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49.連れて行かれた先は(ジネット)
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「引っ張らないで!」
「私にふれないでちょうだい!」
私たちが抗議しても衛兵たちは何一つ反応しない。
物を引きずるような感じで連れて行かれる。
乗せられたのは馬車ではなく、荷馬車だった。
それこそ荷物を積むように乗せられ、そのまま動き始める。
「お母様……私たちどこに連れて行かれるの?」
「多分、お父様のところだと思うけど……」
「お祖父様の?モフロワ公爵家?」
そういえばナディアがそんなことを言っていた気がする。
「でも……お祖父様とお祖母様は捕まったって……」
「そんなの嘘だわ。お父様には陛下だって逆らえないのよ。
ナディアが嘘をついたに決まっているじゃない」
「そ、そうよね……」
だったら、どうしてここに衛兵がいるのか、
私たちがこんな目に遭うのかと聞きたかったけれど、
はっきりさせるのが怖くて黙った。
伯母様とレベッカもそうなのか、
黙って唇を噛んでこの屈辱に耐えている。
ただ一人、ルーミアは不安で黙っていられないのか、
やたらと私へ話しかけてくる。
「ジネット様、本当に大丈夫なのでしょうか?
まさかナディアがシリウス様の婚約者だなんて……。
知らなかったからと謝ったら許してもらえるでしょうか?」
「……あんなの嘘よ。
ナディアはクラデル侯爵家の血を引いているといっても、
ただの親戚にすぎないのよ。
その証拠にあの場にはナディアしかいなかったじゃない。
魔術師が婚約者を一人にするようなことはないはずよ」
「そうですよね……じゃあ、あれは嘘だったんですね。
もしかしたらお父様とお母様が私と捨てたというのも嘘?」
「そうかもしれないわね」
ルーミアを協力させたのは私だけど、
まさかアンペール侯爵家に押しかけて来るなんて思わなかった。
ポワズ子爵家はルーミアを捨てたから責任をとれと言われたけれど、
そこまで面倒を見る気はなかった。
すぐに放り出そうと思っていたのに、
その前にナディアによって私たちが追い出される羽目になった。
アンペール侯爵家を継ぐのは私のはずなのに。
お祖父様に言えば取り戻せるはず。
衛兵たちはまっすぐにモフロワ公爵家に向かっているようだ。
どこか知らないところに連れて行かれるのではないとわかりほっとする。
少しして、モフロワ公爵家に着いたが、
そこはアンペール侯爵家と同じように衛兵たちが囲んでいた。
「どういうことなの!?」
「お父様はどこ!」
お母様と伯母様が叫ぶけれど、誰からも返事はない。
荷馬車のまま屋敷に入ったと思えば、すぐに降ろされる。
玄関からは伯父様が慌てて出てきた。
「お兄様!」
「助けて!ひどい目に遭ったのよ!」
「ひどい目に遭ったのはこっちのほうだ!
お前たち、なんてことをしてくれたんだ!」
「「え?」」
助けを求めたお母様と伯母様に、伯父様が怒鳴り返した。
いつも優しい伯父様が怒鳴ったことにお母様たちも驚いている。
「父上と母上は王宮に連れて行かれた。
戻って来ることはないそうだ」
「そんな!」
「まさか、本当だったの!?」
お祖父様とお祖母様が王宮に連れて行かれたなんて。
ナディアの父親を監禁した罪と横領だとか言っていた?
侯爵家の当主を監禁して税を奪っていたとしたら、
家を乗っ取ったことになる……。
その罪が本当だとわかれば、お祖父様たちは処刑されてしまう。
「俺もその罪にかかわっているんじゃないかと疑われている。
……知っていて止めなかったのだから同罪だと言われてもおかしくはない」
「お兄様まで捕まったら、私たちはどうなるの?」
「そうよ!この家がなくなったら、どうなってしまうの?」
「……お前たちのせいだというのに自分の心配か。
はぁぁ。まぁ、いい。
それなら俺だって冷静に対応するだけだ」
「……お兄様?」
どこか焦っていたような伯父様の顔が冷たいものに変わる。
その顔が衛兵たちと同じような気がして寒気がする。
……何をする気なの?
