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19.突然の求婚
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「……お前、俺のセレスティナに手を出したのか!?」
「マルセル様、気持ち悪いこと言わないでください。
私は形だけの婚約者になっていただけで、マルセル様の恋人ではありません。
婚約を解消したのですから、誰と婚約したところで責められる理由はありません」
「だが、俺のものになるはずだっただろう!」
「聖女が落ちてくることは予測していました。
マルセル様のものになると思ったことなど一度もありません。
好きじゃなかったと言われて腹を立てているのでしょうけど、
子どもっぽい嫌がらせはやめてくださいね」
「……」
図星だったのか、マルセル様は真っ赤な顔で黙る。
「では、すべては元通り、マルセル様が学園を卒業すれば結婚式になります。
マルセル様、あかり様、よろしいですね?」
「……ああ」
「……わかったわ」
どちらも渋々という顔だが、これでいい。
聖女を部屋に送り届け、女官たちにはもう一度きつく叱っておいた。
王太子の婚約者を死なせたとなれば、全員が処刑されるだけでなく、
家族まで処罰されることを言い含める。
そして、私は王太子の婚約者に戻ることはありえないと伝えると、
ようやく女官たちも聖女の世話をすることを納得してくれた。
これで一応は大丈夫になったはずだけど……。
王宮から帰る道……考え込んでいるとルカスに心配される。
「セレスティナ様、何かまだ問題でも?
俺に出来ることがあるなら、何でも言ってください」
「なんでも?」
「はい」
「じゃあ、今すぐ結婚して」
「……それはどういうことですか?」
私がふざけて言っているのではないとわかったのか、
ルカスも真剣に聞き返してくる。
「マルセル様もあかり様も、女官たちも。
まだ何が起きるかわからないわ」
「今日のようなことがまた起きると思っているんですね?」
「ええ、そうよ。マルセル様がめんどうになって王太子を下りて、
公爵家の婿になって遊んで暮らすと言い出すかもしれない。
あかり様が他の貴族を捕まえてそちらと結婚すると言い出すかもしれない。
女官たちが処刑覚悟であかり様を追い出してしまうかもしれない」
「そうなったら……」
「陛下に命令される可能性があるわ。
マルセル様と結婚しろと」
あの陛下のことだから、それが解決方法だと思えば、
私のことなど気にせずに命令するだろう。
「……陛下から、婿を選んでいい権利を褒美でもらったのでは」
「マルセル様との結婚が褒美だと言われたら、もう何も言えないわ」
「そんな……」
おそらく陛下は王族との結婚はこれ以上ない至福だと考えている。
だからこそ、王族との婚約は断ると先に言ったのだ。
マルセル様の代わりに誰かをと言われないように。
「だから、今のうちに。
マルセル様とあかり様が婚約しているうちに、
もう二度と王族の妃になれないように抱いてほしいの」
「っ!!」
驚いたのか、ルカスは後ろへと下がろうとした。
馬車の中だから、逃げ場なんてないのに。
「……やっぱり、ダメ?
ルカスにとっては、まだ私は幼い時の印象のままなのかしら」
婚約はしたけれど、手をつなぐ以上のことはされない。
そっとエスコートされるのが精一杯で、婚約者にはみえない。
年の差は大きくなれば気にならなくなると思っていたけれど、
いつになったら女性として見てもらえるの……。
「……セレスティナ様、失礼しますね」
「えっ……きゃあ」
隣に座っていたのに、抱き上げられてひざの上に座らされる。
その勢いでルカスの胸に顔をうずめるようになって、一気に顔が熱くなる。
「え?え?」
「結婚するのでしょう?」
「ルカス?」
「これくらいのことで真っ赤になっていて、できるのですか?」
「だって……それは。男性に慣れていないんだもの。
顔が赤くなるのは仕方ないでしょう……」
「マルセル様のことは好きではなかったと言っていましたね。
手を出されないために愛妾を世話していたと」
「そうよ」
「では……」
ルカスの指が私の頬にふれ、唇を撫でた。
「キスをしたことは?」
「……ないわ」
「本当に?」
「夜会でエスコートされる時以外にふれられたことはないもの」
「そうですか。では、セレスティナ様の初めてはすべて俺がいただきますね」
「え……もらってくれるの?」
「結婚するのでしょう?」
「ええ!……ありがとう」
必死でマルセル様から逃げていてよかった。
この身体のすべてをルカスに初めてあげることができる。
ゆっくりルカスの顔が近づいてきたと思ったら、そっと唇が重なる。
ルカスのほうが体温が高いのを知って、本当にキスしているのだと実感できた。
何度もついばむようにキスをされて、身体の力が抜けていく。
それに気がついたのか、ルカスは唇を離すと私の身体をぎゅっと抱きしめた。
「あとは屋敷に帰ってからです。
……それまでに覚悟は決めておいてくださいね」
「……うん」
「マルセル様、気持ち悪いこと言わないでください。
私は形だけの婚約者になっていただけで、マルセル様の恋人ではありません。
婚約を解消したのですから、誰と婚約したところで責められる理由はありません」
「だが、俺のものになるはずだっただろう!」
「聖女が落ちてくることは予測していました。
マルセル様のものになると思ったことなど一度もありません。
好きじゃなかったと言われて腹を立てているのでしょうけど、
子どもっぽい嫌がらせはやめてくださいね」
「……」
図星だったのか、マルセル様は真っ赤な顔で黙る。
「では、すべては元通り、マルセル様が学園を卒業すれば結婚式になります。
マルセル様、あかり様、よろしいですね?」
「……ああ」
「……わかったわ」
どちらも渋々という顔だが、これでいい。
聖女を部屋に送り届け、女官たちにはもう一度きつく叱っておいた。
王太子の婚約者を死なせたとなれば、全員が処刑されるだけでなく、
家族まで処罰されることを言い含める。
そして、私は王太子の婚約者に戻ることはありえないと伝えると、
ようやく女官たちも聖女の世話をすることを納得してくれた。
これで一応は大丈夫になったはずだけど……。
王宮から帰る道……考え込んでいるとルカスに心配される。
「セレスティナ様、何かまだ問題でも?
