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48.全部すっきりさせよう
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「シリウス様の婚約者である私を殺そうとしたのよ。
何もお咎めがないわけないじゃない。
本当なら死罪だったのをこちらに引き渡してもらったの。
だって、死んだら終わりなんて許せないのよ。
お父様は今も苦しんでいるのに」
「……私たちをどうするつもりなのよ」
「ふふ。さぁ、どうなるかしら。
貴族ではなくなって平民になって生きることになるんじゃない?
ジネットだって、私がロドルフ様の婚約者でなくなった時に、
喜んで屋敷から追い出そうとしたでしょう?
あの時、私がどうなると思っていたの?」
「それは……」
屋敷を出る時に話したのはジネットだけど、
お義母様も私がいなくなって喜んでいたと後から聞いた。
貴族令嬢を無一文で放り出して、どうなると思っていたんだろう。
「それと同じことをするだけよ?
五人一緒なだけ優しいと思うけど。
さぁ、連れていってちょうだい」
「待って!謝るから!ナディア!」
「そうよ!娘たちがしたことは謝るわ!
私たちはほら、関係ないでしょう?」
私を殺そうとしたのは娘たちだと言い出したけれど、
けしかけていたのは忘れたのだろうか。
「関係ないわけないじゃない。
二人が相談して決めていたの知っているわよ。
お父様を苦しめていたくせに信じられない」
「それは……お父様がしたことで」
「そう。それでもやられたほうには関係ないわ。
衛兵、連れて行ってくれる?」
「待ちなさい、ナディア!……待って!お願い!」
「お願いします!助けてください!」
「いやよ!私の家はここよ!」
五人もいるとかなりうるさい。
これ以上話していてもどうせ反省はしないだろうから、
モフロワ公爵家に連れて行ってもらおう。
ああ、そういえば魔力封じの腕輪の説明を忘れていた。
魔力を封じたから魔術は一切使えないし、
魔力を使えなかった私と同じで魔力が身体に蓄積していく。
数か月もすれば身体が太り始め、
そのうち自分の魔力でつぶされて死ぬことになる。
まぁ、それまで生きていればの話だけど。
五人が運ばれた後、隠れていたシリウス様とクラデル侯爵が出て来る。
この二人がいたら五人は私に文句を言わないかもしれないと思い、
隠れて聞いてもらうことにしていた。
もし二人がいたら、許してもらおうと必死になって謝っていただろう。
許す気なんてないのに謝られたら逆に腹が立つ。
あれだけ反省しないのがわかれば、この後何が起きても罪悪感はない。
「使用人たちはどうする?」
「えっと、お父様が契約したのでなければ無効ですよね。
出て行ってもらいましょう」
「そうだな。衛兵、一人ずつ確認して追い出してくれ」
「あ、ほとんどの使用人がそうだと思います。
料理人と庭師は前からいたと思いますが、
他は入れ替えているんじゃないでしょうか」
「そうか。では、確認次第どんどん追い出すように」
転がされるようにされていた使用人たちから悲鳴のような声が聞こえる。
せめて紹介状をという声がどこからか聞こえたが、書く気はない。
「私がここにいた時、嫌がらせをしていたの忘れたの?
