これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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15.呼び出し

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さっぱりして浴室からでると、アルフレッド様も湯あみをしに行く。

置いてあった水差しからコップに水をそそいで飲んでいると、ドアがノックされる。

アルフレッド様はまだ浴室にいるけれど、
私が返事をしていいものだろうか。

仕方なく、ドアの近くまでいって返事をすることにした。

「はい、どなた?」

「え?あ、アズです!」

アルフレッド様の侍従のアズだった。
用がなければ侍従も来ないと言っていた。
何かあったのだろうか。

「どうかした?アルフレッド様は湯あみの最中なのだけど」

「え……そうですか。また来ます!」

アズは用事も言わないで行ってしまった。
私が聞いていい用事じゃなかったのかもしれないと、
アルフレッド様が湯あみを終えるのを待つ。

少ししてアルフレッド様が出て来たので、コップに水を注いで渡す。

「ああ、ありがとう」

「先ほどアズが来ました」

「アズが?」

「また来ると言っていましたよ」

「そうか……」

誰も宮の中にいないのは不便ではないのだろうか。
侍従ですら用がなければ来ないなんて。

半刻ほどしてまたドアがノックされる。
アルフレッド様がドアを開けると、そこには困った顔のアズがいた。

「なんだ」

「あの……シンディ様がお怒りで、何度も連絡が来ています」

「シンディが?」

「昨日、アルフレッド様が来なかったと怒っているそうです。
 お茶の約束をしたのにと言っているみたいですが」

「約束などしていない」

そういえばシンディ様は一方的に言いたいことを言って謁見室から出て行った。
シンディ様の宮で待つと言っていたが……あれを約束とは言えないだろう。

「それで、アルフレッド様を連れて来てほしいと」

「断る。俺は忙しいと伝えておけ」

「その答えではシンディ様は怒ると思いますが……」

「怒ったところで問題ない。
 今後は一切わがままにつき合う気はないと伝えてくれ」

「えええぇ……私がそれを言うのですかぁ?」

「それがお前の仕事だろう」

「ううぅ……わかりました」

シンディ様に怒られるのが嫌なのか、
アズは泣きそうな顔で出て行った。

「あんな伝言して大丈夫でしょうか」

「気が弱いところもあるが大丈夫だろう。あれでも宰相の息子なんだ」

「そうなんですか」

「いくら王女でも宰相の息子で俺の侍従を首にする権限はない。
 せいぜい怒鳴って泣き叫ぶくらいのものだ」

「……アズは大変ですね」

昨日ほんの少し聞いただけだけど、
シンディ様の話し方は本当に鳥のさえずりのように聞こえた。
あれで怒鳴られたら耳が痛いだろうな。

アルフレッド様がベルコヴァの話し方を嫌いになるのもわかる気がした。



二人とも湯あみを終えた後はすることもなかったので、
まずは身体を休めようとソファに座って本を読む。

アントシュ国についての歴史や地理は一通り覚えたけれど、
ベルコヴァ国については知らないことの方が多い。

アルフレッド様に本を選んでもらって、この国について学ぶ。
しばらくはこの国でお世話になるし、一時的にとはいえ王女になる。
自国について何も知らないわけにはいかない。

読み進めていると、またドアがノックされた。
アルフレッド様がドアを開けると知らない男性がいた。

「アキムか。どうしたんだ」

「シンディ様がお呼びです」

「お前もなのか?さっきアズが来て断ったばかりだぞ」

「シンディ様が悲しんでいらっしゃいます。
 少しくらいわがままを聞いてあげてもいいのではないですか?」

アキムはシンディ様に同情しているのか、
不満そうな顔を隠しもしなかった。

「シンディのわがままを聞く気はない。もうシンディの件で呼びにくるな」

「お考え直しください。
 一か月以上も会えなかったのですから。
 シンディ様もさみしかったのでは?」

「はぁぁぁ。しつこいな」

どうしてもアルフレッド様を連れて行きたいのか、
アキムは引き下がらなかった。

「アルフレッド様。私、シンディ様にお会いしたいです」

「は?」

「こちらの宮にシンディ様をお呼びするのはどうでしょう?」

「ここに呼ぶ?どうしてだ??」

「姉妹になったのですから。
 挨拶くらいしておいた方がいいでしょう?」

「……それはそうだが」

「ここは私に任せてもらえませんか?」

「……わかった。
 アキム、シンディに話がしたいならこちらに来いと伝えてくれ。
 ただし、侍女は連れて来るな」

「わ、わかりました!」

いい返事ができるのがうれしいのか、アキムは満面の笑みで出て行った。

「シンディはまともな王女ではないぞ?」

「ですが、このままでは一時間おきに呼びに来られるのでは?
 侍従たちもかわいそうです」

「そうかもしれないが……」

「シンディ様につきまとわれて困っているのでしょう?
 一度会って、私と婚約したことを伝えたほうが効果的ではないでしょうか」

「そうか。……たしかにそうかもしれない。
 ただ、ひどいことを言われるかもしれないぞ」

「そのくらいは耐えてみせます。
 アルフレッド様の婚約者なのですから」

「そうか……では、頼んだ」



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