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第三章 ヴィンセント攻略
神属性の授業・2
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「護身術か……」
アレクシスが独り言のようにポツリと漏らす。
教員は、それをアレクシスの不満の表れと取ったのか、不服そうに眉をひそめた。
「ああ。王子は、城ですでに教えを受けているのでしたな。今更、護身の術など不要ということですか?」
「いや、そうではない。……ただ、少し疑問に思っただけだ」
決して学院の教育方針に文句があるわけではないとアレクシスが弁明すると、教員は続きを促すように首を振る。
「疑問とは?」
「護身術にせよなんにせよ、魔術を使うには魔力操作が必須だろう。だが、魔力を動かすのは一朝一夕にできることではない。早い者でも数ヶ月、遅い者なら半年以上かかるはずだ。そうだな?」
「ええ、おっしゃるとおりです」
「王族である我らはすでに魔力操作には問題ないが、ルシールとステラは魔力を操ったことがない。ほとんど一から始めなければならないはずだ。いつ敵が襲ってくるかわからないこの状況を考えると、少し悠長に構えすぎではないのかと思ったのだ」
「なるほど。王子はご慧眼でいらっしゃる」
教員は大げさにうなずく。
言葉使いは丁寧だが、本心からそう思っているのか、嫌味で言っているのか、見た目からは判断が難しい。
アレクシスも同じことを考えているのか、微妙そうな顔をしていた。
「もちろん我々とて、その点は承知しております。ですので、王子以外の二人には補助用の魔術具を用意するつもりです」
「……なるほど、補助具か」
アレクシスは、その手があったかと言わんばかりにうなずく。
私は小声でアレクシスに尋ねた。
「アレクシス王子。補助具とはなんですか?」
「その名の通り、魔力操作を補助するための魔術具だ。自分の体内にある魔力を感じやすく、動かしやすくしてくれる。一度感覚を掴めれば不要となるのだが、たしかに最初は補助具があった方が覚えは早くなるだろうな」
なるほど。自転車の補助輪みたいなものか。
納得すると同時に、私の中で別の疑問が浮かび上がる。
「でも、そんな便利なものがあるなら、みんな使ってますよね? どうしてさっきは思いつかなかったんですか?」
「補助具は高価だ。使用者の魔力量や属性に合わせて、一人ひとり適したものを職人が作らなければならない。一度感覚を覚えたら使わなくなるものに、いったい誰が金を払う?」
まさかのオーダーメイド制だった。
王族であるアレクシスが高価だと断言するくらいなのだから、信じられないくらい高いのだろう。私の手持ちのお金で払えるだろうか。
ふとステラの方を見ると、平民である彼女は高額と聞いて、ひどく顔を青ざめさせていた。
「私、お金なんて……」
「当然、費用は学院側で負担する。余計な気をもむな」
こめかみを押さえながら、教員が言う。
大金を払う必要がなくなったステラは、ほっと安堵の息を吐く。
「二人共近日中に指定する魔術具店に行って、補助具を作成してくるように。注文の仕方は、王子たちが知っているだろう。補助具が完成次第実技に入るので、なるべく早めに用意するように」
威圧的な教員はそこまで言うと、話は終えたとばかりに教室から出て行く。
その後、いつもの教員による座学が始まったが、私はずっと自分の補助具がどんなものになるのかワクワクして、あまり授業に集中できなかった。
アレクシスが独り言のようにポツリと漏らす。
教員は、それをアレクシスの不満の表れと取ったのか、不服そうに眉をひそめた。
「ああ。王子は、城ですでに教えを受けているのでしたな。今更、護身の術など不要ということですか?」
「いや、そうではない。……ただ、少し疑問に思っただけだ」
決して学院の教育方針に文句があるわけではないとアレクシスが弁明すると、教員は続きを促すように首を振る。
「疑問とは?」
「護身術にせよなんにせよ、魔術を使うには魔力操作が必須だろう。だが、魔力を動かすのは一朝一夕にできることではない。早い者でも数ヶ月、遅い者なら半年以上かかるはずだ。そうだな?」
「ええ、おっしゃるとおりです」
「王族である我らはすでに魔力操作には問題ないが、ルシールとステラは魔力を操ったことがない。ほとんど一から始めなければならないはずだ。いつ敵が襲ってくるかわからないこの状況を考えると、少し悠長に構えすぎではないのかと思ったのだ」
「なるほど。王子はご慧眼でいらっしゃる」
教員は大げさにうなずく。
言葉使いは丁寧だが、本心からそう思っているのか、嫌味で言っているのか、見た目からは判断が難しい。
アレクシスも同じことを考えているのか、微妙そうな顔をしていた。
「もちろん我々とて、その点は承知しております。ですので、王子以外の二人には補助用の魔術具を用意するつもりです」
「……なるほど、補助具か」
アレクシスは、その手があったかと言わんばかりにうなずく。
私は小声でアレクシスに尋ねた。
「アレクシス王子。補助具とはなんですか?」
「その名の通り、魔力操作を補助するための魔術具だ。自分の体内にある魔力を感じやすく、動かしやすくしてくれる。一度感覚を掴めれば不要となるのだが、たしかに最初は補助具があった方が覚えは早くなるだろうな」
なるほど。自転車の補助輪みたいなものか。
納得すると同時に、私の中で別の疑問が浮かび上がる。
「でも、そんな便利なものがあるなら、みんな使ってますよね? どうしてさっきは思いつかなかったんですか?」
「補助具は高価だ。使用者の魔力量や属性に合わせて、一人ひとり適したものを職人が作らなければならない。一度感覚を覚えたら使わなくなるものに、いったい誰が金を払う?」
まさかのオーダーメイド制だった。
王族であるアレクシスが高価だと断言するくらいなのだから、信じられないくらい高いのだろう。私の手持ちのお金で払えるだろうか。
ふとステラの方を見ると、平民である彼女は高額と聞いて、ひどく顔を青ざめさせていた。
「私、お金なんて……」
「当然、費用は学院側で負担する。余計な気をもむな」
こめかみを押さえながら、教員が言う。
大金を払う必要がなくなったステラは、ほっと安堵の息を吐く。
「二人共近日中に指定する魔術具店に行って、補助具を作成してくるように。注文の仕方は、王子たちが知っているだろう。補助具が完成次第実技に入るので、なるべく早めに用意するように」
威圧的な教員はそこまで言うと、話は終えたとばかりに教室から出て行く。
その後、いつもの教員による座学が始まったが、私はずっと自分の補助具がどんなものになるのかワクワクして、あまり授業に集中できなかった。
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