そのまま紹介状に書いてもいいなら書くけど」
さすがにそれはまずいのか使用人たちが口をつぐむ。
どっちにしてもお義母様たちがここを乗っ取っていたのは知られるのだから、
今後どこにいっても貴族の屋敷で働くことはできないだろうけど。
とぼとぼと歩かされて使用人たちが出て行く。
残った使用人は十人もいない。
もっとも、お父様の体調が回復したとしても、
アンペール侯爵家の領主としての仕事は難しい。
この領地と爵位はクラデル侯爵家の預かりになる。
返上しなくてはいけないかと思ったけれど、
シリウス様がそれでは悔しいだろうと言って止めてくれた。
この領地、爵位はナディアのものだからと。
それがうれしかったので好意に甘えることにした。
「やり残したことはないか?」
「ええ、あとはどうなるか待とうと思います」
「そうか。あとのことは詳しく報告させる」
「ありがとうございます」
ようやく終わった。
この屋敷にいた時、楽しかった思い出なんてない。
それでも誰かに奪われたままなのは悔しかった。
お母様、私やり切ったかな。
「お義父様、お母様ならこれで満足したと思いますか?」
「そうだな。もっと暴れたかもしれないが、
これはこれでどうなっても自業自得の罪というか、
もっと面白いことになるんじゃないかな」
「そうですか」
直接暴れて、うっかり死なせでもしたら。
さすがにそれは心に残りそうな気がする。
この報復を終えたら、きれいさっぱり忘れようと思っているから、
直接手を下すことはしないことにした。
「ところで、リンデル。これでもうこの件は終了した。
俺とナディアの結婚を認めるんだろうな?」
「認めてもいいけど、二週間後ね」
「は?」
「この結果を見ないと報復は終わらないだろう。
それと、今すぐ結婚ってわけにはいかないからな。
ここで認めたらシリウスはすぐにナディアをつれて寝室にこもる気だろう。
女性には初夜を迎えるための準備ってものがあるんだからな!」
「お前は結婚したこともないくせに」
「ない。だが、そのくらいは知っている。
シリウスの屋敷の使用人たちには命じてある。
今日から初夜を迎える準備をするようにと。
大事な姪っ子だ。リアーヌに怒られるようなことはしないでくれ」
「……わかった。二週間後だな」
「ああ」
どうやら私とシリウス様の結婚が二週間後に決まったらしい。
報復ができて、興奮状態にあったからか、
どちらでもいいかななんて軽く思ってしまっていた。
シリウス様に抱きしめられ、そのまま転移し、
屋敷に戻ってきた途端に使用人たちに囲まれる。
「なんだ、お前たち」
「ナディア様の準備を始めるようにと言われております。
どうぞ、こちらへ」
「え、あ、はい」
落ち着いた年齢の女性使用人たちに囲まれ、
その迫力に負けて素直についていく。
それからは言われるままに結婚への準備が進められていく。
食事と寝る時くらいしかシリウス様に会うことができず、
あっという間に十日が過ぎた。
あまりにも意識が結婚に向いていたからか、
報復の結果が報告された時には忘れかかっていたくらいだった。
何もお咎めがないわけないじゃない。
本当なら死罪だったのをこちらに引き渡してもらったの。
だって、死んだら終わりなんて許せないのよ。
お父様は今も苦しんでいるのに」
「……私たちをどうするつもりなのよ」
「ふふ。さぁ、どうなるかしら。
貴族ではなくなって平民になって生きることになるんじゃない?
ジネットだって、私がロドルフ様の婚約者でなくなった時に、
喜んで屋敷から追い出そうとしたでしょう?
あの時、私がどうなると思っていたの?」
「それは……」
屋敷を出る時に話したのはジネットだけど、
お義母様も私がいなくなって喜んでいたと後から聞いた。
貴族令嬢を無一文で放り出して、どうなると思っていたんだろう。
「それと同じことをするだけよ?
五人一緒なだけ優しいと思うけど。
さぁ、連れていってちょうだい」
「待って!謝るから!ナディア!」
「そうよ!娘たちがしたことは謝るわ!
私たちはほら、関係ないでしょう?」
私を殺そうとしたのは娘たちだと言い出したけれど、
けしかけていたのは忘れたのだろうか。
「関係ないわけないじゃない。
二人が相談して決めていたの知っているわよ。
お父様を苦しめていたくせに信じられない」
「それは……お父様がしたことで」
「そう。それでもやられたほうには関係ないわ。
衛兵、連れて行ってくれる?」
「待ちなさい、ナディア!……待って!お願い!」
「お願いします!助けてください!」
「いやよ!私の家はここよ!」
五人もいるとかなりうるさい。
これ以上話していてもどうせ反省はしないだろうから、
モフロワ公爵家に連れて行ってもらおう。
ああ、そういえば魔力封じの腕輪の説明を忘れていた。
魔力を封じたから魔術は一切使えないし、
魔力を使えなかった私と同じで魔力が身体に蓄積していく。
数か月もすれば身体が太り始め、
そのうち自分の魔力でつぶされて死ぬことになる。
まぁ、それまで生きていればの話だけど。
五人が運ばれた後、隠れていたシリウス様とクラデル侯爵が出て来る。
この二人がいたら五人は私に文句を言わないかもしれないと思い、
隠れて聞いてもらうことにしていた。
もし二人がいたら、許してもらおうと必死になって謝っていただろう。
許す気なんてないのに謝られたら逆に腹が立つ。
あれだけ反省しないのがわかれば、この後何が起きても罪悪感はない。
「使用人たちはどうする?」
「えっと、お父様が契約したのでなければ無効ですよね。
出て行ってもらいましょう」
「そうだな。衛兵、一人ずつ確認して追い出してくれ」
「あ、ほとんどの使用人がそうだと思います。
料理人と庭師は前からいたと思いますが、
他は入れ替えているんじゃないでしょうか」
「そうか。では、確認次第どんどん追い出すように」
転がされるようにされていた使用人たちから悲鳴のような声が聞こえる。
せめて紹介状をという声がどこからか聞こえたが、書く気はない。
「私がここにいた時、嫌がらせをしていたの忘れたの?
