ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど

gacchi(がっち)

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16.うれしい報告

その日の夕食時、伯父様と伯母様にお友達ができてことを報告する。
ジェラルド兄様には帰りの馬車の中ですでに報告済みだ。

「ほほう。中立派のエンデ伯爵家を取り込むとは。
 さすがだな、ジュリアンヌ」

「取り込むだなんて。ただ、お友達になってくれただけよ?」

「いや、エンデ伯爵家のマリエット嬢の話は聞いたことがある。
 嫡子としてもうすでに伯爵の手伝いをしているとか」

「ええ、中等部には通わずに領主教育を受けていると評判でしたわ」

「そうなの?」

言われてみればマリエット様も高等部からの入学だった。
エンデ伯爵家も王都に屋敷があるはずなのにどうしてと思っていたが、
領主教育のために通わなかったとは。

「そのマリエット嬢がジュリアンヌと友人になるというのは、
 次の代は推進派になるということだろう」

「そういえば、派閥は任されているとか言っていたような……」

「では、そういうことで間違いないだろう」

「……お友達ができたと簡単に考えていたわ」

派閥とか考えなくてはいけないと兄様に言われていたのに。
初めて友人ができたことがうれしくて浮かれていた。

「いいんだよ、ジュリアンヌはそれで。
 まずかったら俺が止めているし」

「兄様は私に甘過ぎよ」

「甘いくらいでちょうどいいんだよ。
 ジュリアンヌはがんばりすぎるからな」

「もう!」

たしかに私が間違っていたら兄様は止めてくれるだろう。
だけど、それではいつまでたっても兄様から離れられない。

兄様が高等部を卒業するまで一年しかない。
それまでにしっかりできるようになるだろうか。

私と兄様が言い合っていると、伯父様がそれを止めるように話題を変えた。

「そういえば、イフリア公爵家には苦情を言っておこう」

「え?ああ、今回のは苦情を言わなくてもいいわ」

「どうしてだ?」

「だって、シュゼット様は私だとわかっていなかったもの。
 地方貴族だと思って声をかけてきたようだったわ。
 だから、今回のは怒らなくてもいいかなって」

「それはそうかもしれないが……。
 では、レドアル公爵令嬢だとわかったのだから、
 次に無礼なことをしてきた時は許さないからね。
 それは理解しておきなさい」

「はい、伯父様。わかっているわ。
 次からは私も許さないから」

「ああ、わかっているならいいよ」

「俺からきつく言っておこうか?」

「ううん、兄様は言わなくていい」

断ったら不満そうな顔をしているけれど、
できるかぎり兄様とシュゼット様を会わせたくない。

「もう大丈夫よ。お友達もいるんだから。
 何かあったら言い返すし、問題があったら報告するから」

「……ちゃんと報告しろよ」

少し気まずくなってしまいそうだったけれど、
伯母様が楽しそうに私と兄様に次の休日の予定を告げた。

「そうそう、次の休みの日は仕立て屋を呼んだから。
 二人とも忘れないでおいてね」

「仕立て屋?」

「ええ、そうよ。三か月後に夜会が開かれるでしょう。
 ジュリアンヌは初めての夜会ね。
 どんなドレスにするか楽しみだわ」

「夜会……そうよね、今年は私も出席しなきゃいけないんだ」

三か月後、夏を迎える前に夜会が開かれる。
王家主催の夜会が開かれた後は社交シーズンとなり、
いろんな貴族家で夜会が開かれることになる。

ここレドアル公爵家では数年開かれたことはない。
私の存在をずっと隠していたからだ。
もしかしたら今年は開くつもりなのかもしれない。

伯父様と伯母様、兄様は王家主催の夜会にだけ出席して、
他の貴族家からの誘いはすべて断っていた。
それも今年から変えるのだろうか。

「ジュリアンヌ、夜会のパートナーは俺だからな。
 誰に誘われても断れよ」

「え?兄様がパートナーになってくれるの?」

「ああ。俺以外に誰がなるっていうんだ」

「私がしてもいいんだがな、残念ながら愛しい妻がいる。
 仕方なくジェラルドに譲ってやろう」

「伯父様ってば。ふふふ。ありがとう。
 じゃあ、兄様にお願いするわ」

「ああ」

初めての夜会に緊張するかもと思っていたけれど、
兄様が一緒ならと心が軽くなる。

「お前たち、夜会の前に試験があることを忘れるなよ」

「わかっているけど、ジュリアンヌなら大丈夫だろう」

「試験?」

「年に三度あるんだ。上位十位までは名前が張り出される。
 きっとジュリアンヌの名前も入ると思うよ」

「ジェラルドは高等部に入ってからずっと一位だな」

「え?ずっと一位なんて兄様すごいのね!」

「あ、ああ。ありがとう」

褒められたのが恥ずかしかったのか、少しだけ耳が赤くなる。
兄様が賢いのはわかっていたけれど、ずっと一位なのはすごいと思う。

「第二王子の成績は良くないの?」

「そうだな。十位以内に入ったことはないと思う。
 俺の次にいつもいるのはアゼリマ侯爵家のシャルロット嬢だ」

「令嬢なのにすごいのね。
 アゼリマ侯爵家は中立派の筆頭家よね」

派閥の話になったからか、伯父様が答えてくれる。
中立派は公爵家がいないので、アゼリマ侯爵家が一番上なはず。

「ああ、中立派の筆頭家だ。
 嫡子は長男だが、すでに学園を卒業している。
 令嬢が家を継ぐなら、第二王子の婿入り先に選ばれたんだろうが」

「シャルロット嬢は優秀ではあるが、俺は苦手だな……」

「苦手?」

見れば、本当に嫌そうな顔をしている。
同じ学年の令嬢と何があったのだろうか。

「アゼリマ侯爵家からは何度もジェラルドに見合いの打診が来ている。
 もちろん、全部断っているけどね」

「見合い?」


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