俺に出来ることがあるなら、何でも言ってください」
「なんでも?」
「はい」
「じゃあ、今すぐ結婚して」
「……それはどういうことですか?」
私がふざけて言っているのではないとわかったのか、
ルカスも真剣に聞き返してくる。
「マルセル様もあかり様も、女官たちも。
まだ何が起きるかわからないわ」
「今日のようなことがまた起きると思っているんですね?」
「ええ、そうよ。マルセル様がめんどうになって王太子を下りて、
公爵家の婿になって遊んで暮らすと言い出すかもしれない。
あかり様が他の貴族を捕まえてそちらと結婚すると言い出すかもしれない。
女官たちが処刑覚悟であかり様を追い出してしまうかもしれない」
「そうなったら……」
「陛下に命令される可能性があるわ。
マルセル様と結婚しろと」
あの陛下のことだから、それが解決方法だと思えば、
私のことなど気にせずに命令するだろう。
「……陛下から、婿を選んでいい権利を褒美でもらったのでは」
「マルセル様との結婚が褒美だと言われたら、もう何も言えないわ」
「そんな……」
おそらく陛下は王族との結婚はこれ以上ない至福だと考えている。
だからこそ、王族との婚約は断ると先に言ったのだ。
マルセル様の代わりに誰かをと言われないように。
「だから、今のうちに。
マルセル様とあかり様が婚約しているうちに、
もう二度と王族の妃になれないように抱いてほしいの」
「っ!!」
驚いたのか、ルカスは後ろへと下がろうとした。
馬車の中だから、逃げ場なんてないのに。
「……やっぱり、ダメ?
ルカスにとっては、まだ私は幼い時の印象のままなのかしら」
婚約はしたけれど、手をつなぐ以上のことはされない。
そっとエスコートされるのが精一杯で、婚約者にはみえない。
年の差は大きくなれば気にならなくなると思っていたけれど、
いつになったら女性として見てもらえるの……。
「……セレスティナ様、失礼しますね」
「えっ……きゃあ」
隣に座っていたのに、抱き上げられてひざの上に座らされる。
その勢いでルカスの胸に顔をうずめるようになって、一気に顔が熱くなる。
「え?え?」
「結婚するのでしょう?」
「ルカス?」
「これくらいのことで真っ赤になっていて、できるのですか?」
「だって……それは。男性に慣れていないんだもの。
顔が赤くなるのは仕方ないでしょう……」
「マルセル様のことは好きではなかったと言っていましたね。
手を出されないために愛妾を世話していたと」
「そうよ」
「では……」
ルカスの指が私の頬にふれ、唇を撫でた。
「キスをしたことは?」
「……ないわ」
「本当に?」
「夜会でエスコートされる時以外にふれられたことはないもの」
「そうですか。では、セレスティナ様の初めてはすべて俺がいただきますね」
「え……もらってくれるの?」
「結婚するのでしょう?」
「ええ!……ありがとう」
必死でマルセル様から逃げていてよかった。
この身体のすべてをルカスに初めてあげることができる。
ゆっくりルカスの顔が近づいてきたと思ったら、そっと唇が重なる。
ルカスのほうが体温が高いのを知って、本当にキスしているのだと実感できた。
何度もついばむようにキスをされて、身体の力が抜けていく。
それに気がついたのか、ルカスは唇を離すと私の身体をぎゅっと抱きしめた。
「あとは屋敷に帰ってからです。
……それまでに覚悟は決めておいてくださいね」
「……うん」
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