そのまま紹介状に書いてもいいなら書くけど」
さすがにそれはまずいのか使用人たちが口をつぐむ。
どっちにしてもお義母様たちがここを乗っ取っていたのは知られるのだから、
今後どこにいっても貴族の屋敷で働くことはできないだろうけど。
とぼとぼと歩かされて使用人たちが出て行く。
残った使用人は十人もいない。
もっとも、お父様の体調が回復したとしても、
アンペール侯爵家の領主としての仕事は難しい。
この領地と爵位はクラデル侯爵家の預かりになる。
返上しなくてはいけないかと思ったけれど、
シリウス様がそれでは悔しいだろうと言って止めてくれた。
この領地、爵位はナディアのものだからと。
それがうれしかったので好意に甘えることにした。
「やり残したことはないか?」
「ええ、あとはどうなるか待とうと思います」
「そうか。あとのことは詳しく報告させる」
「ありがとうございます」
ようやく終わった。
この屋敷にいた時、楽しかった思い出なんてない。
それでも誰かに奪われたままなのは悔しかった。
お母様、私やり切ったかな。
「お義父様、お母様ならこれで満足したと思いますか?」
「そうだな。もっと暴れたかもしれないが、
これはこれでどうなっても自業自得の罪というか、
もっと面白いことになるんじゃないかな」
「そうですか」
直接暴れて、うっかり死なせでもしたら。
さすがにそれは心に残りそうな気がする。
この報復を終えたら、きれいさっぱり忘れようと思っているから、
直接手を下すことはしないことにした。
「ところで、リンデル。これでもうこの件は終了した。
俺とナディアの結婚を認めるんだろうな?」
「認めてもいいけど、二週間後ね」
「は?」
「この結果を見ないと報復は終わらないだろう。
それと、今すぐ結婚ってわけにはいかないからな。
ここで認めたらシリウスはすぐにナディアをつれて寝室にこもる気だろう。
女性には初夜を迎えるための準備ってものがあるんだからな!」
「お前は結婚したこともないくせに」
「ない。だが、そのくらいは知っている。
シリウスの屋敷の使用人たちには命じてある。
今日から初夜を迎える準備をするようにと。
大事な姪っ子だ。リアーヌに怒られるようなことはしないでくれ」
「……わかった。二週間後だな」
「ああ」
どうやら私とシリウス様の結婚が二週間後に決まったらしい。
報復ができて、興奮状態にあったからか、
どちらでもいいかななんて軽く思ってしまっていた。
シリウス様に抱きしめられ、そのまま転移し、
屋敷に戻ってきた途端に使用人たちに囲まれる。
「なんだ、お前たち」
「ナディア様の準備を始めるようにと言われております。
どうぞ、こちらへ」
「え、あ、はい」
落ち着いた年齢の女性使用人たちに囲まれ、
その迫力に負けて素直についていく。
それからは言われるままに結婚への準備が進められていく。
食事と寝る時くらいしかシリウス様に会うことができず、
あっという間に十日が過ぎた。
あまりにも意識が結婚に向いていたからか、
報復の結果が報告された時には忘れかかっていたくらいだった。
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