、子どものころに会ったような……うわ、記憶が曖昧だ」
レオンが頭を抱える。ギルバートも目を細めながら名簿を確認するが、ピンと来ないらしく、首をかしげる。
「いずれにしても、王族や公爵家の要人が集まる場だ。アデル、レオンさん、カッチリした対応をしないと痛い目を見ますよ」
「わかってるわよ。最初からふざける気なんてないわ。むしろ“悪役令嬢”ってレッテルをいい具合に利用して、開き直ってやるだけ」
私は背もたれに身体を預ける。
フローラが何か小細工を仕掛けてきても、こちらは“正々堂々”と事実を述べればいい。王家の道具についても、ヴィクトリア経由で掴んだ情報をうまく使えば、逆にフローラを追い込むことも可能かもしれない。
「……だけど、やっぱり緊張するわね」
本音を漏らすと、ギルバートとレオンが苦笑する。
「アデルでも緊張するんですね。ちょっと意外です」
「そりゃするわよ。悪役は度胸が据わってるように見えて、実は繊細なんだからね」
軽い冗談を交わしたあと、私たちは具体的な想定問答を始めることにした。
たとえば「なぜレオンと一緒に住んでいるのか」「王家の道具を所持していないか」
「先日の式典で何をしていたのか」――質問を挙げればキリがないが、あらかじめ答え方を考えておくだけでも違うだろう。
「レオンに王家の血筋があるかどうか、ズバリ聞かれたらどう答える?」
ギルバートが尋ねる。レオンは少し考えてから、「正直に答えるしかない」と絞り出すように言った。
「王家の血を引いてるのは事実だから、それを嘘で隠しても逆効果だよね。でも、だからといって“王家に戻る”と表明するつもりもまだない。……難しいけど、保留にしたい」
「保留ってのは“仮登録”みたいな話かしら。確かにその辺はうまく言葉を選ばないと、向こうから“今すぐ戻れ”とか言われる可能性もあるわ」
「うん、それが嫌で捨て猫やってるのに……。とにかく、そこはアデルとギルもフォローしてね」
そんなふうに議論を重ね、書斎にこもって一気に時間が過ぎる。使用人が昼食やお茶を運んでくれるが、それを食べながらも口論に近い形でシミュレーションを行う。
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