あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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51.野営の夜

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夕食のスープを食べ、しばらくは焚火の周りに座って話しをしていたけれど、
一日馬の上に乗って疲れていたロージーがうつらうつらし始めた。
もともとロージーは夜遅くまで起きていられない体質らしい。

ロージーを簡易寝床に寝かせ、一人になった後も寝る気にはなれず、
遠くの星を眺めていた。
焚き火を消そうか迷っていたら、まだ夜中なのにロージーが起きてきた。
朝まで起きてこないと思っていたのに、どうしたんだろう。


「どうした?眠れないのか?」

「一度寝たのだけど、なぜか起きちゃって。
 身体が緊張しているのかも。」

「帰国するから?」

「うん…多分?よくわからない。
 何にたいして構えているのかわからないのだけど、
 少し怖いのかもしれない。」

「そうか…。」

騎士団に入って最初の遠征の時を思い出す。
初めての野営だという興奮、いつ魔獣が出てくるかもしれない恐怖。
草を揺らす風の音や、焚火の匂い、土の匂い、虫の声。
いろんなものが気になって眠れなかった。

今、ロージーが落ち着かない理由はわからないけれど、
落ち着かせる方法ならわかる気がした。

「こっちにおいで?」

そう言って誘うと、無言のままふらっと俺のところに来る。
もしかしたら少し寝ぼけているのかもしれない。
俺のそばまで来たロージーを抱きかかえて、俺の足の間に座らせる。

「え?」

「そのまま俺の方に寄りかかって。
 背中を倒して、体重かけていいから。」

「うん…。」

俺の身体にすっぽりと隠れてしまうロージーを抱きかかえるようにして、
少し寄りかかるようにして寝かせる。
まだ残る焚火に照らされて、ロージーの髪が浮かび上がる。
その髪を指で梳かすように撫でて、俺の腕に力が抜けたロージーの頭を乗せる。

「…まだ怖いか?」

「ううん、大丈夫。
 ユリアスがいてくれたら、大丈夫って思えるから。」

「そっか。じゃあ、帰国しても大丈夫だよ。
 俺はずっと、何があってもロージーのそばにいるから。」

「うん。ありがと…。」

「眠いなら、このまま寝ていいよ。」

「うん…寝ちゃうかも…。」

「いいよ。」


ゆっくりと頭や肩を撫でていると、小さな寝息が聞こえてきた。
そのまま起こさないように抱きしめて、夜が明けるのを待った。
魔力が有り余っているせいか、一日くらい眠らなくても気にならなかった。

眠るよりも、腕の中にいるロージーの柔らかさを感じていたかった。
こんな風に眠るロージーを抱きしめられる時間を一秒でも長く。


「告白できなかったなぁ。
 王弟殿下に怒られるのはいいけど、帰国したら…。
 こんな風に抱きしめちゃダメだよな。」

帰国したら、マイケル王子は断れるかもしれなくても、
ロージーに婚約を申し込む令息が山ほど出てくるのは予測できた。
俺は…その時にどうやったら守れるだろう。

…たとえ何があっても守る。その気持ちは嘘じゃない。
だけど、全員を倒して逃げるとか…そんなことはできない。
少しは頭を働かさないと…。
貴族らしい戦いは苦手だけど、そうも言ってられないのだから。
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