あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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19.夜会の開始?

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ちょうど入場する貴族が多い時間だったようで、入場待ちの列に並ぶ。
少しずつ前に押し出されるように進み、検査を受けると大広間の入り口に着いた。
陛下に見られるまで帰れないとなると、陛下の入場まで待たなければいけない。まだ一般貴族の入場時間も終わっておらず、高位貴族すら大広間についていなかった。



「しばらく時間かかりそうだな。」

「そうよね…陛下が入場してきたら戻ればいいかしら。」

「じゃあ、飲み物とって、中庭の方で時間を潰していよう。」


混んでいる大広間の中に居続けるのは苦痛で、二人分の飲み物をもらって奥へと進む。バルコニーから外に出て中庭に行くと、さすがに人の気配は少なかった。始まる前に中庭に来ているのは待ち合わせをしている者たちくらいだろう。

噴水の近くのベンチに座って飲み物を口にすると、もうすでに喉が渇いていた。馬車でここまで来るだけでも結構時間がかかっていた。できればもう二度と王宮での夜会には出席したくないなと思う。そう思ったらため息をついていた。


「…王宮には来たくなかった?」

「そうね…それもあるけど、なんだか始まる前から疲れちゃって。
 不思議ね。前世では夜会に出席するなんて簡単なことだったのに。」

「少しずつ薄れていっているのかもしれないな。
 それだけ囚われていたのが解放されているのならいいんだが。」

記憶が薄れていってる?そういえば王弟殿下に顔に出やすいなんて言われたし、王太子妃教育を忘れていっているのかもしれない。


「全部忘れられるなら、それはうれしいけど。
 それで変わってしまうのも、ちょっと嫌かもしれないわ。」

「そうだな…。」


会話が途切れ、隣に座るユリアスも黙ってしまい、暗くなっていく空を眺めていた。思い出すのは苦しかった前世のことよりも、魔術師学校に勤めてからの日々だった。ユリアスがいてくれて、前世の話を聞いてくれたから解放されかかっているのかもしれないと思った。


「そろそろ中に入ろうか。」

「もう高位貴族の入場が終わった時間?」


ベンチから立ち上がって中に戻ろうとした時に、ユリアスを呼ぶ声が聞こえた。
艶やかな赤いドレスを着た令嬢が小走りで向かって来るのが見えた。

「ユリアス!会いたかったわ!
 手紙を書いたのに返事をくれないなんて、ひどい人!
 でも、来てくれたから許してあげる。」

少し頬を赤くし、ユリアスの腕をとろうとしたのはキャロル様だった。フレッド様の件ではキャロル様は付いてきただけということで処分無しだったと聞いていた。だけど、そのキャロル様がユリアスに何の用事があるのだろう。

ユリアスは掴まれそうだった腕を引き寄せて、キャロル様からあからさまに逃げた。


「何か用ですか。」


久しぶりに聞いた鬼騎士の声だった。低く、どこまでも愛想のない声。
こんな風に冷たくされたら、もう二度と話しかけないだろうと思うのに、キャロル様は全く気にしていないようだった。


「え?エスコートしてくれるんでしょう?
 本当は迎えに来てほしかったのよ?
 でも、会場に直接来たみたいだから、仕方ないなって。
 さぁ、行きましょう?」

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