負け犬の遠吠えは、これくらいにしておきますわ。背を向けた悪役令嬢は捨て猫(イケメン)と共に。

高城セナ

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翌日――

いよいよ査問会の当日。

朝早くから私たちは慌ただしく身支度を整え、王城へ向かう馬車に乗り込んだ。

「心配しなくても、私たちが話すべきことは整理したし、フローラの出方もある程度予想している。レオン、あなたは余計なことを喋らなければ大丈夫。ギル、フォローよろしく」

「任せてください。アデルこそ、感情的になりすぎないでくださいね?」

「わかってるってば……」

王城は昨日までと変わらず壮麗な姿で佇み、門の衛兵は今や私たちを“査問会の出席者”として迎え入れるかのように視線を送ってくる。レオンは窓からその様子を見て、唇を引き結ぶ。

「急に心臓がドキドキしてきた……」

「ここで逃げるわけにはいかないわよ?」

自分にも言い聞かせるように返すと、馬車は正門を通り、やがて王宮の玄関ホールへ。中に通されると、もう既に何名かの参加者が集まり始めていた。

アルトやその他の貴族、そしてフローラの取り巻きらしき影も見える。

「アデル……フローラがいる」

レオンが小声で教えてくれるが、私はわざと目を合わせない。

フローラは傍らに二人の取り巻きを従え、こちらを一瞥しながら冷たい笑みを浮かべている。

あからさまな敵意だが、今は無視するに限る。

すると、アルトがこちらを見つけて歩み寄ってきた。

深い紺色の礼服に身を包み、険しい顔で私たちを見据える。

「来たか、アデル。……準備はいいのか?」

「なによ、あなたに心配されるほど落ちぶれてないわよ」

私がやや棘のある声で応じると、アルトは苦い笑みを浮かべる。

「そうか。俺としては、フローラが下手な策略を使わないように抑えたいんだが……聞く耳を持たないんだよ。お前も気をつけろ。正直、あの女が何をするか俺にも見当がつかない」

「あら、わざわざ忠告ありがとう。でも、私はもうとっくに覚悟してるから」

一言交わし合うだけで、なんとも言えない微妙な空気が漂う。

ギルバートが控えめに咳払いし、「失礼ですが、アルト様もフローラ嬢を止める努力を続けていただけませんか?今からでも遅くないはず」と申し上げる。アルトは言葉少なに「わかった」とうなずく。

やがて、通路の奥から衛兵が姿を現し、
「査問会の席にお入りください」という案内がかかる。大きな扉が開き、私たちは重い足取りでそこへ向かう。

部屋は高い天井を持つ厳粛なホールだが、裁判所のように傍聴人席があるわけではなく、中央に椅子がいくつか配置されている。王家の重職らしき人物や、分家筋の王族たちがテーブルを囲む形で“審問官”のように座っており、私たち“査問対象者”は中央に立たされる構図だ。

「これは本格的ね……」
私は思わずつぶやく。

レオンの顔がさらに青ざめているが、手を握りしめてこちらを見るので、私は無言で頷き返す。

そこにはフローラの姿もあった。アルトと並ぶように席につき、さっそくこちらに挑戦的な視線を送っている。

“悪役令嬢”たる私と、“捨て猫”のレオン。
そして王家の道具を巡る謎。これまでの衝突が一度に集約される舞台――。

「全員おそろいですね。
では、これより査問会を始めます」

中央の王族代表が立ち上がり、
厳かに宣言する。
会場の空気が凍るように張り詰め、
私たちの鼓動が高鳴る音だけが耳に響くような気がした。
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