「お前たちを平民として暮らせるようにしろと命じられた」
「は?平民?」
「私たちが?そんなのできるわけないじゃない!」
「できなくてもさせる。
そうすれば、俺は処罰されることになっても、
息子にモフロワ公爵家を継がせてもいいと言われた」
「アルバンに?」
従兄のアルバンとはあまり仲良くはない。
嫡男だというのに隣国に留学中ということもあって、
あまり関わったこともない。
そのアルバンがモフロワ公爵家を継ぐ……。
私たちはその後見下に入るということか。
それならもっとアルバンと仲良くなっておけばよかった。
「なんだ……アルバンが私たちを守ってくれるのね」
「よかったわ……」
「そんなわけないだろう。
お前たちはここで切り捨てる。
二度とモフロワ公爵家の門をくぐることは許さない」
「え!」
「そんな!それじゃあ生きていけないわ!」
「いいから連れていけ!」
「お兄様!?」
「きゃあ、離して!お兄様!ひどいわ!」
「伯父様、助けて!」
「そうよ!悪いのはお母様たちだわ!」
せめて私とレベッカだけでも伯父様に助けてもらおうと思ったのに、
モフロワ公爵家の使用人たちに引きずられて門から出される。
門扉がかたく閉じられた後、五人で途方にくれる。
どうしたら……こうなったのは全部ナディアのせいだわ。
もう一度アンペール侯爵家に戻って抗議したらいいかしら。
だって、あの家は私の物なんだから。
簡単に他人のものになるわけがない。
来た道を戻りたくても馬車がなくて悩んでいたら、
後ろから知らない男に話しかけられる。
「モフロワ公爵家の家令見習いのケビンと申します」
「家令見習い?」
「はい。アルバン様にみなさまを平民街にお連れするように言われております。
私について来てください」
「私にふれないでちょうだい!」
私たちが抗議しても衛兵たちは何一つ反応しない。
物を引きずるような感じで連れて行かれる。
乗せられたのは馬車ではなく、荷馬車だった。
それこそ荷物を積むように乗せられ、そのまま動き始める。
「お母様……私たちどこに連れて行かれるの?」
「多分、お父様のところだと思うけど……」
「お祖父様の?モフロワ公爵家?」
そういえばナディアがそんなことを言っていた気がする。
「でも……お祖父様とお祖母様は捕まったって……」
「そんなの嘘だわ。お父様には陛下だって逆らえないのよ。
ナディアが嘘をついたに決まっているじゃない」
「そ、そうよね……」
だったら、どうしてここに衛兵がいるのか、
私たちがこんな目に遭うのかと聞きたかったけれど、
はっきりさせるのが怖くて黙った。
伯母様とレベッカもそうなのか、
黙って唇を噛んでこの屈辱に耐えている。
ただ一人、ルーミアは不安で黙っていられないのか、
やたらと私へ話しかけてくる。
「ジネット様、本当に大丈夫なのでしょうか?
