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20.話を聞かない人

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「え?エスコートしてくれるんでしょう?
 本当は迎えに来てほしかったのよ?
 でも、会場に直接来たみたいだから、仕方ないなって。
 さぁ、行きましょう?」


エスコート?ここから?
というよりも、隣にいる私のことを見えていない?
そういえば、話したことがあれば認識するって言ってた。
じゃあ、キャロル様はユリアスは認識するけど、話したことのない私は認識できていない。
同じことを思ったのか、ユリアスは私の手を取ってキャロル様に紹介をした。


「キャロル嬢、こちらはロージー嬢。子爵家令嬢だ。
 俺は今日はロージー嬢のエスコートで来ている。
 それに、俺はキャロル嬢をエスコートする理由が無いんだが…。」

「は?」


キャロル様は私の存在がようやく見えたようで、ポカンとした顔をしている。
言葉の意味が分かり始めると目が吊り上がり、怒鳴り始めた。


「何よ、この女!どこから湧いて出たのよ!
 私とユリアスの邪魔をしようって言うの?」


えー?エスコートされているのは私だって説明されたのに、どうしてそう思うの?
どう考えても邪魔しに来ているのはキャロル様なのに。


「だから、何でおれがキャロル嬢をエスコートしなきゃいけないんだ。
 俺はもう関係ないだろう?」

「あるわよ!
 フレッドが王族から抜けるっていうのよ。
 臣下にくだるって言っても、謹慎がいつとけるかわからないっていうし。
 じゃあ、ユリアスと結婚して家を継いだ方がいいでしょう?
 もう仕方ないからユリアスと仲直りしてあげようと思って。」

「…ふざけんな。
 俺はもう二度とお前と婚約したりしないからな。
 王弟の後見下に入ったから、侯爵家が何を言っても聞かないぞ。」

「…は?何言ってるの?ユリアス。
 私と結婚できるのうれしいでしょう?
 戻って来てあげたのよ?」

「誰がうれしいか。
 絶対にお断りだ!」

「なんですって!…あんたのせいね?
 あんたがいるからおかしくなるんだわ。
 フレッドも、ユリアスも!」


キッと睨まれたと思ったら、キャロル様に力いっぱい突き飛ばされた。
その衝撃で後ろに倒れて、眼鏡がどこかにいってしまった。
片手が噴水にさわったせいで、ドレスにも水滴がたくさん飛んでくる。
乳白色のドレスがところどころシミのようになってしまった。


「なんてことをするんだ!ロージー、大丈夫か!?」


あわててユリアスが起こしてくれた時には、
キャロル様はもうどこかに去ってしまっていた。


「大丈夫か?痛めてないか?」

手足を動かしてみても、特に痛みは無かった。
しりもちをついてしまったのでお尻は痛むけど、それもすぐに治りそうなものだった。


「うん…驚いたけど、大丈夫。」

「あぁ、ドレスの後ろが泥まみれになってしまっている…。
 帰らなきゃダメかもしれないな…。」


見ると、噴水の水が飛んだ場所だったのだろう。
足元の泥がドレスについてしまっていた。
こんな状態で大広間の中には入っていけないだろう。
着替えて戻ってくることもできないし、帰るしかなさそうだった。

だけど、そんなことになれば、陛下が怒るかもしれない。
怒らないにしても、もう一度招待されることになりそうだ。
そのどちらも面倒なことにしかならなさそうだった。

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