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39.馬鹿王子ふたたび
しおりを挟む「おい、お前。もうすぐ帰国するって本当なのか?」
また性懲りもなく朝食時に押しかけて来た王子に、微笑みを作るのも難しい。
顔が引きつってしまいそうになるのも仕方ないと思う。
「はい、来週には帰国する予定です。」
「ふぅん。お前、王弟の娘ってことは公爵家だよな。」
「はい。養女ですけれど。」
「じゃあ、お前の所に婿入りしてやろう。俺を連れて帰れ。」
「「は?」」
お前の所に婿入りしてやろう?連れて帰れ?
この王子は何を考えているのだろう?
あまりのことに言い返せずにいると、王子は話し続けている。
「この国はあの女が生む子が継ぐことになるだろう。
俺は新しく公爵家を作ることになるだろうが、それも面白くない。
だったら違う国に行って、父上とは違う場所でやり直したい。
お前は養女だと言うが、光属性なら実子と変わらない扱いだろう?
王子を婿入りさせることも難しくないはずだ。」
え…言ってること自体はおかしくない?
今まであんなにおかしな発言ばかりしていた人なのに…。
いや、お義父様に打診せずに私に言う時点でおかしいのか。
あまりにおかしすぎたから、少しまともなことを言うだけで感心してしまった。
「…お断りいたします。」
「なんでだ!」
「お受けする理由がございません。」
もし王子が変なことを言ったら、迷わず言い返してよいと、
国王からの許可を謁見時にいただいていた。
マリージュ様からいろいろと話を聞いていたらしく、心配してくれていたそうだ。
それに、私に発言の自由を許しただけでなく…
「いいかげんにしてもらえるか?
ロージーにつきまとうのはやめろって言ってるだろう。」
同じように国王から許可が出ているユリアスが前に出てかばってくれる。
その背中に隠れるようにして、様子をうかがう。
「またお前か。
俺はその女に話してるんだ。お前は邪魔だ。」
「いいや。今、断られていただろう。
ここまではっきりと断られてるんだから、あきらめろよ。」
「王子が婿入りしてやるって言ってるんだから、光栄に思えよ。
国から打診されたら断れないだろう。
だからその前に俺から求婚してやったっていうのに。」
「は?
言っとくけど、国から打診されても王弟殿下は断るぞ?
あの人は政略結婚が嫌で教会に誓約したくらいだからな。
養女でも娘にしたロージーにそんなことさせるわけないだろう?」
「王族がここまで言ってるというのに、断ると言うのか!?」
ありえないという顔をする王子に、ため息しか出ない。
どこまで甘やかして育てたら、こんな王子になるんだろう。
さきほど少しだけまともだと思ってしまったのはなんだったのだろう。
「はいはい。話はそこまで!」
女官が呼んだらしく、マリージュ様が部屋に入ってくる。
何度かこういうことがあったので、マリージュ様もうんざりといった顔をしている。
「ベージェ王子、いい加減にしなさい。
まったく…振られてるのにしつこいですわよ。」
「ふられてない!」
「きっちり断れていたでしょうに。情けない。
もてないのですから、あきらめなさい。」
「もてない!?」
「ロージー様、はっきり言っていいですわよ。
ベージェ王子のこと、好きになれます?」
「いいえ。無理ですわ。」
「なっ。」
「ほらね。さぁ、ベージェ王子は部屋に戻して!」
マリージュ様が連れてきた騎士たちに指示すると、
ベージェ王子を引きずるように連れて行く。
騒ぐかと思ったが、さきほどから固まっていて、おとなしく連れて行かれていた。
「また馬鹿王子が騒いでごめんなさい。
でも、明日からはもう来ないと思うわ。
あれだけ心を折られれば、しばらくは復活しないと思うから。」
本当だろうかと思ったけれど、次の日からベージェ王子の突撃訪問が来なくなり、
ようやく静かに過ごせるようになったのだった。
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