まさかナディアがシリウス様の婚約者だなんて……。
知らなかったからと謝ったら許してもらえるでしょうか?」
「……あんなの嘘よ。
ナディアはクラデル侯爵家の血を引いているといっても、
ただの親戚にすぎないのよ。
その証拠にあの場にはナディアしかいなかったじゃない。
魔術師が婚約者を一人にするようなことはないはずよ」
「そうですよね……じゃあ、あれは嘘だったんですね。
もしかしたらお父様とお母様が私と捨てたというのも嘘?」
「そうかもしれないわね」
ルーミアを協力させたのは私だけど、
まさかアンペール侯爵家に押しかけて来るなんて思わなかった。
ポワズ子爵家はルーミアを捨てたから責任をとれと言われたけれど、
そこまで面倒を見る気はなかった。
すぐに放り出そうと思っていたのに、
その前にナディアによって私たちが追い出される羽目になった。
アンペール侯爵家を継ぐのは私のはずなのに。
お祖父様に言えば取り戻せるはず。
衛兵たちはまっすぐにモフロワ公爵家に向かっているようだ。
どこか知らないところに連れて行かれるのではないとわかりほっとする。
少しして、モフロワ公爵家に着いたが、
そこはアンペール侯爵家と同じように衛兵たちが囲んでいた。
「どういうことなの!?」
「お父様はどこ!」
お母様と伯母様が叫ぶけれど、誰からも返事はない。
荷馬車のまま屋敷に入ったと思えば、すぐに降ろされる。
玄関からは伯父様が慌てて出てきた。
「お兄様!」
「助けて!ひどい目に遭ったのよ!」
「ひどい目に遭ったのはこっちのほうだ!
お前たち、なんてことをしてくれたんだ!」
「「え?」」
助けを求めたお母様と伯母様に、伯父様が怒鳴り返した。
いつも優しい伯父様が怒鳴ったことにお母様たちも驚いている。
「父上と母上は王宮に連れて行かれた。
戻って来ることはないそうだ」
「そんな!」
「まさか、本当だったの!?」
お祖父様とお祖母様が王宮に連れて行かれたなんて。
ナディアの父親を監禁した罪と横領だとか言っていた?
侯爵家の当主を監禁して税を奪っていたとしたら、
家を乗っ取ったことになる……。
その罪が本当だとわかれば、お祖父様たちは処刑されてしまう。
「俺もその罪にかかわっているんじゃないかと疑われている。
……知っていて止めなかったのだから同罪だと言われてもおかしくはない」
「お兄様まで捕まったら、私たちはどうなるの?」
「そうよ!この家がなくなったら、どうなってしまうの?」
「……お前たちのせいだというのに自分の心配か。
はぁぁ。まぁ、いい。
それなら俺だって冷静に対応するだけだ」
「……お兄様?」
どこか焦っていたような伯父様の顔が冷たいものに変わる。
その顔が衛兵たちと同じような気がして寒気がする。
……何をする気なの?
「お前たちを平民として暮らせるようにしろと命じられた」
「は?平民?」
「私たちが?そんなのできるわけないじゃない!」
「できなくてもさせる。
そうすれば、俺は処罰されることになっても、
息子にモフロワ公爵家を継がせてもいいと言われた」
「アルバンに?」
従兄のアルバンとはあまり仲良くはない。
嫡男だというのに隣国に留学中ということもあって、
あまり関わったこともない。
そのアルバンがモフロワ公爵家を継ぐ……。
私たちはその後見下に入るということか。
それならもっとアルバンと仲良くなっておけばよかった。
「なんだ……アルバンが私たちを守ってくれるのね」
「よかったわ……」
「そんなわけないだろう。
お前たちはここで切り捨てる。
二度とモフロワ公爵家の門をくぐることは許さない」
「え!」
「そんな!それじゃあ生きていけないわ!」
「いいから連れていけ!」
「お兄様!?」
「きゃあ、離して!お兄様!ひどいわ!」
「伯父様、助けて!」
「そうよ!悪いのはお母様たちだわ!」
せめて私とレベッカだけでも伯父様に助けてもらおうと思ったのに、
モフロワ公爵家の使用人たちに引きずられて門から出される。
門扉がかたく閉じられた後、五人で途方にくれる。
どうしたら……こうなったのは全部ナディアのせいだわ。
もう一度アンペール侯爵家に戻って抗議したらいいかしら。
だって、あの家は私の物なんだから。
簡単に他人のものになるわけがない。
来た道を戻りたくても馬車がなくて悩んでいたら、
後ろから知らない男に話しかけられる。
「モフロワ公爵家の家令見習いのケビンと申します」
「家令見習い?」
「はい。アルバン様にみなさまを平民街にお連れするように言われております。
私について来てください」
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