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26.隣国の王宮
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隣国の王宮に着いたのは二日目の夕方になった頃だった。
衛兵にユリアスが持っていた剣を見せて、王弟の使いだということを告げる。
剣についている王弟の紋章を確認されたら、王宮内から文官と女官が迎えに出てきた。
王弟の使いなのは確認したが、旅装束のままでは会わせらえないと説明される。
確かに馬に乗って走って来たので、埃まみれになっているだろう。
昨日の夜は湯あみもできず、浄化魔術もかけていない。
あんなことがあった以上、気軽に浄化魔術をかける気にはならなかったからだ。
王宮内の客室に別々に通され、湯あみをし、着替えさせられる。
ユリアスは私と離れることを嫌がったが、さすがに湯あみを同じ部屋でするわけにはいかず、渋々引き下がっていた。
囲まれて着替えをするのは慣れているが、久しぶり過ぎて少し落ち着かない。
早くユリアスと合流したいと思うのに、女官たちがやけに張り切って装ってくれるので、着替えがなかなか終わらなかった。
裾にいくにつれて白から青に変わるふくらみの無いドレスに着替え、しっかりと化粧も終えた時には疲れ切ってしまっていた。
この後手紙を渡す相手に会いに行くのだろうか。
そう思っていたら、部屋の扉が突然開けられた。
もう着替えは終わっているが、令嬢が着替えのために使用している客室の扉を許可なく開けるというのは許されることではない。
驚きながらも思わず睨みつけてしまったのも仕方ないだろう。
部屋に入ってきたのは知らない若い男性だった。
銀色の髪に碧目の男性は着ている服の仕立ての良さから高位貴族だと思えた。
王宮内で自由に動ける高位貴族…。
嫌な予感しかしなかった。
「ほう。これが聖女か…さすがに美人だな。」
名乗りもせず、非礼をわびるでもない。
ずかずかと入ってきたと思えば、私をながめて品評している。
この態度は間違いなく王族だ。
周りの女官たちも男性を止められずおろおろしている。
一人の女官が部屋の外へ慌てて出て行ったのが見えたが、おそらく誰かに知らせに行ったのだろう。
「で、名前はなんだ?」
なぜ名乗らなければいけないのだろう。そう思って聞かなかったふりをする。
少なくとも公の場ではないし、王族だとも言われていない。
男性をいないものとして扱おうとしたのがわかったのだろうか、にやりと笑うと近づいてきた。
「ふぅん。俺のことを無視する気なのか。面白い。」
そう言って、私の髪に手を伸ばしてこようとする。
その手から逃げようと一歩後ろに下がったところで、私と男性の間に何かが入り込んできた。
…さやに入ったままの剣だった。
「誰だか知らないが、この方にふれるな。」
あっという間にユリアスに引き寄せられると後ろに隠される。
その背中に思わずしがみついてしまったのは仕方ないと思う。
ユリアスの服を掴む手が震えているのが自分でもわかる。
「…お前、ただで済むと思うのか?
俺にこんな真似をして。」
「こんな真似というが、この方は王弟殿下の養女だ。
俺はこの方を害するものがいれば切っていい許可を王弟殿下から得ている。
…それで、令嬢が着替えている部屋に押し入って、
ふれようとしたことへの言い訳はあるか?
無礼な乱入者と護衛騎士、どちらに非があると思う?」
「くっ…。」
そうよ。無礼なのはそっちよ!
思うけど言えるはずもなくユリアスの陰に隠れたまま様子をうかがう。
男性とユリアスはにらみ合っていて、どちらも引く様子は見られない。
女官たちが止められるはずもなく、ただおろおろしているばかり。
どうしたらいいんだろう。
「お二人とも…そこまでですわよ?」
凛とした声がしてそちらを見ると、女官ではなく令嬢が部屋に入ってきたところだった。
その顔を見て、あっと声を出してしまう。
衛兵にユリアスが持っていた剣を見せて、王弟の使いだということを告げる。
剣についている王弟の紋章を確認されたら、王宮内から文官と女官が迎えに出てきた。
王弟の使いなのは確認したが、旅装束のままでは会わせらえないと説明される。
確かに馬に乗って走って来たので、埃まみれになっているだろう。
昨日の夜は湯あみもできず、浄化魔術もかけていない。
あんなことがあった以上、気軽に浄化魔術をかける気にはならなかったからだ。
王宮内の客室に別々に通され、湯あみをし、着替えさせられる。
ユリアスは私と離れることを嫌がったが、さすがに湯あみを同じ部屋でするわけにはいかず、渋々引き下がっていた。
囲まれて着替えをするのは慣れているが、久しぶり過ぎて少し落ち着かない。
早くユリアスと合流したいと思うのに、女官たちがやけに張り切って装ってくれるので、着替えがなかなか終わらなかった。
裾にいくにつれて白から青に変わるふくらみの無いドレスに着替え、しっかりと化粧も終えた時には疲れ切ってしまっていた。
この後手紙を渡す相手に会いに行くのだろうか。
そう思っていたら、部屋の扉が突然開けられた。
もう着替えは終わっているが、令嬢が着替えのために使用している客室の扉を許可なく開けるというのは許されることではない。
驚きながらも思わず睨みつけてしまったのも仕方ないだろう。
部屋に入ってきたのは知らない若い男性だった。
銀色の髪に碧目の男性は着ている服の仕立ての良さから高位貴族だと思えた。
王宮内で自由に動ける高位貴族…。
嫌な予感しかしなかった。
「ほう。これが聖女か…さすがに美人だな。」
名乗りもせず、非礼をわびるでもない。
ずかずかと入ってきたと思えば、私をながめて品評している。
この態度は間違いなく王族だ。
周りの女官たちも男性を止められずおろおろしている。
一人の女官が部屋の外へ慌てて出て行ったのが見えたが、おそらく誰かに知らせに行ったのだろう。
「で、名前はなんだ?」
なぜ名乗らなければいけないのだろう。そう思って聞かなかったふりをする。
少なくとも公の場ではないし、王族だとも言われていない。
男性をいないものとして扱おうとしたのがわかったのだろうか、にやりと笑うと近づいてきた。
「ふぅん。俺のことを無視する気なのか。面白い。」
そう言って、私の髪に手を伸ばしてこようとする。
その手から逃げようと一歩後ろに下がったところで、私と男性の間に何かが入り込んできた。
…さやに入ったままの剣だった。
「誰だか知らないが、この方にふれるな。」
あっという間にユリアスに引き寄せられると後ろに隠される。
その背中に思わずしがみついてしまったのは仕方ないと思う。
ユリアスの服を掴む手が震えているのが自分でもわかる。
「…お前、ただで済むと思うのか?
俺にこんな真似をして。」
「こんな真似というが、この方は王弟殿下の養女だ。
俺はこの方を害するものがいれば切っていい許可を王弟殿下から得ている。
…それで、令嬢が着替えている部屋に押し入って、
ふれようとしたことへの言い訳はあるか?
無礼な乱入者と護衛騎士、どちらに非があると思う?」
「くっ…。」
そうよ。無礼なのはそっちよ!
思うけど言えるはずもなくユリアスの陰に隠れたまま様子をうかがう。
男性とユリアスはにらみ合っていて、どちらも引く様子は見られない。
女官たちが止められるはずもなく、ただおろおろしているばかり。
どうしたらいいんだろう。
「お二人とも…そこまでですわよ?」
凛とした声がしてそちらを見ると、女官ではなく令嬢が部屋に入ってきたところだった。
その顔を見て、あっと声を出してしまう。
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