あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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37.おやすみ

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治癒をかけ続けて魔力切れを起こしかけているロージーを、
縦抱きにして王宮の部屋まで運ぼうとしたら、
眠くて仕方ないのか会話も怪しかった。

「寝てもいいぞ。ちゃんと部屋まで連れて行くから。」

「…ん。」

そう言ったら安心したのかロージーの身体の力が抜けるのがわかった。
くたりと身体を預けてくるロージーが落ちないように、
両手でしっかりと抱きかかえた。
抱きしめると小さくて細い身体が、折れてしまいそうなほど華奢で頼りなく思える。
さっきまであんなに頼りがいある聖女のようだったのに。


ふれている手のひらからロージーの柔らかさが伝わって、
ふわっと甘い香油の匂いが鼻をかすめた。
俺の肩に頭をのせているから、耳元で寝息が聞こえてくる。
たまらないな…。下手に寝顔を見たら、襲ってしまいそうだ。

まだざわついている離宮の外に出て王宮へ歩いていくと、
ロージーを抱きかかえた俺にすれ違う騎士たちがぎょっとして振り返る。
顔は見えなくても金色の髪でロージーだとわかるのだろう。
心配そうな顔している騎士もいたが、近寄るなと目で脅しておいた。
こんな無防備な状態のロージーを見るのは俺だけでいい。
なるべくロージーが人に見られないように、隠すようにして部屋まで連れて行く。

ロージーの部屋に着いて、侍女たちに頼んで夜着に着替えさせてもらう。
本当なら俺はロージーが寝ている部屋に入ってはいけないはずだが、
魔力の補充を理由に入れてもらえた。
このまま寝かせたら、三日は起き上がれないだろう。
今まで本気で魔術を使っていなかったロージーが、急に限界を超えてしまったのだから。

学校長が以前倒れた時も同じ理由だった。
騎士たちに治癒をかけ続け、学校長の方が倒れてしまった。
あの時に魔力補充の仕方は教えてもらっていた。

すやすやと寝ているロージーの寝台に近付いて、隣にあった椅子に座る。
手を握ると、少し冷たかった。
両手で包みこむようにして、ゆっくりと魔力を送りこむ。
少しずつ、少しずつ、ロージーの身体にいきわたるように。

一時間もそうしていると、ロージーの顔色が良くなってきた。
これなら、明日中に目が覚めるだろう。
ほっとして、手を離すと…離れがたくて。

ロージーの前髪の上から額にくちづけた。

「おやすみ…。」


俺自身、治癒を使いすぎたせいで身体は疲れている。
幸い、魔力量が豊富なために魔力切れを起こすようなことは無いけれど、
疲れていることに変わりはなかった。
自分の部屋に戻ると、倒れこむように寝台に転がった。

目を閉じてロージーの寝顔を思い浮かべたら、
今日はいい夢が見れそうな気がした。

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