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44.湖の底
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どうしてこんなことに?
周りを見渡すと、薄暗い湖の底、透明な膜のようなもので包みこまれている。
繭のような卵のような?大事に守られているような感じにも見える。
息は苦しくない…けれど、水の冷たさが身体にしみこんでくる。
これは…精霊のいたずら?
だとしたら、何か精霊の気を引くような行動でもしてしまったのだろうか。
(…気が付いていないようだね…)
精霊の声?
どこからか語りかけてくる声が聞こえる。
男性でも女性でもない、だけど静かで落ち着いた声。
(魂が傷ついたままになってる。だから、心が閉じている。)
魂が傷ついて…前世のこと?心の傷に…なってるのが魂の傷?
心が閉じているというのはよくわからないけれど…。
(ここにいて、魂を休めたら傷は治る。そうしたら綺麗な魂でやり直せる。)
ここで魂を休める?
精霊に囚われたら…軽く数百年経ってたってこともあるそうだけど…。
ここにいて傷を癒せってこと?
だけど傷を癒して綺麗な魂になったとして、
その魂はもう私では無くなってるのではないの?
(…それが何か困るの?平穏無事な人生が待っているよ?)
…そんなことは望んでいないわ。
(あなたの望みは何事もない人生なのでしょう?)
あぁ、そういうこと。私がそんな願いを思ったから。
何事もなく平穏な人生…本当にそんなことが望みなのだろうか。
今までの人生を捨てて、また一から綺麗な魂となって生きる。
そんなのは嫌だわ…。
私の願いは…。
湖面を見上げると、遠くにユリアスが見えた。
何度も潜ってはここまで届かず、一度湖面に戻ってはまた来ようとしている。
ユリアス!
(あの者が来るのを待っているの?)
待っている…のかしら。ここに助けに来てくれるのを?
ユリアスならいつも助けてくれるから?
助けてくれるから待っている?
違うわ…私がユリアスのそばじゃないと嫌なのよ。
もう身体が冷え切って、ユリアスの腕の中の暖かさが恋しかった。
何があっても大丈夫だって思える安心感も、ユリアスの腕の中だったから。
ユリアスが潜って近くまで来るたびに必死で手を伸ばす。
透明な膜を破れずに、ここから出ることができない。
近付いたユリアスが息が続かなくて苦しい表情に変わって湖面に戻っていくのを、
ただここでずっと見ているだけ。
「精霊様…私を帰してください。ここから出して…、
彼の、ユリアスの所へ戻してください。」
(…それがあなたの願い?本当の願いはそれじゃないよね?)
「願いは自分で叶えます。だから、傷ついた魂のままでいい。
ユリアスの所へ戻してください。」
(…じゃあ、好きにするといいよ…。)
もう何度目だろう。ユリアスが必死になってここまで潜ってくる。
もう少し、手を伸ばしたら届く。あともう少し…お願い、届いて。
ユリアスと私の手が膜越しにふれると、膜はふわっと消えた。
伸ばした手の腕をつかまれて、ユリアスと一緒に湖面に戻っていく。
きらめいている光へと近づくように、上へと引かれていく。
湖面から顔を出すと、そのまま抱きしめられた。
濡れたドレス越しにユリアスの体温が伝わってくる。
はぁはぁ息を切らしているユリアスが何も言わずに抱きしめてくれるのを、
背中に手をまわしてぎゅっと抱きしめ返した。
「…良かった。精霊に奪われてしまうかと思った…。」
「…私も、怖かった。
もう二度と会えなくなるんじゃないかって…。
あきらめないで助けに来てくれて…ありがとう。」
「あきらめるなんて!
俺が…ロージーをあきらめられるわけなんてない。
ずっとそばで守るって言っただろう。」
「…うん。助けてくれてありがとう。」
周りを見渡すと、薄暗い湖の底、透明な膜のようなもので包みこまれている。
繭のような卵のような?大事に守られているような感じにも見える。
息は苦しくない…けれど、水の冷たさが身体にしみこんでくる。
これは…精霊のいたずら?
だとしたら、何か精霊の気を引くような行動でもしてしまったのだろうか。
(…気が付いていないようだね…)
精霊の声?
どこからか語りかけてくる声が聞こえる。
男性でも女性でもない、だけど静かで落ち着いた声。
(魂が傷ついたままになってる。だから、心が閉じている。)
魂が傷ついて…前世のこと?心の傷に…なってるのが魂の傷?
心が閉じているというのはよくわからないけれど…。
(ここにいて、魂を休めたら傷は治る。そうしたら綺麗な魂でやり直せる。)
ここで魂を休める?
精霊に囚われたら…軽く数百年経ってたってこともあるそうだけど…。
ここにいて傷を癒せってこと?
だけど傷を癒して綺麗な魂になったとして、
その魂はもう私では無くなってるのではないの?
(…それが何か困るの?平穏無事な人生が待っているよ?)
…そんなことは望んでいないわ。
(あなたの望みは何事もない人生なのでしょう?)
あぁ、そういうこと。私がそんな願いを思ったから。
何事もなく平穏な人生…本当にそんなことが望みなのだろうか。
今までの人生を捨てて、また一から綺麗な魂となって生きる。
そんなのは嫌だわ…。
私の願いは…。
湖面を見上げると、遠くにユリアスが見えた。
何度も潜ってはここまで届かず、一度湖面に戻ってはまた来ようとしている。
ユリアス!
(あの者が来るのを待っているの?)
待っている…のかしら。ここに助けに来てくれるのを?
ユリアスならいつも助けてくれるから?
助けてくれるから待っている?
違うわ…私がユリアスのそばじゃないと嫌なのよ。
もう身体が冷え切って、ユリアスの腕の中の暖かさが恋しかった。
何があっても大丈夫だって思える安心感も、ユリアスの腕の中だったから。
ユリアスが潜って近くまで来るたびに必死で手を伸ばす。
透明な膜を破れずに、ここから出ることができない。
近付いたユリアスが息が続かなくて苦しい表情に変わって湖面に戻っていくのを、
ただここでずっと見ているだけ。
「精霊様…私を帰してください。ここから出して…、
彼の、ユリアスの所へ戻してください。」
(…それがあなたの願い?本当の願いはそれじゃないよね?)
「願いは自分で叶えます。だから、傷ついた魂のままでいい。
ユリアスの所へ戻してください。」
(…じゃあ、好きにするといいよ…。)
もう何度目だろう。ユリアスが必死になってここまで潜ってくる。
もう少し、手を伸ばしたら届く。あともう少し…お願い、届いて。
ユリアスと私の手が膜越しにふれると、膜はふわっと消えた。
伸ばした手の腕をつかまれて、ユリアスと一緒に湖面に戻っていく。
きらめいている光へと近づくように、上へと引かれていく。
湖面から顔を出すと、そのまま抱きしめられた。
濡れたドレス越しにユリアスの体温が伝わってくる。
はぁはぁ息を切らしているユリアスが何も言わずに抱きしめてくれるのを、
背中に手をまわしてぎゅっと抱きしめ返した。
「…良かった。精霊に奪われてしまうかと思った…。」
「…私も、怖かった。
もう二度と会えなくなるんじゃないかって…。
あきらめないで助けに来てくれて…ありがとう。」
「あきらめるなんて!
俺が…ロージーをあきらめられるわけなんてない。
ずっとそばで守るって言っただろう。」
「…うん。助けてくれてありがとう。」
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